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セビージャは育成も超一流。“ブルドーザー方式”で人材確保

2017.10.12

革新?伝統?欧州の注目アカデミー③リーガ編

史上最高額を一気に倍以上も更新したネイマールを筆頭に、とどまることを知らない移籍市場のインフレ化。そのインパクトの影に隠れがちだが、こうした潮流の裏で激しさを増しているのが、価値が高騰する前のタレント争奪戦だ。その対象は、FIFAの移籍条項により国際移籍が不可能なU-17ワールドカップ世代も例外ではない。ここでは、欧州4大リーグの中でもタレントの発掘・育成に力を入れている4クラブの、独特のメソッドに迫る。

 セビージャは16-17シーズン、唯一Bチーム(セビージャ・アトレティコ)を2部リーグに送り込んでいる(しかも残留を勝ち取った)クラブだった。1部リーグは2強の独壇場だが、こと育成に関してはレアル・マドリーやバルセロナと肩を並べるだけのレベルにあることの証明だろう。

 その成功の土台にあるのが、確立した組織だ。トップチーム担当のスポーツディレクター(SD)が下部組織の監督、選手の選出・獲得までもすべてこなし、下から上まで目を光らせている。セビージャ・アトレティコに所属する選手の実に70%近くが、10歳そこそこでクラブ入りした選手だと言えばその凄さが伝わるだろう。

 ただし、そこからトップチームへとステップアップするためのハードルは高い。かつては財政上の必要性から“育成枠”と呼べるものがあったが、今は完全に実力主義。ホセ・アントニオ・レージェスやセルヒオ・ラモス、ヘスス・ナバスらのような力がある者のみが登れる細き道となっている。

スカウティング方針はトップチームと真逆

 セビージャが育成上最も重視しているのがタレントの発掘である。スカウティングエリアはスペインで有数の名選手の産地セビージャ、コルドバ、カディス、ウエルバ、マラガ。2強やアトレティコ・マドリー、ビジャレアルらがスペイン全土にスカウト網を広げているのに対し、セビージャは地元だけで十分に育成は機能すると考えている。

 発掘のステップは、8歳から11歳までは“獲って試してふるいにかけ”という大量入れ替えを繰り返し、そうして選りすぐられた者だけが12歳以降にチームの一員として磨かれていくことになる。つまり、個をチェックする時期(8~11歳)、チームの中での個をチェックする時期(12歳以降)と2段階に分かれているわけだ。セビージャのスカウト部門の優秀さは知られているが、トップチームが輝く前のダイヤモンドの原石を探してくるのに対し、育成部門では各チームで最高に輝いている選手を根こそぎさらってくる、といういわば“ブルドーザー方式”が採用されている。そんなラフなやり方が許されるのもアンダルシア地方でこのクラブが圧倒的な影響力を持っているからであり、だからこそその影響の及ぶ範囲外には手を伸ばさない、という理屈となる。

 こうして選び抜かれ残っていく選手の特徴は、育成責任者に言わせると「タレントとリーダーシップを兼ね備えている者」であるという。リーダーを獲ってきてリーダー同士を競わせるのだから当然だろう。サッカー選手は詰まるところは個人事業主であり、仕事、人生においてすべて自分がリーダーでなければならない、と考えると納得できる言葉である。

 バルセロナのように育成年代統一のシステムやプレースタイルというものはない。監督によってそれらがコロコロ変わるトップチームへの昇格を最終目標としている限り、むしろ当然だろう。ただし、それは監督任せでスーパーバイザーが存在しない、という意味ではない。マンネリを防ぐために監督は1年交代がルール。シーズン中は下部組織統括部門とSDが監督たちの仕事ぶりを常にチェックし、細かなチーム別、選手別の指導が行われる。セビージャのアイデンティティや育成の質はこのスーパーバイズによって保証され維持されているわけだ。

 練習のやり方は4年前から統一されている。最初の45分間が個別練習でドリブル力、トラップ力、パス力、シュート力を磨く。その後の1時間がチーム練習で、チームの中で個人技を生かすことや戦術を学ぶ。これは7、8歳の世代からBチームまで基本的に同じ。インテンシティや難易度だけがカテゴリーによって異なる。もっとも、セビージャ・アトレティコは2部に参戦した昨季から「育成重視」ではなく「コンペティション重視」となっているので、練習メニューについてはリーグ戦やカップ戦の必要性によって監督の裁量に任されるようになっている。

欧州の注目アカデミーをリーグごとに紹介

Photo: Getty Images

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スペインセビージャリーガエスパニョーラ育成

Profile

木村 浩嗣

編集者を経て94年にスペインへ。98年、99年と同国サッカー連盟の監督ライセンスを取得し少年チームを指導。06年の創刊時から務めた『footballista』編集長を15年7月に辞し、フリーに。17年にユース指導を休止する一方、映画関連の執筆に進出。グアルディオラ、イエロ、リージョ、パコ・へメス、ブトラゲーニョ、メンディリバル、セティエン、アベラルド、マルセリーノ、モンチ、エウセビオら一家言ある人へインタビュー経験多数。

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