開幕戦に滲んだ今季への確固たる決意。柏レイソル・久保藤次郎がブラジルでの日々を経て確認した「原点」と「進化」
太陽黄焔章 第38回
開幕戦からグレードアップしたその突破力が、一際目を引いた。昨シーズンは日本代表の招集も受けるなど、大きなブレイクを果たした久保藤次郎は、苦闘を強いられた百年構想リーグを経て、ブラジルでミニキャンプを実施。フィジカル面の強化に取り組んできた。そのうえで見据えるのは、さらなる自身の進化。2026年、夏。ここからの久保は、一味違う。
試行錯誤の末にたどり着いた一つの答え
水戸ホーリーホックをホームに迎えた2026/27シーズンの開幕戦、その開始5分だった。
小泉佳穂とのワンツーから右サイドのスペースへ抜け出した久保藤次郎は、そのままスピードに乗った。対峙した相手を振り切り、深い位置まで侵入すると、中央へ折り返す。最後はファーサイドに流れた垣田裕暉がインサイドキックでゴールへ流し込んだ。
2026/27シーズン、柏レイソルのファーストゴール。
この一連のプレーには、久保がこの半年間、試行錯誤を続けてきた末にたどり着いた一つの答えが表れていたように思う。
「日本人っぽくないプレーというか、助っ人外国人のように、ワンツーと縦への突破だけで行けるようなプレーも少しは出したいと思っていたので、そういう意味では良かったと思います」(久保)
あの場面で目を引いたのは技術的な工夫以上に、相手を振り切って前へ出ていく力強さだった。興味深いのは、2026年1月に久保が目指していた「進化」は、少し違う方向にあったことだ。
“左足”という新たな武器の模索
2025年、久保は飛躍のシーズンを過ごした。持ち味である圧倒的なスピードを武器に右サイドを切り裂き、柏の攻撃に欠かせない存在となった。7月のE-1選手権では日本代表にも初選出され、自身も確かな成長と手応えを感じていた。
そうなると当然、対戦相手からの警戒度も高くなる。
今年1月、百年構想リーグの開幕を前に話を聞いた際、久保は自身への対策が強まることを予想していた。だからこそ、次なる成長のために新しい武器を身につけようとしていた。
その一つが、左足だった。
縦への突破を警戒されれば、相手は久保の進行方向を限定しようとする。それならばカットインして左足を使う。あるいはボールの持ち方そのものを変える。縦一辺倒ではなく、プレーの選択肢を増やすことで相手に的を絞らせない。
実際、1月のちばぎんカップではカットインから左足で鮮やかなゴールを決めている。新しい久保藤次郎を予感させる一撃だった。
ところが百年構想リーグが始まると、その「進化」を求める意識が、少しずつ久保本来の良さとのズレを生み始めた。
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Profile
鈴木 潤
2002年のフリーライター転身後、03年から柏レイソルと国内育成年代の取材を開始。サッカー専門誌を中心に寄稿する傍ら、現在は柏レイソルのオフィシャル刊行物の執筆も手がける。14年には自身の責任編集によるウェブマガジン『柏フットボールジャーナル』を立ち上げ、日々の取材で得た情報を発信中。酒井宏樹選手の著書『リセットする力』(KADOKAWA)編集協力。
