「昨季の柏レイソルは最高だった」――下平隆宏が語る“今じゃないな”の正体(前編)
[特集]現代サッカーは本当につまらなくなったのか――インテンシティと最適化が奪った“余白”の正体#4
「最近のサッカーはつまらない」
そんな声を耳にすることが増えた。だが、それは本当にサッカーの問題なのだろうか。それとも、我々の見方が変わっていないだけなのだろうか。かつてより速く、強く、正確になった現代サッカー。その一方で、「どこか似ている」「息つく間がない」「何かが足りない」と感じる瞬間はないだろうか。インテンシティの向上、戦術の最適化、リスク管理の徹底。勝利を追求した結果として洗練されていくゲームは、同時に“余白”を削ぎ落としてきたのかもしれない。では、その“余白”とは何だったのか。それは本当に失われたのか、それとも形を変えただけなのか。現代サッカーは本当につまらなくなったのか。本特集では、その感覚の正体を多角的に解き明かしていく。
第4&5回では、ビルドアップ志向のスタイルを貫いてきた指導者・下平隆宏の証言から、本特集の問いに迫る。現場の最前線にいた彼が感じた違和感――「今じゃないな」。その感覚の正体は、現代サッカーの何を映し出しているのか。
なぜ「今じゃないな」と感じたのか
――本日は下平さんにインタビューさせていただくということで、お邪魔いたしました。3月5日に別府市にオープンされた、下平さんが代表を務めるパーソナルジム「B.STYLE」です。すごいマシンがありますね。
「これは『レボルワン』といって、これ1台でベンチプレスにバーベル、懸垂と、いろんなメニューをこなせる優れものなんですよ。鍛えたい箇所に必要に応じた負荷をかけることができるんです」
――ではアスリートはもちろん、一般の方も。
「はい。老若男女、いろんな方が対象です。身体は、正しく鍛えれば年齢に関係なく変わりますからね。姿勢と動作と筋力を総合的に整えて、見た目年齢マイナス10歳を目指すボディを作っていきます。未来のアスリート育成にも力を入れたいですね。特にゴールデンエイジと呼ばれるジュニア年代に、身体の使い方・バランス・体幹など競技の土台となる部分を大切にしたトレーニングをしっかりとやっておくことが大事になりますから」
――……って、なんだかすっかりピッチから離れたところに活動拠点を築かれていますが、監督業からは離れられるのでしょうか。
「いえいえ、そんなことはないです。もちろん、自分を求めてくださるオファーがあれば喜んでお受けしますし、そういうオファーをお待ちしています」
――噂ではいくつかオファーがあったのではないかと推察しているのですが。
「はい、いくつかはいただきました。ただ、タイミングが合わなかったり、クラブから求められているものが僕のサッカースタイルに今ひとつフィットしないような気がしたりして、就任までには至らなかったんです」
――実は今回の特集テーマは「現代サッカーは本当につまらなくなったのか」というものなんですが、下平さんはいまのサッカーの潮流をどのようにご覧になっていますか。
「そうですね……。面白くないと言い切るつもりはないんですけど、最近はちょっとサッカーの本質から離れて勝敗ばかりにフォーカスされる傾向があるのかなと感じることはありますね。当然、サッカーは勝負を懸けて戦うものですから、勝利という結果は絶対に求めるべきなんでしょうけど、そこを強く求め過ぎるあまり、サッカー本来の楽しみ方というのは、今ちょっと希薄になっているような気がします」
――その「サッカー本来の楽しみ方」というのは、どういうものでしょうか。
「クラブごとにそれぞれの特徴があったり、監督の色が濃く出ていたり。それを楽しみに見に行く感じですよね」
――確かに、一昔前のJ2なんかは特に、監督個々の哲学がもっと前面に出た世界でしたよね。
……
Profile
ひぐらしひなつ
大分県中津市生まれの大分を拠点とするサッカーライター。大分トリニータ公式コンテンツ「トリテン」などに執筆、エルゴラッソ大分担当。著書『大分から世界へ 大分トリニータユースの挑戦』『サッカーで一番大切な「あたりまえ」のこと』『監督の異常な愛情-または私は如何にしてこの稼業を・愛する・ようになったか』『救世主監督 片野坂知宏』『カタノサッカー・クロニクル』。最新刊は2023年3月『サッカー監督の決断と采配-傷だらけの名将たち-』。 note:https://note.com/windegg
