FEATURE

ポジショナルプレーvs ストーミング。ラグビー戦術トレンドとの類似性

2020.06.09

【対談】林舞輝×井上正幸

2019年、日本中を感動させたラグビーW杯でのジョセフ・ジャパンの躍進――。実は、ラグビーの攻撃システムである「ポッド」とアンストラクチャーを誘発するキック戦術のせめぎ合いは、サッカーの最新戦術トレンド「ポジショナルプレーvsストーミング」の関係に似ている。エディはペップで、ジョセフはクロップ? 日本サッカーがラグビーから学べることとは――? 2つの競技の戦術解説のトップランナー、『「サッカー」とは何か 戦術的ピリオダイゼーションvsバルセロナ構造主義、欧州最先端をリードする二大トレーニング理論』(小社刊) を上梓した林舞輝監督と『これまでになかった ラグビー戦術の教科書』(カンゼン)の著者である井上正幸コーチによる“異種格闘技戦”(2019年10月下旬収録)を特別公開

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司会・進行 浅野賀一(footballista編集長)

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可変式ポッドvs アンストラクチャー

── 今回はラグビーの戦術トレンドがサッカーのストーミングに似ているのでは? というのがテーマです。まずはラグビー戦術の発展の歴史から教えてください。

井上「どこまでさかのぼるか難しいのですが、1995年にオーストラリアが『守備では列になって面をそろえて守り、攻撃では連続性を持たせる』という考え方を作りました。その連続攻撃は『シークエンス』という考え方なんですが、攻撃パターンを全部決めてしまうんです。ただ、用意したパターンをすべて研究されて守られるようになると、次の一手が出なくなりました。そうして『シークエンス』は衰退し、代わりに現れたのが『ポッド』です。攻撃チャンネルの数に合わせて『2ポッド』とか『3ポッド』という呼び方をします。例えば3つのポッドで攻撃する場合は、各ユニット5人ずつをあらかじめ遠くに配置しておくことで、守備が準備するより前に攻撃を開始できるようになりました。『ボールは人より速い』という原理を利用しています」……

Profile

浅野 賀一

1980年、北海道釧路市生まれ。3年半のサラリーマン生活を経て、2005年からフリーランス活動を開始。2006年10月から海外サッカー専門誌『footballista』の創刊メンバーとして加わり、2015年8月から編集長を務める。西部謙司氏との共著に『戦術に関してはこの本が最高峰』(東邦出版)がある。