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世界中が注目!Rakuten CUPに挑む3クラブの見所

2019.07.22

7月23日(火)に開幕する「Rakuten CUP」。約3年半ぶりの来日で注目されるFCバルセロナ、クラブOBであるランパードの新監督就任で話題のチェルシーFC、イニエスタやダビド・ビジャ、セルジ・サンペールなどバルセロナとの対戦が“古巣対決”となる選手たち擁するヴィッセル神戸の3クラブが参加する。各クラブは同大会にどのように挑むのか。見どころを『Rakuten CUP マッチデープログラム』でも選手インタビューを務めた小澤一郎氏が紹介する。

 FCバルセロナ、チェルシーFC、ヴィッセル神戸が参加するRakuten CUPの開幕がいよいよ迫ってきた。バルサ、チェルシーのどちらか1チームだけの来日、1試合だけのプレシーズンマッチであったとしても日本のサッカーファンには贅沢な楽しみだが、欧州最高峰の2クラブが来日して計2試合を戦うともなれば見逃す訳にはいかない。

 特に今夏はフル代表が参戦する欧州の大会がなかったことで欧州籍の選手たちは5月後半から7月上旬にかけて最低でも1ヶ月半の休暇を取ることができている。プレシーズンの始動期ということで肉体的にはまだ万全のコンディションではないだろうが、モチベーションの高い状態で来日するはず。さらに、バルサ、チェルシーにとっては日本での試合が初めてのプレシーズンマッチとなるわけで8月開幕を睨み戦術(システム)のトライや新戦力の見極めが行われる貴重な実践の場となる。

グリーズマン、フレンキー・デ・ヨンク加入がもたらすもの

今シーズン新加入のフレンキー・デ・ヨンクとグリーズマン

 まずは3チームの中で唯一2試合を戦い、プレシーズンツアーとしては12年ぶりの来日となるバルサの見どころを紹介しよう。昨季も安定した戦いぶりで国内連覇を達成。ラ・リーガではここ11シーズンで8度のリーグ優勝を飾っている。しかし、最大の目標であったCLのタイトルを準決勝リバプール相手にショッキングな敗戦で逃すとシーズン最後のコパ・デルレイ決勝でもバレンシアに敗れ後味の悪いシーズンの終わり方となった。その悪いイメージを払拭すべく、今夏も積極的な補強で移籍市場を賑わしている。特に7月に入ってから1億2千万ユーロ(約146億円)もの契約解除金を支払いアトレティコ・マドリーから獲得したグリーズマンは間違いなく新シーズンに向けた補強の目玉。前線でメッシ、ルイス・スアレスと共に3トップを張ることが予想されることから早くもカタルーニャの地元メディアでは3トップの頭文字を使った「MSG」なるフレーズが紙面を賑わしている。また、アヤックスから獲得したフレンキー・デ・ヨンクも来季のバルサの中盤を担う存在として大きな期待を背負っている。

 7月15日から始まったトレーニングでもデ・ヨンクは首脳陣、チームメイトに好印象を与えているようで、17日付の『スポルト』紙では「パス回しにおけるパススピードが最も速い選手」という紹介もなされていた。3シーズン目を迎えるバルベルデ監督がおそらくこのRakuten CUPで試す戦術面でのトライは、メッシ、スアレスの守備の負担を軽減すべく導入した4-4-2のシステムにおける可変性を高めること。ボールの持てるデ・ヨンク、戦術理解度の高いグリーズマンの加入によって来季のバルサは攻撃時に4-3-3でボールを回す時間を長くすることができるはず。CL準決勝リバプール戦での2ndレグを見ればわかるように、4-4-2でカウンターを撃ち合うサッカーではトランジションの頻度が高い試合に慣れているプレミア勢に対して分が悪い。CL奪還を至上命題とするのであれば、長い年月をかけてクラブに根付いた哲学、4-3-3でボールを保持しながら敵陣でサッカーをする原点に回帰する必要がある。

 新加入2選手の名前を挙げたものの、バルサはバルサ。誰が出ようが選手としてのクオリティは高く、それはBチーム所属の選手であっても変わらない。特にバルサの中盤の次世代を担う逸材であるリキ・プッチ、昨季中にトップ登録となったカルレス・アレニャの二人には注目してもらいたい。

ランパード新監督の采配に注目

今シーズンチェルシーの監督に就任したランパード

 続いては、23日にそのバルサと対戦するチェルシー。昨季はマウリシオ・サッリ監督(現ユベントス監督)の下、プレミアリーグで3位、EL制覇と確かな結果を残したものの、そのサッリが退任し、大黒柱のエデン・アザールもレアル・マドリーへ移籍した。変革を迎える中でOBのランパードを新監督に招聘し、新シーズンのプレミア制覇、CLタイトルを狙う。そうした中で迎えるRakuten CUPでは、何と言ってもランパード監督の采配に注目したい。

 23日のバルサ戦は日本での2試合目となるため、はっきりと彼の構想や頭の中を覗くことのできる試合となるはず。アザールが抜け、プリシッチが加わったスカッドの現状では選手の入れ替えが少なく、選手個々の特性から浮かび上がるチームの大枠は見えている。だからこそ、新監督がどういった色を出していくのかに注目が集まるわけだが、前任者のようにポゼッションやジョルジーニョを使ったビルドアップにこだわりを見せることはないだろう。とはいえ、前任者を否定する形での“脱サッリ”サッカーを志向するとも思えない。最終ラインのダビド・ルイス、中盤のジョルジーニョ、コバチッチなどボール保持局面での球出し、配給に計算のできる選手が揃っていることから、ポゼッションやスピーディーなパス循環を“捨てる”ようなサッカーにはならないだろう。昨季積み上げたポゼッションスタイルをベースに、今季は積極的なプレッシングで奪ってからのカウンターにも磨きをかけていくはず。攻守のバランス、ボールを握るところとカウンターで一気にゴールに迫っていくところの基準点にランパード監督の色が出るはずで、バルサが相手ともなれば奪ってからのショートカウンターを決めやすい展開、試合となる。システムに関しても昨季の4-3-3以外のオプションを持つことになるだろうし、中盤のジョルジーニョ、カンテがどのシステムでどのポジションを務めることになるのかなど見どころは多い。

古橋亨梧とイニエスタの縦関係に勝機あり

古巣対戦となるイニエスタ

 27日にバルサと対戦するヴィッセル神戸は、いよいよクラブとして学びを得ている本家との勝負の場が巡ってきた。トルステン・フィンク監督の就任によって攻撃面での縦、ゴールに対する速さが違いとして出始めている神戸はやはりアンドレス・イニエスタのコンディションと位置取りが鍵を握る。バルサ相手にボール支配率で上回る展開には持ち込めないだろうが、機転を利かせてボランチからトップ下までのエリアを上手くカバーするイニエスタの存在があれば押し込まれてドン引きとなるような試合にはならないはず。実際、最近のJ1の試合でも自陣深い位置でパスを受けたイニエスタが高い技術でプレッシングを回避し、そこから前線に高精度のロングパスを打ち込むシーンが何度も出てきている。前線にウェリントン、ダビド・ビジャというタイプの異なるFWが控え、サイドには古橋亨梧、小川慶治朗のようなスピードと推進力を兼ね備えたアタッカーもいるため、バルサのハイラインの攻略は不可能ではない。

 バルサ側からすればビジャとイニエスタのホットラインに注意を向けてくるだろうが、個人的には古橋とイニエスタの縦関係に注目している。プレシーズンマッチということでバルサがそこまでスカウティングをして対策を立ててこないことが予想される中、ノーマークになりえる古橋はバルサを驚かし、脅かす存在になることができる選手だ。目に見えるスピードや運動量、強度、シュートの上手さ以外にも彼にはポジショニング、駆け引き、タイミングという頭の賢さが備わっている。神戸でのイニエスタのプレーを見る限り、古橋はイニエスタからかなり信頼されており、その二人の関係だけで世界屈指とも呼べるバルサの堅守をこじ開けることも可能。シーズン中ということもありコンディション面、バルサ相手ということでモチベーション面でも神戸はアドバンテージを握っている。バルサの圧倒、圧勝予想が多い中、神戸が本家に一泡吹かせる期待も抱いている。

 欧州ビッグ2が参戦することで盛り上がりを見せるRakuten CUPは、何も神戸のサポーター、日本のサッカーファンだけが注目する大会ではない。バルサもチェルシーも国内のラ・リーガ、プレミアリーグのみならず、CL制覇を狙える実力と選手層を誇る欧州のメガクラブであり、だからこそ世界中の目線が集まる国際大会なのだ。23日のバルセロナ vs チェルシー、27日のヴィッセル神戸 vs バルセロナの2試合からは、プレシーズンマッチではない本気度とレベルを感じることができるはずだ。

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Photos : Getty Images

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ヴィッセル神戸チェルシーバルセロナ戦術移籍

Profile

小澤 一郎

1977年、京都府生まれ。サッカージャーナリスト。早稲田大学教育学部卒業後、社会人経験を経て渡西。バレンシアで5年間活動し、2010年に帰国。日本とスペインで育成年代の指導経験を持ち、指導者目線の戦術・育成論やインタビューを得意とする。専門媒体に寄稿する傍ら、欧州サッカー(ラ・リーガ/ポルトガルリーグ/CL)の解説、関連番組 などに出演。著書17冊(訳書、構成書も含む)。(株)アレナトーレ所属。