REGULAR

「無理だ」と笑われても。水戸ホーリーホック、小島耕社長が掲げた「GO ASIA」

2026.05.21

水戸ホーリーホック昇竜伝#10

J2の中でも少ないクラブ予算ながら一歩一歩積み上げてきた水戸ホーリーホックは、エンブレムにも刻まれている水戸藩の家紋「三つ葉葵」を囲む竜のようにJ1の舞台へたどり着いた今も、さらに高みを見据えている。困難な挑戦に立ち向かうピッチ内外の舞台裏を、クラブを愛する番記者・佐藤拓也が描き出す。

第10回のテーマは、水戸が新たに掲げた「GO ASIA」だ。責任企業を持たない市民クラブはいかにして成長し、アジアを目指すのか。小島耕社長の言葉から、その野心と現実味を読み解いていく。

J1昇格がもたらした“爆発的成長”

 4月27日、株式会社FC水戸ホーリーホックの第30回定時株主総会が開催され、その後、小島耕社長による記者会見が行われた。

 会見の中で小島社長はJ1昇格を決めた昨年度の年間売上が前年度から34%増で、過去最高の16億4100万円を記録したことを発表。加えて、入場料収入(1億6994万円)、広告料収入(7億9824万円)、物品販売収入(1億5486万円)で過去最高を計上したことも明かした。

 J1初参戦となる26-27シーズンに向けての年間予算を28億円に設定。広告料収入15億円、入場料収入5億円、物品販売収入3億円、配分金3億円の収入を予定し、トップチーム人件費を昨年度の2倍となる10億円を設定。24年度の年間予算は12.24億円、23年度は11.04億円だったことを考えると、J1昇格を機に、クラブとして大きな成長を遂げていることが伺える数字が並んだ。

 「11月29日、山本隼大がゴールを決めた瞬間から会社には『スポンサーになりたい』『パートナーになりたい』という問い合わせが来ていたそうです。それぐらい勝つということのインパクトは大きくて、それから今もそうですけど、たくさんの企業のみなさまがパートナー企業に『一緒に応援したい』と名乗りを上げてくれています。本当に営業のスタッフが、人手が足りないぐらい頑張ってくれています」

 小島社長が語ったように、J1昇格効果は大きく、昨季最終戦以降、企業側からスポンサー契約の話を持ちかけてくるケースも増えたという。小島社長就任時、パートナー企業は約150社だったが、今では270社を超えている。「この地域で『水戸を応援する』という声が広がっていることを私も実感しています。チームがJ1にい続けることによって、さらにその声が広まっていくと思います」とさらなる支援の拡大を期待する。

 ただ、昨年度の1.7倍の予算が組まれているとはいえ、現在のJ1リーグクラブ内で最小の金額である。それゆえ、「26-27シーズンの目標は当然のことながら、『J1残留』」と断言。「J1に残留するためには、最低でもトップチーム人件費10億円。この10億円は近年、J1クラブの中で残留をする最低のラインだと思っています。当然、10億円を超えても残留できなかったクラブもあります。まずはしっかりと我々は売上を上げていき、その割合の中でトップチーム人件費10億円以上を確保していく」と力を込めた。

小島耕社長(左から3番目)

年間売上45億円へ。「GO ASIA」に込めた未来図

 そして、株主総会で発表したという2027-2031中期経営計画についても言及。年間売上を25年度の約2.7倍となる45億円以上を目指し、さらにはチームとしての目標を「GO J1」から「GO ASIA」に変えて、アジアの大会に出場することを目指して戦っていくことを宣言して、集まった記者陣を驚かせた。

……

残り:2,230文字/全文:3,693文字 この記事の続きは
footballista MEMBERSHIP
に会員登録すると
お読みいただけます

Profile

佐藤 拓也

1977年生まれ。神奈川県出身茨城県在住のフリーライター。04年から水戸ホーリーホックを取材し続けている。『エル・ゴラッソ』で水戸を担当し、有料webサイト『デイリーホーリーホック』でメインライターを務める。

RANKING