レアル・マドリーはなぜ、バルセロナのハイラインを攻略できたのか。クラシコで露呈した「人を追い続ける守備」の脆弱性
新・戦術リストランテ VOL.140
footballista創刊時から続く名物連載がWEBへ移籍。マエストロ・西部謙司が、国内外の注目チームの戦術的な隠し味、ビッグマッチの駆け引きを味わい尽くす試合解説をわかりやすくお届け!
第140回は、レアル・マドリーが1-2で制したエル・クラシコを分析。マドリーの2ゴールに共通していたのは、バルセロナのハイラインが生む背後のスペースと、マンマークを優先する守備の構造的な問題だった。人を捕まえ続けるのか、それともポジションを守るのか。両チームの守備戦術の違いから、先鋭的なハイライン&マンツーマン戦術が抱えるリスクを考察する。
ハイラインの脆弱性を突いた2ゴール
ラ・リーガ第10節のエル・クラシコはアウェイのレアル・マドリーが1-2でバルセロナに勝利しております。
レアル・マドリーの2得点はいずれもハイラインの脆弱性を突いたものでした。
前提として、バルセロナのハイプレスに屈せずにボールをつないでオープンサイドにボールを前進させたことがあります。マンマークのハイプレスが主流となっているからこそ、プレスを外して前進する力が問われているわけですが、レアル・マドリーはまさにその力を発揮し、2ゴールに結びつけています。
バルセロナのハイラインは当初から危険性を指摘されていました。しかし、結果的にそれが好成績と多くの得点を生み出していますから、フリック監督のハイライン戦法についての是非はすでに結論が出ていると思います。しかし、だからといってハイラインにリスクがないことにはなりません。
今回はレアル・マドリーのハイライン攻略に焦点を当てながらエル・クラシコを振り返ってみます。
マンマークを続けるのか、撤退するのか。先制点に表れた守備ルールの綻び
レアル・マドリーの先制点は41分でした。自陣ペナルティエリア付近でボールを奪い、そこからいったん右サイドへつなぎます。ギュレル、ベリンガムがバルセロナのカウンタープレスにも失わずキープ。GKルニンを経由して左サイドへ展開します。
ヤマルはGKへプレスしたので、フリーになったハイセンがGKルニンからパスを受けて持ち上がり、左サイドのククレジャへ。しかし、ククレジャは行く手を阻まれて前進できずボールを下げました。この間、バルセロナのDFラインは高い位置をキープしています。
レアル・マドリーはCBからチュアメニにつなぎ、チュアメニは右サイドのバルベルデに渡します。ここから左のククレジャへの展開につながります(下図)。

レアル・マドリーがGKを経由してフリーのハイセンへつなげた段階で、バルセロナのハイプレスはいったん解けています。
プレスが解けた時にどういう守り方をするか。これが第一のポイントです。明確にプレスが外されてしまえば撤退ですが、解けかかった場合にどうするか。
この局面ではロドリが時間を稼ぎました。フリーで持ち上がったハイセン、左でパスを受けられる状態のククレジャ。この2人のどちらにもプレスしていません。中央にベルナルド・シルバがいたので、そこへのパスを警戒して中央部のスペースを抑えています。レアル・マドリーはククレジャへパスしますが、ロドリが少し時間を稼いだおかげでプレスバックが間に合い、レアル・マドリーは前進できずバックパスしています。
ただ、おそらくこれはロドリの個人的な判断であってチームとして約束事は「プレスが解けかかっても人へのマークを継続する」だと思います。それはこれに続く局面にはっきり表れています。
……
Profile
西部 謙司
1962年9月27日、東京都生まれ。早稲田大学教育学部卒業後、会社員を経て、学研『ストライカー』の編集部勤務。95~98年にフランスのパリに住み、欧州サッカーを取材。02年にフリーランスとなる。『戦術リストランテV サッカーの解釈を変える最先端の戦術用語』(小社刊)が発売中。
