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トッテナムが苦しいのは“プレミアが群雄割拠すぎる”から?何かにすがりたい伊沢拓司が5大リーグを比較してみた

2026.03.30

the SPURs for the Spurt 〜N17から眺めるプレミアリーグ〜 #12

熾烈な上位争い、世界中から集まる有望株、終わることのないマネーゲーム……欧州サッカーの中心となったプレミアリーグが、なぜここまでの地位を手に入れたのか、そして今後どうなっていくのか。“クイズ王”としておなじみの伊沢拓司が、敏腕経営者ダニエル・レヴィが築き上げた(202594日に退任)トッテナム・ホットスパーを通して、その活況の要因と未来の展望を綴っていく好評連載。

12回は、残り7試合で降格圏と1ポイント差の17位という「スパーズについての言い訳」を探して……「プレミアリーグは群雄割拠」なる言説を検証してみた。

本当にプレミアが最も「大変」なのか?

 若き日の手習いとは馬鹿にできないもので、『平家物語』の冒頭などもまた、テストを解かなくなった今もなおそらんじることができる。

 祇園精舎の鐘の声 諸行無常の響あり
 沙羅双樹の花の色 盛者必衰の理をあらわす

 しかし、口をついて出てくる金言が、だからといって身にしみて理解できているわけではない。盛者必衰。そんなことわかってはいるものの、目の前の現実として現れたらしっかりとショックを受けるものだ。

 弱いからといってチームへの愛が変わるわけではないが、それにしても最近のスパーズは私が見始めた頃より格段に弱い。ピッチで成果が出ていないだけならまだ我慢のしようもあるが、強固だったフロントもこの数年で崩壊、誰が意思決定者なのかもわからない状態だ。残留争いを切り抜けたとしても、その先に希望を見いだせない。チャンピオンズリーグ決勝進出から10年足らずでここまで来てしまうとは、まさしく諸行無常である。

2026年に入ってリーグ戦13試合未勝利(5分8敗)、3月22日の第31節ではノッティンガム・フォレストとの残留争い直接対決にホームで0-3と完敗し、17位に転落した(7勝9分15敗・40得点50失点)

 それにしても奇妙なのは、CLでは結果を残せていることだ。ラウンド16で敗北こそしたものの、欧州の強豪相手に善戦を続け、リーグフェーズはTOP4で終えることができた。ここでの1勝をどれでもいいからプレミアリーグで……と思わなくもないが、とても降格圏に沈むチームの戦いぶりではなかっただろう。

 スパーズに限らず、プレミアリーグ所属チームはCLにて参加6チームすべてがラウンド16まで進出(その後4チームが敗退……)。ヨーロッパリーグ、カンファレンスリーグでもプレミア勢は進撃を続けている。改めて各チームのクオリティを見せつける形となった。

 こうした結果を受けて、SNSでよく巻き起こるのが「リーグレベルの議論」である。

 どこのリーグのレベルが高いとか、群雄割拠でリーグ戦も気が抜けないとか。あまりにも変数が多すぎて比較が難しく、議論によって生まれるものもあまりないので私としては興味の持てないテーマではあるのだが……これが「スパーズについての言い訳」として使えるのならば、すがってみたい気持ちはある。それほどまでに我々は今、苦しい。苦しさの中ですがれる結果が、CLでの好成績だけなのだ。リーグで苦しみ、CLで勝ち抜いているので、これはもうプレミアリーグのレベルが異常ですよ、我々はホントはけっこう強いんですけどね……と言いたくなってしまうのである。

CLラウンド16ではアトレティコ・マドリーに2戦合計5-7で敗れたが、3月18日の第2レグはノースロンドンで3-2。2月11日のトーマス・フランク監督解任後、公式戦6試合目にして初勝利を挙げた

 でも、果たしてそうなのだろうか。「群雄割拠のプレミアリーグ」とはよく言われるものの、本当にプレミアが最も「群雄割拠」なのだろうか。リーグレベルが高い、中位に位置するチームが強い、ということはまあ見ていて感じるところだが、こと「群雄割拠」という言葉にこだわるならば、どうにも使われ方が曖昧で無根拠な気がするのだ。「プレミアはリーグ戦が大変」という文脈でよく用いられているのを見るが、おそらくよそのリーグも、リーグ戦の大変さってそこまで変わらないのでは……?

 ということで今回は、データなどをもとに欧州5大リーグの「群雄割拠ぶり」に迫っていきたい。「リーグレベル」についての検証を直接的に行うのは難しいが、「リーグの大変さレベル」はわかるだろう。群雄割拠さが際立っているならば、スパーズの結果は混戦によって生まれた紛れのうちだ……と言えないこともない、はずである。

仮説1「強さ弱さがはっきりしているなら、連勝数や連続無敗数は伸びる」

 さて、どのようにして調べるかだ。詳細なデータを使い出すときりがないので、今回はわかりやすい指標を用いたい(私の能力的限界もある)。リーグテーブルを分析対象としよう。

 調査範囲は各リーグの直近10シーズン分(2015-16〜2024-25)。データ元は『WhoScored』、使用するデータは「シーズンのリーグ内連勝数」「シーズンのリーグ内連続無敗数」だ。各シーズンにおいて、それぞれの指標上位5チームの値を合計し比較する(6位以降は各リーグかなり同じような数値になっていることは言い添えておこう)。

……

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Profile

伊沢 拓司

私立開成中学校・高等学校、東京大学経済学部卒業。中学時代より開成学園クイズ研究部に所属し開成高校時代には、全国高等学校クイズ選手権史上初の個人2連覇を達成。2016年に、「楽しいから始まる学び」をコンセプトに立ち上げたWebメディア『QuizKnock』で編集長を務め、登録者数200万人を超える同YouTubeチャンネルの企画・出演を行う。2019年には株式会社QuizKnockを設立しCEOに就任。クイズプレーヤーとしてテレビ出演や講演会など多方面で活動中。ワタナベエンターテインメント所属。

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