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欧州はGKを観よ!FIFA U-20 ワールドカップに出場する逸材達

2019.05.20

 よくこんな言葉が聞かれる。

 「島国である日本と欧州とではU-20ワールドカップの重要度が違う」

 U-20日本代表・影山雅永監督も似たようなことを言っていたし、何となく一般常識になっている概念かもしれない。ただ、欧州サイドから言わせると、「いやいや、欧州の中でも温度感はだいぶ違うよ」という話もあり、「そもそも別に年代別代表を軽視なんてしてないよ。FIFAが悪い」という声もあがる。

 そもそもU-20ワールドカップは欧州勢にとって厳しめの大会である。過去の戦績を加味して出場国の半分近くを欧州勢が占めることを許されているA代表のW杯と異なり、アンダーエイジの世界大会は弱小地域にも加盟国数に応じた枠があるため、その出場枠はわずかに24チーム中の5(ポーランドで行われる今大会は開催国枠があるので6だが)と、非常に狭き門だ。EUROの4強と+1カ国しかW杯に参加できないとしたらと想像してもらうと、かなり極端に厳しい欧州予選になっていることが分かってもらえると思う。

 よって、各国協会がユース年代の年間スケジュールを組んだとき、世界大会出場を想定するというのはそもそも難しい。ドイツやフランスといった強国でも、そうそう「欧州の5強」をコンスタントに維持するのは難しいからだ。同様に枠が狭い五輪も同じだが、どうしても欧州の各国協会のスタンスは各年代の欧州選手権をゴールにしつつ、その後に続く「おまけ」的な位置付けに五輪を含めた年代別の世界大会が置かれるという形になりがちなのだ。

 しかも世界大会の開催時期も開催国の都合やFIFAの都合によってまちまちとなりがちで、欧州のリーグ戦とバッティングすることも珍しくない。今回も欧州リーグ戦のプレーオフなどがかぶってきてしまったため、出場が難しくなったと思われる選手が出てきた。またU-20ワールドカップに関しては、U-21欧州選手権(実質U-23)の開催年と重なることで、主力選手が出られなくなることも少なくない。

 とはいえ、である。そうした制約があったとしても、やはり欧州勢はトップレベルの集団だ。狭き門をくぐって世界大会切符をつかんだ中から、後の大人物が出てきた例は別に珍しくもない。日本が準優勝を飾った1999年大会決勝の相手となったスペインにはシャビがいたし(ちなみに、ベンチにはカシージャスがいた)、グループステージで対戦したイングランドは当時「2軍」などと評されていたが、逆にクラウチやアシュリー・コールといった当時まだ無名だった未来のスターがいた。

 その他にも歴代の出場者にはアンドレス・イニエスタ、ティエリ・アンリ、マイケル・オーウェンといったレジェンドたちや、あるいはポール・ポグバのような現代の欧州サッカーシーンを彩る選手たちが輩出されてきた。前回のU-20ワールドカップでも、たとえばイタリアはGKドンナルンマという怪物を欠いていたものの、3位入賞を果たし、MFニコロ・バレッラやロランド・マンドラゴラがA代表メンバーへとステップアップを果たしていくこととなった。U-21欧州選手権の地元開催と重なり、国内公式戦の日程も厳しかったイタリアは今回も同様に苦しめのメンバー構成となってしまっているが、やっぱり「いないわけではない」のだ。

ヴィッセル神戸のアンドレス・イニエスタ
過去にはイニエスタもU-20ワールドカップに出場

欧州勢の注目は「GK」

 まず「欧州勢」という全体観で観ていくと、年代別の世界大会を観ていくと、どの大会でも共通して目を奪われるポジションがある。GKだ。この「最後の砦」のクオリティに関して、欧州勢には確実に一日の長がある。大抵このポジションがウィークになっているアフリカ勢などとは対極で、GKに始まり、GKに終わるというような試合をしてくるため、この大会の欧州勢はいつも粘り強い。

 欧州勢のGKはどの国の選手を取り上げても大丈夫なんじゃないかと思ってしまうくらいだが、個人的な最注目GKはウクライナの守護神、アンドリー・ルニンだ。18歳でA代表にデビュー(GKとしてはウクライナ史上最年少)した実力は伊達ではなく、ゾリャ・ルハーンシクでプレーしていた昨季はUEFAヨーロッパリーグでスーパーセーブを連発して一躍名を売るなど、国内レベルを超えて活躍した実績も持つ。今季開幕前にはレアル・マドリーに「お買い上げ」され、レガネスへとレンタル移籍中。いずれにせよ、ぜひチェックしておきたい逸材だ。

2018-19シーズンはレンタル先のレがネスでプレーしたレアル・マドリーのGKアンドリー・ルニン
アンドリー・ルニン

 さらにGKと言えば、絶対に外せない国がある。ポーランドだ。もはや「ポーランドのGK」という響きだけで安心感すら漂うが、日本人もジュビロ磐田のカミンスキーのプレーを通じて、「え? これがポーランドの標準クラスなの?」という驚きと共に安心のポーランドブランドを体感済みだ。この世代のポーランドにはチェルシーのマルシン・ブルカ、リバプールのカミル・グラバラといった西欧有力クラブに「お買い上げ済み」の逸材もいるが、恐らく今大会のゴールを守るのは地元の名門クラブ、レギア・ワルシャワのGKラドスワフ・マイェツキだ。

 190cmオーバーの長身ながら、その動きは実にしなやか。超反応でゴールにカギをかけるビッグセーバーである。すでにイングランド方面からのラブコールも届いているようだが、開催国として臨む今大会の活躍を通じ、よりビッグなオファーを勝ち取り、ステップアップを果たしても不思議はないだろう。

 もちろん、GKで外せない国と言えば、伝統ある半島国家の名前も挙がるだろう。二番目に紹介している時点で怒られてしまうかもしれないが、イタリアの守護神も、やはりハイレベルだ。ミランのGKアレッサンドロ・プリッツァーリが今大会でどんなプレーを見せるかは大いに楽しみな要素。前回大会でも飛び級招集を受け、ウルグアイとの3位決定戦ではビッグプレーを見せている。もっとも、ご承知のようにミランでは一つ違いに怪物がおり、出場機会が限定されているのは不安要素。そんな状態ながらA代表合宿にも招集を受けるなど期待値がトップクラスなのは間違いないだけに、今大会で実力を証明したい。

 そしてイタリアと言えば、復活した名門フィオレンティーナのゴールを守るアルバン・ラフォンも今大会の最強GK候補である。ブルキナファソをもう一つのルーツとするフランスの守護神は、並外れた身体能力と確かなスキルを備えた未来型のGK。こちらも190cmオーバーの長身だが、鈍さを感じさせないタイプである。誰を取り上げても一級品。やはり欧州勢は「まずGKを観よ」で間違いない。

タレント集団・ポルトガル代表

 すっかり文字数がなくなってしまったが、チームとしては何と言ってもポルトガルがオススメだ。この世代はU-17欧州選手権、U-19欧州選手権の双方のタイトルを獲ってきたメンバーで勝ちを知っている集団だ。ベンフィカのFWジョアン・フェリックスは活躍しすぎてA代表へ行ってしまったが、同じくベンフィカで活躍し、A代表デビュー済みのMFゲドソン・フェルナンデスはこちらにメンバー入り。スタミナも素早さもテクニックも備えるセントラルMFは、大会最注目株の一人だろう。

ベンフィカのゲドソン・フェルナンデス
ゲドソン・フェルナンデス

 マンチェスターUのDFディオゴ・ダロト、ウォルバーハンプトンのDFルベン・バイナグル、リールのFWラファエル・レオンといった海外で早くも頭角を現している選手がいるのも強み。ポルトガルでの指導経験を持つ関西地方の某JFLクラブGMも、メンバーリストを見て「ポルトガルの最近の年代別代表はホントに強い。そしてこのメンバー! これは強い! 絶対強い!」と語彙少なめの太鼓判を押す豪華なラインナップとなった。

 他にも紹介したい選手は多くいるが、特にフランスは間違いなくタレントの宝庫。フランスの年代別代表は伝統的にむき出しの「個」を押し出すスタイルで、欧州の中でも異端だが、それだけに若手マニアとしては観ていて面白い。今回はドイツなど海外でプレーしている選手たちもしっかり集めており、かなり見応えのあるチームになりそうだ。2年前のU-17W杯で日本に煮え湯を飲ませたリヨンのFWアミーヌ・グイリもおり、ぜひノックアウトステージで対戦してみたい相手である。

「欧州はU-20ワールドカップを重視していない」なんて斜に構えると、ちょっともったいない。今大会に臨む欧州勢には、それだけのタレントがひしめいている。

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原点がココにある

5/23(木)開

FIFA U-20 ワールドカップ ポーランド 2019

J SPORTS にて全52試合生中継!

放送予定

5/23 (木) 24:45- メキシコ vs. イタリア

5/23 (木) 27:15- ポーランド vs. コロンビア

5/24 (金) 27:15- ウクライナ vs. アメリカ

5/25 (土) 22:15- ポルトガル vs. 韓国

5/25 (土) 24:45- フランス vs. サウジアラビア

他試合スケジュールなど詳細はこちら

Photos: Getty Images, AFLO

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アンドリー・ルニン日本代表育成

Profile

川端 暁彦

1979年8月7日生まれ。大分県中津市出身。フリーライターとして取材活動を始め、2004年10月に創刊したサッカー専門新聞『エル・ゴラッソ』の創刊事業に参画。創刊後は同紙の記者、編集者として活動し、2010年からは3年にわたって編集長を務めた。2013年8月からフリーランスとしての活動を再開。古巣『エル・ゴラッソ』を始め各種媒体にライターとして寄稿する他、フリーの編集者としての活動も行っている。著書に『Jの新人』(東邦出版)。