「クロップには人の意見を聞く勇気がある」 トーマス・グレネマルク:スローイン専門コーチの使命(後編)

リバプール、アヤックス、ミッティラン。20-21シーズンのCLグループステージD組で顔を合わせた3チームには共通点がある。世界初のスローイン専門コーチ、トーマス・グレネマルクの教えを受けているのだ。
去る12月、世界各国の様々なチームでスローインを指導するスペシャリストがポッドキャストにゲスト出演。スローインコーチ誕生の秘密からリバプールと契約を結んだ経緯まで幅広く聞いたのは、リバプール公式サポーターズクラブ・オースティン支部のメンバーが運営するYouTubeポッドキャスト『The Liverpool Connection Podcast & ATX Reds Press』だ。その管理者ダズ・オコーナー(現在はアメリカ在住のスカウサー)とグレネマルク両氏の許可を得て、トーク内容をインタビュー記事として掲載する。
後編ではリバプールで実践するトレーニング、そして指揮官ユルゲン・クロップの素顔に迫る。
<トーマス・グレネマルク公式サイトはこちら>
< 『The Liverpool Connection Podcast & ATX Reds Press』 はこちら>
https://www.youtube.com/channel/UCOnGXxTi6-ZmC0MeNbYhREA
スローインは「チームプレー」
――スローインの指導はSBの選手だけでなく、チーム全体で行っているのですよね?
「リバプールでは3つの仕事を担当しています。1つ目は、リバプールの全試合の全スローインを分析する仕事です。2年半前にリバプールで働き始めてから、ずっと続けています。2020年になって私はイングランド以外にも3つの大陸で仕事をしましたが、世界中のどこにいようとリバプールの分析チームがスローインのビデオを送ってくれます。リバプールがスローインをした場面と相手チームがスローインをした場面の両方です。それらをすべて分析し、ユルゲンに送り返しています。2つ目の仕事は、選手たちをトレーニング施設の会議室に集めて行う講義です。
そして3つ目は、最も重要な仕事です。ピッチで実際に選手たちを指導します。先ほどお話しした『長いスローイン』『速いスローイン』『賢いスローイン』というスローインの3原則を使っていますね。リバプールでは『長いスローイン』の指導はあまりしないのですが、スローインが長ければプレーの選択肢が増えますから、特にSBの選手は長いボールを投げられる方が良いですね。実際に私の指導によって、リバプールのほとんどの選手たちが飛距離を約5〜10m伸ばしました。15m伸ばした選手もいます。ただ、リバプールにおいて私の指導の95%は、『速いスローイン』と『賢いスローイン』の2つに費やされます。ピッチのあらゆる場所でスペースを作れるように、頭を使うことを教えるのです。私はピッチを3つのゾーンに分けて指導を行っていて、各ゾーンによって異なる投げ方やスペースの作り方が複数あります。合計で約50通りの方法がありますね。……
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Profile
The Liverpool Connection Podcast & ATX Reds Press
テキサス州オースティン在住のスカウサー、ダズ・オコーナーが、リバプール・サポーターズクラブ・オースティン支部(OLSC Austin)会長のスティーブ・ウィルソンとともに2020年2月に開設したYouTubeポッドキャスト。リバプールFCにゆかりのあるゲストが登場し、リバプールと恋に落ちたきっかけやクラブを応援する喜びを語ってくれる。ゲストの多くが現地のファンやジャーナリストであるのは、彼らに現地の文化やコミュニティの魅力についても語ってもらうことで、海外のファンにリバプールの街をもっと身近に感じてもらいたいから。