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百年構想リーグを最大限に生かしたベガルタ仙台・森山佳郎監督。この優勝は“昇格への序章”

2026.06.11

ベガルタ・ピッチサイドリポート第38回

ある意味で“らしい”優勝だったのかもしれない。後半終了間際に追い付かれながら、無類の強さを誇ったPK戦で歓喜を引き寄せる。ユアテックスタジアム仙台に響き渡る指揮官の絶叫。ベガルタ仙台はJ2・J3百年構想リーグの頂点に立った。シーズン移行に伴う、前例のない特別リーグ。この異世界を駆け抜けたチャンピオンの4か月を、村林いづみが選手や監督の声を交えて振り返る。

引っ張り出された新しい原稿用紙。優勝インタビューのリアル

 90分+アディショナルタイム、泣く準備はできていた。いや泣いている場合ではない。優勝インタビューが待っているのだ。この後、ピッチ上でインタビューすべき対象は3人。大舞台で“決勝ゴール”を決めてみせたベガルタ仙台アカデミー育ちのルーキー、中田有祐選手。このシーズン、キャプテンとしてチームをけん引した菅田真啓選手。そして、優勝監督となる森山佳郎監督だ。

 クラブにとっても、選手にとっても、これは特別なインタビューになる。そう思うと背筋が伸びた。質問は何度か書き直して、準備は完了。段取りも入念に確認し、さっと化粧も直した。後は長い笛が鳴るのを待つだけだった。

 血の気が引いた。90+4分、カターレ富山の深澤壯太選手のヘディングがゴールネットに突き刺さった。鮮やかな同点弾。約1100人、ユアテックスタジアム仙台に集まった富山サポーターが狂喜乱舞した。ゲームは振り出し。準備したインタビュー原稿を折りたたんだ。苦いコーヒーを一口飲んで、新しい原稿用紙を引っ張り出した。

 延長戦で決着はつかず、勝負はPK戦へ。ここで力を発揮したのが、全5試合のPK戦を全勝したGK林彰洋選手とゴール裏のベガルタサポーターだった。林の後ろにはそびえ立つ黄金の壁。そこにいる全員が富山の選手に圧をかけた。3人目のキックを右に飛んで両手を伸ばし防ぐと、4人目はゴールの枠を外した。

 仙台は最後のキッカー南創太選手が決めれば優勝。ベガルタ・ヤングチームの中でも最強のメンタルを誇る南は、スタジアムや中継で見守る人々、全ての視線を集めながら、豪快にゴールへ突き刺した。強心臓である。インタビュー対象は中田から林へ変更となったが、それ以外は予定通り。さぁ、仕事だ。マイクを握る手に力を込めた。

不思議なハーフシーズンを上手く乗りこなす。「俺が戦力」と自信を持つ選手たち

 プレーオフ第2戦、優勝決定戦を3日後に控えた取材日に森山監督はこんな話をしてくれた。

 「僕らもそうだし、富山さんもたくさんの若い選手を起用してきた。似たようなトライをしてきたチーム同士が百年構想リーグの最後に優勝を狙える位置に来た。バーンと大型補強できるようなチームではないので、そういう意味では現状戦力に若手がどれだけ食らいついていくか。みんなが『俺にもチャンスあるんじゃねえか』と思いながらモチベーション高く努力する姿勢を見せて、それを継続させてきた。積み上げながら、競争しながら、成長してこれたのかなとは思いますね。来季に向けては『俺も戦力だろう』と言えるところまで来た選手は多かったかなと思います」

森山佳郎監督(Photo: Vegalta Sendai)

 シーズン移行前のハーフシーズン。昇格も降格もない。夏から始まるリーグ戦を「本番」と表現する選手も多かった。その中で森山監督は「成長」と「結果」、両方を選手たちに求めた。開幕戦からルーキーの古屋歩夢選手、杉山耀建選手を起用。しかしそれは、“若手チャレンジ枠”などではなく「自分たちで勝ち取ったもの」と彼らのアピールに応えた。「出場機会をプレゼントする気はない」と何度も口にし、「自分で獲りに来い」と発破をかけた。在籍する32選手中、実に29人が公式戦に出場。大卒新人の髙橋一平選手を含むGK4人も全員が少なくとも1試合、先発出場を果たした。

 「自分が主力だ!と思う選手が15人前後いる状態」を作り出した森山監督。実際にほとんどの試合で5~6人メンバーを入れ替え、戦い続けた。「調子が良くても外れることがある。誰か一人に依存するようなチーム作りはしない」と話すが、今季加入の岩渕弘人選手や五十嵐聖己選手、システム変更で輝きを放った石井隼太選手や武田英寿選手、チームの帝王たる存在感を見せた鎌田大夢選手らは、代えがたい存在としてピッチに立ち続けた。

 多くの若手が出場機会を得た中で、序盤に強いインパクトを示したのが古屋歩夢選手、中盤からシーズン後半にかけて、力を開放していったのが南創太選手だった。

……

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Profile

村林 いづみ

フリーアナウンサー、ライター。2007年よりスカパー!やDAZNでベガルタ仙台を中心に試合中継のピッチリポーターを務める。ベガルタ仙台の節目にはだいたいピッチサイドで涙ぐみ、祝杯と勝利のヒーローインタビューを何よりも楽しみに生きる。かつてスカパー!で好評を博した「ベガッ太さんとの夫婦漫才」をどこかで復活させたいと画策している。

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