REGULAR

対マンツーマン守備の最新回答。ペップ・シティの「循環型ビルドアップ」とは何か?

2026.04.29

新・戦術リストランテ VOL.115

footballista創刊時から続く名物連載がWEBへ移籍。マエストロ・西部謙司が、国内外の注目チームの戦術的な隠し味、ビッグマッチの駆け引きを味わい尽くす試合解説をわかりやすくお届け!

第115回は、マンツーマン守備が主流化する現代サッカーに対し、マンチェスター・シティが提示した最新回答「循環型ビルドアップ」を徹底解剖。なぜ“人につく守備”は機能不全に陥るのか。その構造と必然を読み解く。

最終ラインが“入れ替わる”。循環するポジションの正体

 「ついに」と言うか、「やはりこうなるよね」と言うべきか。マンチェスター・シティのビルドアップは、マンツーマン時代の必然的な到達点に踏み込んだようです。

 プレミアリーグの天王山となった第33節シティvsアーセナル、シティは序盤からビルドアップの最新版を披露しています。勝手に名づけると「循環型ビルドアップ」です。

 自陣深くからの攻撃において、まずクサノフ、ゲイのCBが左右に開きます。ほぼSBですね。次いで、まずボランチのロドリが下りてきます。「サリーダ・ラボルピアーナ」という長い名前がつけられているのでお馴染みの形ですね。新しいのはここからです。

 ロドリとボランチを組んでいるベルナルド・シルバまで下りてきます。この時点でシティの最終ラインの並びは右からクサノフ、ロドリ、ベルナルド、ゲイ。CBが違う人になっちゃってます。ゲイとクサノフがSBになったことで、元のSBであるヌニェスとオライリーはポジションを上げてウイングになるか、インサイドハーフとして振る舞う。

 エアコンの説明などで空気が対流している図を見たことがあるかと思いますが、シティのビルドアップ時の動き方はまさにそんな感じ。人が循環していました(下図)。

 アーセナルがほぼマンツーマンでガシガシとプレスしてくると予想していたのでしょう。ただ、序盤の効果は微妙でした。ハイプレスで奪われて決定機を作られていましたし、18分のアーセナルの同点弾はGKドンナルンマがハフェルツに詰められてキックをブロックされてそのままゴールイン。

 ビルドアップで人が移動したところで、アーセナルはマンツーマンで潰す気満々ですから関係なかった。しかし、次第にアーセナルはシティのビルドアップを制御できなくなっていきました。

“人を見る守備”の盲点。ズレが連鎖する決勝点の構図

 シティのポジション移動については、例えばシェルキが深く引いた場合でもマークしているCBガブリエウがどこまでもついていましたから迷いはなかったはずです。オールコートマンツーマンの問題点は守る場所を限定できない。人についていくことで拡散してしまうことです。

……

残り:1,998文字/全文:3,122文字 この記事の続きは
footballista MEMBERSHIP
に会員登録すると
お読みいただけます

Profile

西部 謙司

1962年9月27日、東京都生まれ。早稲田大学教育学部卒業後、会社員を経て、学研『ストライカー』の編集部勤務。95~98年にフランスのパリに住み、欧州サッカーを取材。02年にフリーランスとなる。『戦術リストランテV サッカーの解釈を変える最先端の戦術用語』(小社刊)が発売中。

RANKING