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選手選考からGPS管理まで。全日本大学選抜コーチが明かすデータ活用術

2022.11.16

コロナ禍の影響で実に3年ぶりとなった大学日韓定期戦が、6月25日と9月17日にそれぞれのホームで開催された。その大会に臨んだ全日本大学選抜は、1つのチャレンジとして本格的にデータを導入した選手選考やトレーニングに着手。何を目的に実行し、その結果何を得たのか――。当事者である全日本大学選抜の福士徳文コーチがレポートする。

 今回取り上げる日韓戦が現行の定期戦となったのは2004年からで、年に1回、日本と韓国で交互に開催されています。これまでの戦績は7勝2分7敗と、互角の戦いを繰り広げてきています(両国ともにホーム開催では負けなし)。

 この大会に全日本大学選抜として出場した選手の中には、長友佑都選手や、伊東純也選手、守田英正選手、三笘薫選手など、後に日本代表へと選出される選手も多くいます。全韓国大学選抜でも、キム・ミンジェ選手(ナポリ)、イ・ジェソン選手(マインツ)、チョン・ウヨン選手(アル・サッド)など、今回のカタールW杯の韓国代表メンバーに選出された選手も出場しています。

 こうした歴史ある大会ですが、今年開催された第19回大会(6月25日)は日本が5-0の勝利、その約3カ月後の第20回大会(9月17日)では2-2で迎えた延長戦の末、2-3で敗れました。その結果、通算戦績は8勝2分8敗。良きライバルとしてこの日韓戦が大学サッカーにおいても伝統の一戦として価値ある存在となっています。

©︎JUFA

年代別日本代表と大学選抜のTRMという試み

 コロナ禍で海外遠征を実施できない状況の中、日本サッカー協会にご協力をいただき、同年代の日本代表と大学選抜とのトレーニングマッチ(以下、TRM)を複数回行うことができました。

 このTRMは、大学選抜にとっては同世代のトップクラスと対戦することで自身の現在地と課題を発見できる貴重な成長の機会となります。同時に、大学サッカー界から新たな選手の発掘をしていただけるチャンスともなります。そのため、大学選抜のモチベーションは非常に高いものがありました。

 このTRMは、今回の日韓定期戦に向けたチーム作りをしていく上でも重要な位置づけです。与えられた時間の中でどの程度自身の力を発揮できるか、自チームとは違う戦術やポジションであっても積極的にトライできるか、チームメイトとコミュニケーションを深められるか、ピッチ外での振る舞いはどうかなど、普段の公式戦視察のみではわからない点まで観察することができました。表1は、全日本大学選抜または関東大学選抜と各年代日本代表候補とのTRM結果の一覧となります。

表①各年代日本代表候補とのTRM結果

データを活用した選手選考の仕組み

 今回の代表選考にあたり、スタッフ間では以下を基準として共通認識を持った中でスカウティングを行いました。

プレーヤーとして

・攻守にハードワークできるか
・切り替えのスピードはあるか
・全力で戦い、球際で身体を張れるか
・勝ちたい気持ちを出せるか
・個人の特徴を発揮し、連携できるか
・チーム戦術を理解し、実行できるか

 その他にも、韓国選抜はFWやCBに高さのある選手、サイドにはスピードのある選手が配置される傾向があることも考慮した上で、スカウティングを重ねました。また、プレーヤーである前に、一人の人間・学生ですので「全日本大学サッカー連盟宣言」に基づき、味方が苦しい時に頑張れるか(声かけ・姿勢・振る舞い)、模範となる行動ができ、感謝の気持ちを表現できるかなど、パーソナルな部分も重要視しました。

 これらの共通認識のもと、大学リーグや、全日本大学サッカー選手権大会の視察で選手をリストアップ。最終的には、2022年3月に行われた第36回デンソーカップチャレンジサッカー福島大会(以下、デンチャレ)を通して活躍した選手を優秀選手として表彰し、全日本選抜編成時のベースとすることになりました。

 デンチャレの優秀選手を選出するにあたり、1つの新しいチャレンジとして分析ソフトの「Bepro11」を使用し、集計されたデータも活用しました。選考には、ポジション別の各プレーデータの集計結果や、「BePro11」の定義に基づくオン・ザ・ボールのプレーの集計結果をポジションごとのアルゴリズム(機械的計算方法)に基づいて採点する方式などを活用しました。

 個人のスタッツは、攻撃と守備、GKの3つに大きく分かれ、チームスタッツも集計されます。主な集計項目としては、攻撃では枠内シュートやペナルティエリア内のシュートなど、守備ではインターセプトや空中戦・地上戦のデュエル勝率など、GKではキャッチやパンチング、セーブ率などがあります。

 今回のデンチャレは関東選抜Bが関西選抜との決勝を1-0で勝利し優勝しました。関東選抜Bは全4試合(予選リーグ3試合、決勝1試合)のうち、勝利した3試合はすべて1-0、失点も1-1で引き分けた試合の1失点のみと、安定した守備が特徴的でした。これは、チームの守備スタッツである、ディフェンシブサードでのインターベンション数やクリア数などが全8チーム中1位だったこともその裏付けとなっています。

 こうした大会では、決勝で得点した選手がMVPに選出されることが多いですが、今大会では、「BePro11」によって分析されたチームの特徴と個人のスタッツからGKの近藤壱成選手(法政大)がMVPに選出されました。近藤選手は、GKの中で1位のセーブ回数を記録しており、チームの象徴的な選手であったことが評価された結果の選出となりました。MVP含め、最終的に優秀選手を選出する際には、全日本大学サッカー連盟技術委員会および全日本大学選抜のスタッフを中心とした現場の総合評価も併せて選出していますが、上述のようにデータを活用した評価も加えて選考していくトライを始めています。

 最終的に、日韓戦に向けて選ばれた選抜メンバー全員とはそれぞれ個人面談も行いました。個人面談では、まずスタッフから戦術面での確認事項を伝えました。また、選手から聞き出したいこと、確認したいこととして、①普段のポジション、②これまで経験したポジション、③国際試合経験の有無、④セットプレーのキッカーを担当しているか(FK、CK)、⑤PKを蹴っているか(試合中・PK戦)、⑥意気込み、などを中心に自由な会話形式で行いました。最後には、選手からも自由に発言してもらい面談を終えています。

©︎JUFA

GPSデータの4つの活用例

 6月に行われた日本開催の日韓戦に向けた事前のトレーニングキャンプから、GPS機器を装着し、データを取得することができました。これまでは、その時のスタッフが所有している機材を使用することや、協力を得られた大学にサポートをいただくなど、研究ベースで使用することはありましたが、今回からは全日本大学サッカー連盟として機器を導入し、正式にGPSデータを活用していきました。具体的な活用方法は、以下にまとめます。……

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Profile

福士 徳文

岩手県盛岡市出身。現職は大学教員(慶應義塾大学体育研究所・専任講師)。専門分野はサッカー、コーチング、トレーニング科学。盛岡商業高校3年時にインターハイ、全国高校選手権で得点王。サッカーやフットサルの授業を担当する傍ら、関東大学サッカー連盟技術委員として大学サッカーの発展に尽力している。