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ティム・ハワード38歳。 尽きぬ情熱、挑戦は続く

2016.09.15

欧州のトップリーグで輝かしい実績を残した名優たちが、新たな挑戦の場として欧州以外の地域へと旅立つケースが増えている。しかし、そのチャレンジの詳しい様子はなかなか伝わってこない。そんな彼らの、新天地での近況にスポットライトを当てる。

#014 from USA
Tim HOWARD
ティム・ハワード
(コロラド・ラピッズ/アメリカ代表)

 アメリカ独立記念日の7月4日、ハワードは13年ぶりにMLSのピッチに立った。24歳でマンチェスターUに引き抜かれ、その後エバートンで10年を過ごし、この夏コロラド・ラピッズに加入した37歳にとって、久々の母国リーグは彼が知るそれとはずいぶん違って見えたはずだ。最後にプレーした03年は10だったクラブ数は倍になり、空っぽの競技場が仕事場だった当時所属のメトロスターズはNYレッドブルズに名を変え、今では2万人が集う。同じ街には「シティ」の名を持つチームもできてそこにピルロやランパードがいるように、数えるほどだったスター選手も絶えず流入してくる時代になった。

 きっと感慨深いものはあっただろう。しかし、ハワードはそんなノスタルジーに浸り、余生を楽しむために戻って来たわけではない。エバートン退団とラピッズ加入を決めた際に、彼はこう言った。

 「次のW杯までに、自分の実力をアピールする場になる。誰もそんなことは気にもかけていないかもしれないが、私にとっては何より大事なことだ」

 そう、彼は39歳で迎える2018年のロシアW杯出場を本気で狙っているのだ。10シーズンを戦ったエバートンではクラブ史上初のプレミア350試合出場を果たし、歴史に名を刻んだが、今年に入り定位置を奪われた。遠くイングランドの地でベンチを温めながら過去の実績にすがるより、クリンスマン代表監督の目に必ず触れる母国で毎週活躍する方がいい――こう考え、彼は「心から愛する」エバートンを去ることを決めたのだ。

 母国で「客寄せパンダ」になるつもりはなかったハワードに対し、ラピッズが提示したのは“本気”のオファーだった。ここ2年連続でMLSカップ(プレーオフ)進出を逃し、15年は西地区最下位に沈んだクラブは今年、元スイスリーグ得点王のFWガシ、ドイツ育ちのアメリカ代表MFジャーメイン・ジョーンズを獲得しチーム改革に乗り出した。その甲斐あって、開幕から西地区の首位争いを展開。今年から正GKになった25歳の守護神マクマスも、ハワード加入までのリーグ戦16試合でわずか11失点、リーグ最多のクリーンシート6回と決して評価は低くなかった。だがそれでも、さらに上を目指すにはハワードが持つ“無形遺産”、すなわちリーダーシップや勝者のメンタリティが不可欠だと考え、この英雄を口説き落とすに至ったのだ。

「国防長官」のセキュリティに錆なし

 そんな期待を背に迎えた独立記念日。ポートランド・ティンバーズ戦のピッチには、抜群のポジショニングと落ち着きで敵の決定機を難なくストップし、味方がミスをすれば鬼気迫る表情で怒声を上げるハワードの姿があった。デビューをクリーンシートで飾ると、その後も西地区の首位攻防戦だったダラス戦、豪華攻撃陣を擁するLAギャラクシーとのアウェイ決戦など、劣勢の試合で複数の決定機を防いでドローに貢献。すでに現地では「ワールドクラス」と賛辞が飛び交っている。

 その直前に行なわれた今夏のコパ・アメリカでは、グザンに正GKの座を譲った。だが、14年W杯での大活躍で「国防長官」と呼ばれた男のセキュリティは錆びついていない。ロシアで再び母国を守るため、ハワードの挑戦はまだ続く。

<プロフィール>
ティム・ハワード
(コロラド・ラピッズ/アメリカ代表)
1979.3.6(37歳)
191cm / 88kg  GK  USA

1997 ノースジャージー・インペリアルズ
1998-03 メトロスターズ
1998 MLS Pro-40 on loan
2003-06 マンチェスター・ユナイテッド (ENG)
2006-07 エバートン (ENG) on loan
2007-16 エバートン (ENG)
2016- コロラド・ラピッズ

Photo: Getty Images

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37号アメリカ代表エバートンコロラド・ラピッズティム・ハワード名優たちの”セカンドライフ”転載連載

Profile

寺沢 薫

1984年生まれ。『ワールドサッカーグラフィック』編集部を経て、2006年からスポーツコメンテイター西岡明彦が代表を務めるスポーツメディア専門集団『フットメディア』に所属。編集、翻訳をメインに『スポーツナビ』や『footballista』『Number』など各媒体に寄稿するかたわら、『J SPORTS』のプレミアリーグ中継製作にも携わった。