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指導者教育における「メンター」の可能性。優秀な若手監督を「使い捨て」にしない制度

2023.07.05

カリスマ的な人気を誇る元レジェンド選手も、監督学校を首席で卒業するような俊英も、最初のステップでつまずいてしまえば監督としてのキャリアは困難になってしまうのが、サッカー界の現実だ。そもそも監督という職業は特殊で、未経験者がうまくやるのは容易ではない。そこで注目されているのが「メンター(=助言者)」を置く制度だ。

グアルディオラはなぜ、リージョを求めるのか?

 ペップ・グアルディオラは、現役時代から師匠である「哲学者」フアンマ・リージョを誰よりも信頼している。

 マンチェスター・シティではアシスタントコーチとしてグアルディオラを支えていたリージョは、2022年夏にチームを離れてカタールリーグのアル・サッドの監督に就任。しかし、22-23シーズンのCL準決勝、レアル・マドリーとの大一番を前にしたグアルディオラは彼をサポートスタッフとしてチームに帯同させていた。イスタンブールの地で行われたインテルとの決勝でも、リージョは元キャプテンのフェルナンジーニョとともに監督を補佐して優勝を陰から支えた。『The Athletic』によると、今季アシスタントコーチを務めたエンツォ・マレスカがレスターの監督に就任したことで、グアルディオラは再度「リージョの招聘を検討している」と報道されている。

 そのグアルディオラは、リージョの重要性について次のように説明している。

2022年6月以来となるシティ復帰の可能性があるフアンマ・リージョ

 「リージョは、私が気づいていないところに気づく。それこそが、彼の特別な感性だ。特にチームが悪い状況にある時、彼が私を落ち着かせてくれる。そして、チームの状況が結果に直結していないことをいつも思い出させてくれる」(『The Athletic』)

 このように、経験豊富なアシスタントコーチを置くことで指揮官をサポートするチームは少なくない。アーセナルでは、アレックス・ファーガソンを支えていたアルベルト・スタイフェンベルフが若き指揮官ミケル・アルテタを輝かせている。多くのチームが指揮官をサポートする人材を置いていることは、欧州トップレベルの指揮官であっても「迷う」ことがあることを示唆している。彼らのように迷いを抱えた指導者をサポートするために、指導者教育機関やサッカー協会は近年「メンター制度」や「1 on 1のコーチング」に着目している。今回は、指導者教育におけるメンター制度や1 on 1コーチングの価値を考えてみよう。

成功するメンターの6タイプ

 近年、スポーツコーチングの領域では「メンター制度」の研究が進んでいる。……

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ジョセップ・グアルディオラファンマ・リージョ

Profile

結城 康平

1990年生まれ、宮崎県出身。ライターとして複数の媒体に記事を寄稿しつつ、サッカー観戦を面白くするためのアイディアを練りながら日々を過ごしている。好きなバンドは、エジンバラ出身のBlue Rose Code。

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