REGULAR

グラスルーツでも増える若手指導者。その理由と可能性

2020.09.05

中野吉之伴の「育成・新スタンダード」第9回

ドイツで15年以上にわたり指導者として現場に立ち続け、帰国時には日本各地で講演会やクリニックを精力的に開催しその知見を還元。ドイツと日本、それぞれの育成現場に精通する中野吉之伴さんが、育成に関する様々なテーマについて提言する。

第9回は、トップレベルだけでなくグラスルーツでも若い指導者が増えているというドイツで、自らのチームでも若手コーチと接しているという中野さんがその背景を解説する。

 僕は現在43歳の育成指導者だ。

 日本の現場だとどうだろう? 世代交代が進んでいるところもあるだろうが、全国的にみたらまだまだ若い部類に入るのではないだろうか。

 今所属しているフライブルガーFCというクラブの育成スタッフ全体で、僕は上から3番目。クラブが力を入れているU-12以上のチームで見ると最年長になる。周りを見ると圧倒的に若い指導者ばかり。ここ2シーズン連続で僕はU-13監督をしているが、昨季も今季もコーチ陣は21歳の大学生だ。

 ただ、その素質は素晴らしい。

 今季に関して言うと、U-13は3人体制をとっているが、若い2人の指導ぶりを見ていると「俺はいなくても別に大丈夫なんじゃないか?」と思うほどだ。正直危機感を感じながら、現場で頑張っている。

 頭ごなしに怒鳴りつけることなんてないし、子どもたちとじゃれ合ってふざけるだけではない。プレーにおける修正点をクリアにして、どんなプレーが求められるのか、なぜそうなのかを丁寧に説明できる。教科書に書かれている言葉を音読するようにではなく、しっかりと気持ちを込めて、自分の言葉でアウトプットする。トレーニングや試合による負荷を考えて、いつどんな練習をしたらいいかを真剣に考える。そして、こちらのアドバイスにも素直に耳を傾ける。

 子どもたちは適切なトレーニング、試合環境があればどんどん成長していくが、それは若い指導者にとっても当てはまるのだなと実感している。……

残り:3,726文字/全文:4,546文字 この記事の続きは
footballista MEMBERSHIP
に会員登録すると
お読みいただけます

Profile

中野 吉之伴

1977年生まれ。滞独19年。09年7月にドイツサッカー連盟公認A級ライセンスを取得(UEFA-Aレベル)後、SCフライブルクU-15チームで研修を受ける。現在は元ブンデスリーガクラブのフライブルガーFCでU-13監督を務める。15年より帰国時に全国各地でサッカー講習会を開催し、グラスルーツに寄り添った活動を行っている。 17年10月よりWEBマガジン「中野吉之伴 子どもと育つ」(https://www.targma.jp/kichi-maga/)の配信をスタート。

RANKING