開幕3戦で被シュート数53本…川崎Fを悩ませる守備の機能不全と攻撃の停滞の因果関係
フロンターレ最前線#25
「どんな形でもタイトルを獲ることで、その時の空気感を選手に味わってほしい。次の世代にも伝えていってほしいと思っています」――過渡期を迎えながらも鬼木達前監督の下で粘り強く戦い、そのバトンを長谷部茂利監督に引き継いで再び優勝争いの常連を目指す川崎フロンターレ。その“最前線”に立つ青と黒の戦士たちの物語を、2009年から取材する番記者のいしかわごう氏が紡いでいく。
第25回では、優勝を目指すJ1百年構想リーグの開幕3戦を1勝1PK勝1敗で終えた中、計53本ものシュートを浴びている守備の機能不全と、それを補いきれない攻撃の停滞の因果関係を、各試合から読み解く。
J1百年構想リーグ開幕戦では、優勝候補と目されていた柏レイソルを5-3で撃破。続く第2節では昇格組のジェフユナイテッド千葉相手にスコアレスながらPK戦の末に勝利した。
上々の船出を飾ったかに思えたが、第3節でFC東京との多摩川クラシコで1-2の初黒星。それもスコア以上の完敗となったことで、チームは危機感を強める事態となっている。良くも悪くも、コントラストが強かった開幕からの3試合を振り返っていきたい。

第1節・柏戦:エリソンのハットも…残り65分間で顔を出した課題
ピッチ脇に雪が残っていた本拠・等々力での2026シーズン初陣は、ド派手な勝利だった。
緻密なスカウティングに基づく柏対策を行い大量5得点を記録。CFエリソンが前半25分間でハットトリックを達成するなど、昨季リーグトップだった得点力を発揮する展開に持ち込んだ。
この試合で狙いとしていたのは、柏の陣形の乱れを突くこと。ボールロストとハイプレスの際に広大なスペースが生まれるリスクを抱えたスタイルに対して、ミスマッチを誘発するシチュエーションを作り出す。個の局面勝負に持ち込めば、川崎F自慢のアタッカー陣が躍動しやすい展開になるからだ。先制点のPK獲得、2点目のお膳立て、3点目の起点と、前半の全ゴールに関与した左ウイングの伊藤達哉は、狙い通りの攻撃だったと試合後のミックスゾーンで振り返っている。
「レイソルはあれだけマンツー(マン)でくるので、自分のところで局面を変えられたら、それだけでチャンスになる。それは上手く生きてたかなと思います」

2点目は、まさにその目論見から生まれた追加点だった。GKスベンド・ブローダーセンのロングキックをセンターマークで競ったエリソンが頭で落とすと、それを拾ってセンターサークルを横切った右ウイングの紺野和也からボールを受けた伊藤が、敵陣ペナルティエリア付近で右CBの馬場晴也との1対1を迎え力強くドリブル。そのままエリソンも足を止めずに裏へと走り込んで3バック中央の古賀太陽を連れ出し、柏の最終ラインを押し下げるとともに紺野のプレーエリアを確保していたように、まさに狙っていた局面は伊藤が切り返して抜いたところで勝負があった。
想定外だったのは、その直後だ。伊藤が縦へと抜け出した際に、わずかに流れたボールをエリソンがかっさらい、そのままフィニッシュしたからである。完全に伊藤の間合いだったこともあり、「びっくりしました」と本人は話す。
「自分としては、エリソンが見えてなくて。シュートを打とうとして、うまくかわして打とうかなって思ったら、もうボールがゴールに決まってて。決まってよかったです。びっくりしました。でも決まってよかったです」

では、なぜエリソンがあのコースに走っていたのか。本人の証言によると、ボールを持った伊藤はカットインしてシュートを打つと予想していたのだという。そのため、逆サイドから斜めに走り込んでいくことで相手のDFを引き連れながら、「中央のシュートエリア」を空ける囮の動きをしていたのだ。
ところが――。
伊藤は中に仕掛けると見せかけて角度をつけながら、実際には急激に方向転換。次の瞬間、左サイドまで流れて抜けようとしていたエリソンのちょうど行き先にボールがあったと言うわけだ。目の前に転がってきたチャンスをモノにしないストライカーはいない。
「後で映像を見て自分もちょっと笑っちゃったんですけど」
エリソンは微笑みながら、あのゴールシーンを解説した。
……
Profile
いしかわごう
北海道出身。大学卒業後、スカパー!の番組スタッフを経て、サッカー専門新聞『EL GOLAZO』の担当記者として活動。現在はフリーランスとして川崎フロンターレを取材し、専門誌を中心に寄稿。著書に『将棋でサッカーが面白くなる本』(朝日新聞出版)、『川崎フロンターレあるある』(TOブックス)など。将棋はアマ三段(日本将棋連盟三段免状所有)。Twitterアカウント:@ishikawago
