【綺々羅々ヴィヴィのW杯トリヴィア】なぜスウェーデンは予選0勝で本大会へ滑り込めた?ギェケレシュ、イサクら大型ストライカーも続々輩出する北欧勢の秘密
綺々羅々ヴィヴィのW杯トリヴィア#3
いよいよ開幕が迫る北中米W杯は、世界中が待ち焦がれた各国一体で盛り上がる4年に1度の祭典。リアルもバーチャルも分け隔てなく、みんなで一緒にサッカーの魅力を味わい尽くしたい――そんなfootballista(フットボリスタ)の想いに共感してくれたのが、過去にインタビューを掲載したこともあるホロライブプロダクション所属タレントの綺々羅々ヴィヴィさん。「サッカーを見てこなかったライトな層の方や初心者の方と同じ目線で見て、ルールとかもわかってないけど『見てみたら楽しかったからまた見てみよう!』って思う方が、1人でも増やせるような活動ができたらいいな」と夢見る彼女と、気になる日本代表の対戦国を予習できる!W杯観戦のおともになること間違いないトリヴィアを、有識者との対話形式でわかりやすく紹介していく、サッカーメディア史上初(?)のVTuber連載。
最終回となる第3回で取り上げるのは、グループステージ最終節で激突するスウェーデン代表。北中米W杯欧州予選未勝利からプレーオフを勝ち抜いて本大会に滑り込んだ復活劇の裏側を、日韓W杯から同国のサッカーを追い続けている佐藤真理子さんが解き明かす。ビクトル・ギェケレシュとアレクサンデル・イサク、それぞれの物語にノルウェー代表のアーリング・ハーランド含め、大型ストライカーを北欧勢が続々と輩出している秘密も教えてもらった。
「今日からトミのもの」アイスランド戦後に受け継がれた22番
――まず綺々羅々さんにおうかがいしたいのが、5月15日に発表された日本代表の北中米W杯メンバーについてです。同日にXで「全力応援するぞ!!!!!」とポストをされていたり、配信で話題にされていたりしましたが、あらためてその顔ぶれを見た感想を教えてください。
綺々羅々「『ついにW杯が始まるんや!』って楽しみになったんですけど、やっぱり南野(拓実)選手だったり、三笘(薫)選手がケガでいなかったのが残念で……。2人ともカタールW杯ではPKも蹴ってたじゃないですか、(ラウンド16の)クロアチア戦(●1-1/PK1-3)で。あの見てる人にも伝わってくる緊張感を今でも覚えてて、苦しい思いをされたと思うので、このW杯でその雪辱を晴らしてほしい気持ちもあったから、一番悔しいのは選手ご本人やと思うけど、ヴィヴィも悲しくなってしまって……。
でも、その後に背番号も発表されてて、南野選手の8番を久保(建英)選手が、三笘(薫)選手の7番を田中(碧)選手がつけることになったんですよね。それを見て『そういう選ばれなかった選手たちの想いも背負って、W杯を戦ってくれるんだ……!』って胸が熱くなったし、ヴィヴィにできることはもう一生懸命応援することしかないので、このメンバーをみんなと一緒に全力で応援したいと思います!カタールW杯でも『ブラボー!ブラボー!』ってチームの熱を上げてくれてた、長友(佑都)選手もいるので!ついこないだのような、懐かしいような、不思議な感じですけど(笑)、また日本を元気にしてくれるんじゃないかと思って、楽しみにしてます!」
――その中でクラブ事情で参加が遅れた鎌田大地選手に代わり、これまでの日本サッカーへの功績と貢献に敬意を表して吉田麻也選手が追加招集された、5月31日のアイスランド戦を取材してきたんですけど……。
綺々羅々「あ、吉田選手も気になってました!ヴィヴィがサッカーにハマって、試合見るようになった東京オリンピックの時も、カタールW杯もずっとキャプテンで、その後は世代交代とかで日本代表で見れなくなって寂しかったから、今回追加で呼ばれてて、凄いそれも楽しみだなと思ってました!でも、配信と重なってしまってアイスランド戦は見れなかったので……聞きたいです!取材の話も!」
――まさにその長友選手の招集について、試合前日に吉田選手が率直な想いを口にしていたんですよね。「賛否両論あると思います。それは僕も、外にいた時は思うこともあった」と。でも「(代表に)入ってみて、もう体見ただけでわかりました。相当やってないとあの体は作れない。だから長友選手と一緒にお風呂に入ってみてください(笑)」と続けていて(笑)。後日、『吉田麻也 Treasure in Talk』という冠ラジオ番組でも、「佑都はもうね、髪の毛染めるとか、ハチマキ巻くとか、メキシコのハット被るとかじゃなく、もう一番は脱いだらいい」と話していましたね(笑)。
綺々羅々「お風呂!(笑)いやでも、さすがに『Team Cam』とかでもそこまでは見せてくれないから、貴重な証言で助かります!(笑)でも、長友選手も凄いですよね、もう5回目のW杯になるってリスナーさんに教えてもらって。そういう経験豊富なベテランも、またこういう舞台に一緒に立ってくれるのは凄く心強いです!吉田選手もまた、W杯で見たかった気持ちもあるけど……」
――ただ、吉田選手はアイスランド戦が「僕のW杯」だと強調していたんですよね。出場時間も前日会見で森保一監督が「前半の10分ぐらい、プレーしてもらって彼を送り出したい」と明言していたんですけど、同時に森保監督はW杯で3大会連続出場してきた吉田選手がチームに与える刺激を「W杯に向けて調整、コンディションを上げていくという選手たちの中に、ギラギラしたものを持って、『本当は自分も選ばれたいんだ』っていう良い意味での緊張感も与えてくれている」「何よりもW杯基準の心構えであったり、彼の経験値からいろんな選手にコミュニケーションを取ってくれて、経験値の浅い選手に関しては間違いなくW杯が想像でき、良い準備、良いプレーにつながるという良い機会になっている」と受け止めていて。6月5日には吉田選手がトレーニングを一緒に行うサポートプレーヤーとして、先に開催地入りしていた日本代表に再合流されていましたが、ピッチ内外で貴重なお手本になってくれているんじゃないかと思います。
綺々羅々「確かにW杯が初めての選手もいますもんね、あんまりまだ見たことがないメンバーも前のほうにいて。後藤(啓介)選手だったり、塩貝(健人)選手とかも、このW杯でどんなプレーを見せてくれるのか凄く楽しみにしてたので、そういう後輩たちに、先輩たちから想いや経験が直接受け継がれていくのもワクワクします!『世代を超えてみんなで戦うんだ!』って感じがして!」
――南野選手も、メンターとして駆けつけてくれていますしね。あと吉田選手自身は「一区切り」「(代表)引退ではない」とずっと念を押していましたが(笑)、代名詞だった「22番はもう、今日からトミ(冨安健洋選手)のもの」とアイスランド戦後に明言していて。もともと北中米W杯で22番を背負うことが決まっていた冨安選手が、あの試合では鎌田選手が空けた背番号15に回って、22番が吉田選手の背中に戻ってきていたんですよね。
綺々羅々「そうそう!トミーがW杯のメンバーに入ってたのも本当にうれしくて、凄く楽しみにしてました!確かカタールW杯の後、アジアカップとかの時も22番をつけてたと思うから、勝手に『吉田選手からトミーに引き継がれたのかな……?』とか妄想して、熱くなってたんですけど……」
――その当時も振り返っていて、冨安選手が電話で「22番をつける」と言っていたらしく、吉田選手は「それがやっぱり一番うれしかった」と回想していました。その2人がアイスランド戦で久しぶりにDFラインで隣に並んで、試合後に冨安選手も「僕も2年、この代表でやっていなかったですし、麻也さんも4年ぶりですよね。でも、良い意味で普通というか、違和感なくやれたなって僕は思っている」と、吉田選手とともに懐かしんでいて。冨安選手単独でも「僕は本当に若い時、19(歳)で(代表に)入ってから、ずっと麻也さんの隣で学ばさせてもらいながら、プレーさせてもらってたので、今日こうして僕も同じポジションでやれてよかったなと本当に強く思いますね」「いろんなたくさんの試合をこなして、前回のW杯もそうですし、一緒に戦っていろんな感情を経験して……本当にこの場にいられてよかったなという、その気持ちが本当に強いです」と心境を口にしていたように、あの14分間の共演には様々な想いが詰まっていたようです。1人で取材を受けている時は時折熟考もしながら、真剣な眼差しで言葉を紡いでいた冨安選手が、吉田選手の隣に来た瞬間にパッと笑顔になって、一緒に囲み取材に応じていた様子からも、2人の関係性をうかがえましたね。
綺々羅々「じゃあアイスランド戦は、正式に22番が引き継がれた日にもなってたんですね……。2人とも東京オリンピックの時から、ずっと後ろで一緒に戦ってる姿を見てきたから、胸が熱くなります!吉田選手の想いも背負って、トミーもW杯を戦ってくれると思うから、めちゃくちゃ楽しみになりました!ありがとうございます!」

“ベッカムヘアー”、“死の組”、“メロン狩り”…日韓W杯の思い出話
――そんな日本代表のグループステージ第3節の対戦相手となるスウェーデン代表について学ぶべく、同国代表を推されている北欧サッカーウォッチャーの佐藤真理子さんを、今回はお呼びしました。
佐藤「初めまして。佐藤です。日本の横須賀からスウェーデン代表をメインに、北欧のチームとか選手を追いかけています。そのコラムやレポート、選手名鑑を担当させていただいてきたフットボリスタさんとのご縁は、私が現地まで見に行ったドイツW杯の感想をネット上で書いたところ、それを目にとめていただいて北欧サッカーについて依頼を受けて、寄稿するようになったという形ですね。当時のフットボリスタさんは、B4くらいのサイズの海外タブロイド誌みたいな雑誌を出されていて、『それに載せてもらえるなんて凄いうれしいな』と思っていたのが昨日のことみたいなんですけれど、もう20年も前かという感じです(笑)。よろしくお願いいたします」
綺々羅々「よろしくお願いします!さっそく質問なんですけど、ドイツまでW杯を見に行かれてたのも、スウェーデン代表を追いかけて……?」
佐藤「そうですね。その前の日韓W杯の時は海外サッカーそのものを全然知らなくて。私はもともと、オリンピックの夏も冬も見ているくらいスポーツ全般が好きで、サッカーも国際大会がやってたらとりあえず見るようなライト層だったんですよね。それで一番最初に見たW杯はフランス大会でしたが、スウェーデンは予選で敗退して出場していなかったので、その時はまだ触れる機会がなかったんです。でも、日韓W杯は自国開催ということもあって、テレビも試合を放送してくれるから見てみようと思っていろいろ調べてみたら、グループFが“死の組”って言われていて気になったんですよね」
綺々羅々「“死の組”は……めちゃめちゃ強い国が集まっちゃったグループのことですよね」
佐藤「そうです。そこで同居していたのが、アルゼンチン、イングランド、ナイジェリア、スウェーデンで。特にイングランドはデイビッド・ベッカムの人気が凄くて、”ベッカムヘアー”も日本で流行ったりしたんですけれど……」
綺々羅々「ベッカム選手は、ヴィヴィも聞いたことあります!世代じゃないけど、フリーキックがめちゃめちゃ上手かった、もうモデルさんみたいな方ですよね」
佐藤「そのベッカム擁するイングランドと、アルゼンチンがグループFの本命で、ナイジェリアもフランスW杯で死の組を突破していたりしたので、その2年後にセルティックからバルセロナへと移籍することになるヘンリク・ラーション、当時アーセナルのフレドリック・ユングベリがいたとはいえ、スウェーデンはもう絶望的なんじゃないかと予想されていたんですけれど、彼らはその前評判を覆して1勝2分に持ち込んだんですよね。最終節ではアルゼンチンの猛攻を凌いで引き分けて、イングランドに続く2位で無敗のまま決勝トーナメントに進出を決めて、それが『え、凄い!』ってスウェーデン代表を認識した試合でした」
綺々羅々「じゃあもう、カタールW杯の日本みたいな感じやったんや……!相手がスペインとドイツって決まった時は、ヴィヴィも『これは難しいんちゃう……?』って正直思ってて、勝手にハラハラしながら試合見てたんですけど、強い相手に見応えのある逆転勝利をしてくれて、何が起こるかわからないサッカーの楽しさを教えてくれたので!いや、今思い出しても熱いですね……」
佐藤「そのままスウェーデンに注目していたら、ラウンド16の相手がセネガルだったんですけれど、ちょうど日曜日の15時半キックオフで会社勤めの私でもリアルタイムで見やすかったんですよね。だから普通に1試合通して見てみたら、その展開が凄く面白くて。序盤にスウェーデンが先制しましたが、前半のうちに追いつかれたまま延長戦に入って。その直後にもアンデシュ・スベンソンという中盤のいい男が、ペナルティエリア内でマルセイユルーレットというジネディーヌ・ジダンも得意としていたフェイントをくるんとかけて、ばんっとシュートを打っていて。それは右ポストに嫌われて惜しくも入らなかったのですが、あのチャンスをモノにできていたら、日韓W杯を代表するスーパーゴールの1つになっていたと思います。ただ、それも響いて、スウェーデンはゴールデンゴールで負けちゃったんですよね」
綺々羅々「ゴールデンゴール……?PKとかじゃなくてですか……?」
佐藤「当時の延長戦は、どちらかのチームが勝ち越した時点で決着という形式だったんです。野球のサヨナラ勝ちみたいな感じですね」
綺々羅々「え~!?そんなルールがあったんや!でも、その形式やと、負けたほうは悔しいですよね、なおさら……」
佐藤「その通りで、凄く幕切れが悪くて『これで終わりなの……?』って思ってしまったんですよね。しかも当時の中継は試合前後も映像を長回ししてくれていて、もう呆然としちゃったり、泣いちゃったりしてる選手も映っていたので、それも見ててこっちも悲しくなってしまって……。『よし、このチームをこれからも応援していこう!』って気持ちになりました。それがスウェーデンを推し始めたきっかけです」

綺々羅々「ヴィヴィも、あの東京オリンピックで久保選手の悔し涙を流している姿とか見て号泣してたので、気持ちが凄くわかります……!そこから久保選手にも注目していて、マジョルカにいた時とか、レアル(・マドリー)で(エドゥアルド・)カマヴィンガ選手と一緒に練習してる時とかも見てたんですけど、どんどんどんどん成長していって、今はもう日本代表の顔になられて、北中米W杯出場を決めた試合でも、アシストもゴールもして勝利に導いてくれていたので。ケガもあって今季のソシエダではちょっと出れてなかったりとかあったと思うんですけど、この2回目のW杯でも活躍してくれることを楽しみにしてます!W杯初ゴールも見たいので!そういうきっかけにもなったりするので、試合前とか試合後の映像も追いかけちゃいますね」
佐藤「あれ、いいですよね。日韓W杯の頃は選手がスーツ姿でピッチに入ってきて、芝生のチェックをするところからもう長回しで始まって、試合後はもう全員がピッチから去るくらいまで、ずっと放送してくれていたので」
綺々羅々「へ~!贅沢すぎる……。いやもう、選手ってバスでスタジアムに入ってくるじゃないですか。そこから見たいなって、ヴィヴィもいつも思ってるので!(笑)」
佐藤「そういうところからも、選手の人となりがわかりますからね。ピッチのコンディションを確認している時も、仲間とふざけている選手もいれば、真剣な眼差しを向けている選手もいたりして。『あ、リラックスした雰囲気なんだな……』『凄く集中してるな……』って」
綺々羅々「個性が出ますよね!今やと日本代表の『Team Cam』みたいに、YouTubeとかSNSとかで後から出してくれることもあるので、自分もチームの一員みたいな気分になれる、そういう密着映像みたいな動画を見るのも、W杯で楽しみにしてます!試合だけじゃなくて、練習も現地に入るところから見せてくれて、選手の私服姿とかチェックするのも楽しいので!(笑)ちなみに、佐藤さんはその日韓W杯で現地観戦もされていたりしたんですか?」
佐藤「それが、日韓W杯は全然見構えてなかったので、チケットを取ってなかったんですよね。ただ、テレビ越しに見ながら『あ、これ1回ぐらい現地で見に行きたいな……』って思ったんですけれど、もう完売だったんですよ。でも、販売サイト上ではなぜかたまにチケットが取れる状態になっていて、『え、まだ間に合うじゃん!』って盛り上がりましたね。でも、常にリアルタイムで張りついてはいられないから、ネットでみんなと情報交換していて。座席が購入可能になるとステータスの丸い表示が緑色になるから、”メロン”って呼ばれ出して、『メロン来た!』とか助け合っていました(笑)」
綺々羅々「じゃあもう、本当に“メロン狩り”をされてたんや(笑)」
佐藤「そうなんですよ。メロン祭りとか言われていて、今でいうミームみたいになってましたね(笑)。結局チケットは取れなかったんですけれど、どうしてもあの大会の雰囲気は生で味わいたくなって、ドイツ対ブラジルの決勝(0-2)当日は、試合会場の横浜国際総合競技場のそばまで行ったのも覚えています。行き慣れていたはずなのに、もう電車から凄くて。両国のサポーターさんでいっぱいで、もう普段から見ている新横浜の街じゃないみたいな雰囲気で。そんなふうに日本各地が盛り上がっていたと思います。でもやっぱり試合も見たかったので、4年後のドイツW杯で現地に飛んだという経緯です(笑)」

プレミアリーグ勢が並ぶ豪華攻撃陣も…なぜ予選で0勝に?
綺々羅々「いや、この連載でW杯の盛り上がりとかもいっぱい教えてもらって、ヴィヴィもサッカーは生で見るのも好きやから、『プレミアリーグの試合もいつか現地で見てみたい!』って目標にしてたんですけど、『W杯もいつかスタジアムで見てみたい!』って思うようになったので……。ドイツW杯がどんな雰囲気だったのかも、気になります!」
佐藤「サッカー大国ドイツでの開催だったので、盛り上がりは凄かったです。このW杯から大規模なパブリックビューイングやご当地グルメが楽しめる『ファンフェスト』という公式イベントが始まったんですけれど、これが楽しすぎて。屋台みたいな飲食スペースに小さいテレビが置いてあるブースもあって、ベルリンに着いた日にはビールとソーセージをツマミに、グループステージ第2節のドイツ対ポーランド(1-0)をそこで見ました。ドイツが勝ち越したアディショナルタイムはもうお祭り騒ぎで、『ファンフェストが日韓W杯でもあったらよかったのに……』と今でも思っています(笑)。スウェーデン代表も2試合見たのですが、どちらも終了間際にゴールが決まる劇的展開で、生で見れて幸せでしたね。その開催地だったベルリンではブランデンブルグ門、ケルンでは大聖堂みたいな歴史的に超有名な場所がパブリックビューイングの会場になっていて、そんなところもさすがドイツだなと。

ちなみに、ヴィヴィさんはスウェーデンにどんなイメージがありますか?」
綺々羅々「サッカー以外になっちゃうんですけど……IKEAとか……?(笑)」
佐藤「確かにIKEAは、スウェーデンを代表するブランドの1つですよね(笑)」
綺々羅々「ああいう北欧の家具可愛いなっていうのと、あと小さい頃から『ロッタちゃん』っていう映画がずっと好きで」
佐藤「あ~!5歳くらいの思春期の女の子が主人公の、コメディ映画シリーズですね」
綺々羅々「そうです!『はじめてのおつかい』とか、2つくらい作品があるシリーズで!その映画の舞台がスウェーデンで、出てくる家具とか、服とかも凄くおしゃれで、ロッタちゃんも可愛すぎて『ヴィヴィも同じ世界に入りたい!』って憧れがあって、子供の時の行ってみたい国ランキング1位がずっとスウェーデンでした(笑)」
佐藤「私もそのスウェーデンに何度か行っていて、それこそIKEAの本店も見に行きましたが、現地にいる友達から聞いてはいながらも、やっぱり大きくて『おお!』と驚きました」
綺々羅々「え~!本場のIKEAも行ってみたいです!サッカー関係ないけど(笑)」
佐藤「ただ、私が初めてスウェーデンに行った時はIKEAとかH&Mとか、遠い国の話だったんですけれど、2006年くらいに横浜にもIKEAができたりして、その後どんどん進出してきちゃうことになって、もう日本でもああいう家具から雑貨まで幅広く取り扱っている巨大店舗を当たり前のように見かけるようになってしまったので、今でも凄く不思議な感じがしています。でも、スウェーデンはあの『ロッタちゃん』のイメージのままですね、本当に。いい国なので、ぜひいつか行っていただきたいです」
綺々羅々「スウェーデンもいつか行きたいです!ありがとうございます!サッカー選手だと、(ズラタン・)イブラヒモヴィッチ選手もスウェーデンですよね?試合で見たことはないんですけど、凄く体格が大きくて、スーパーゴールもたくさん決めてて……あとちょっとやんちゃなイメージがあります(笑)」
佐藤「もう現役を引退しちゃったんですけれど、歯に衣着せぬ名言や迷言も多いせいか(笑)、日本でも有名ですよね。そのイブラヒモヴィッチが代表復帰したものの、ケガで参加を辞退したEURO2020を最後に、スウェーデンは国際舞台に立ててなくて。次のカタールW杯に続いてEURO2024も出場を逃したので、伝統の堅守を重視した[4-4-2]から方針転換することになって、2024年2月にデンマーク人のヨン・ダール・トマソンという、史上初の外国人監督を招へいしたんですよね。特に現代表には、ワールドクラスのタレントがそろっているので」
綺々羅々「あ、今のスウェーデンだと、アーセナルの(ビクトル・)ギェケレシュ選手は知ってます!こないだ同時視聴した(マンチェスター・)シティとの試合(●2-1/プレミアリーグ第33節)で途中から出てきていて。ほぼほぼ初見やったのに、点が欲しかったから勝手に『ギェケ!』って呼んで、応援してました(笑)」
佐藤「そうそう、そのギェケレシュやリバプールのアレクサンデル・イサク、長期離脱中で北中米W杯のメンバーには入っていませんがトッテナムのデヤン・クルゼフスキ、ニューカッスルのアンソニー・エランガら、プレミアリーグで実績のある攻撃陣がスウェーデンにはそろっていて、さらに司令塔として将来有望なフランクフルトのヒューゴ・ラーション、優雅さと泥臭さを兼ね備えるトッテナムのルーカス・ベリバルという若手が中盤にいたり、守備の要として経験豊富なアタランタのイサク・ヒエン、アストンビラのビクトル・リンデロフも後ろにいたりするので、戦力は充実しているんですよね。それに合わせて導入したハイプレスと縦に速い攻撃を軸とする[3-4-1-2]のシステムも、UEFAネーションズリーグでは機能したんですけれど……」
――ちなみにUEFAネーションズリーグというのは、2年おきにUEFAに加盟している欧州各国代表チームが4カテゴリーに分かれて戦っている昇降格のあるリーグ戦のことです。強豪国から中小国まで強化試合を組みやすくしていて、真剣勝負に近づけるために成績上位国にはW杯欧州予選プレーオフ出場権も与えられるようになっています。
佐藤「その6試合でギェケレシュとイサクの2トップだけで14得点、チーム全体で19得点も決めていたんですよね。グループC首位で北中米W杯予選プレーオフ進出を決めて、『新生スウェーデンの誕生だ!』と現地でも胸を高鳴らせていたようです」

綺々羅々「そこでもう、プレーオフに進めるようになってたんや!なるほど……!」
佐藤「ただ当時はその抜け道に頼るつもりはなく、正面からW杯欧州予選を勝ち抜こうとしていたんですけれど、そこで対戦相手のレベルが上がると、EURO2024にも出場していたスイスやスロベニア、さらにはスイスに次ぐ2位でプレーオフ決勝まで勝ち進んで、初の本大会出場まであと一歩に迫ることになるコソボにも、まったく戦術がはまらなくて。ハイプレスを剝がされたり、高い位置でボールを奪われたりして、中盤や後ろの広大なスペースを使われては失点を重ねた結果、1勝もできなかったんですよね。それででボール支配率もシュート本数もほぼ倍を記録しながら0-1で落として、ホームで激しいブーイングも湧き起こった第4節コソボ戦の後、ついに選手から不平不満が爆発してしまって……」
綺々羅々「え~!?最初は順調だったのに……」
佐藤「その背景として、もともとスウェーデン代表は練習の冒頭15〜30分はピッチ上での取材を許可していたんですけれど、トマソン監督は戦術を徹底して隠すために5分のランニング以外は非公開にしたりしていて。だから報道陣は外から豆粒くらいにしか見えない選手を、双眼鏡越しに追いかけるしかなかったんですよね。試合のために何を準備しているのか、選手の調子はどうなのか。すべてがブラックボックス化して、わかりにくいチーム状況なっていたようです」
綺々羅々「とにかくまずは結果を出さなきゃいけない、厳しい世界やから仕方ないのかもしれないけど……何にも情報がないとファンとしても寂しいですよね……」
佐藤「そこに焦りと苛立ちが拍車をかけたのか、トマソン監督はそのコソボ戦前にはもう合宿地に警備員をたくさん配置して、練習場のピッチ全体も黒いシートで覆い隠すくらい、情報漏洩を警戒するようになっていて。いつもは試合当日昼のミーティングで選手に通達していたスタメン発表も、キックオフ2時間前まで遅らせたんですよね。それで中盤中央で急遽起用されたウイングバックのダニエル・スベンソンが『そのポジションは練習すらしていなかった』と不満を露にしていて。普段はそんなことを言わないエランガも、あまりにも守備に回っては走らされていたので試合後、『この忌々しいシステムはもうやめろ!』と苛立ちを叫んだと言われていて、『もうチームが崩壊するんじゃないか』と囁かれるくらい、外部からも内部からも信頼を失ってしまったので、2025年10月にスウェーデンサッカー連盟が史上初めてA代表監督解任に踏み切ることになりました」
ギェケレシュ?ヨケレシュ?発音の背景にある祖父のルーツ
綺々羅々「それで新しく監督になったのが、今の(グレアム・)ポッター監督なんですよね。三笘選手が移籍したブライトンの監督をされてたから知ってて」
佐藤「その再会も北中米W杯で楽しみにしてたので、三笘選手の落選が決まった時は私もショックでしたね……。今のブライトンでは、スウェーデン代表のヤシン・アヤリが三笘選手と共闘していて、アヤリ本人も『僕たちは(アウェイ遠征時の)バスで隣同士に座っている』と明かしていたように2人はよく一緒にいる姿が捉えられていたり、三笘選手が今回のケガでピッチ脇に出た時もウォームアップをしていたアヤリがすかさず背中を叩いて励ましていたりと、お互いも周りも認めているくらい仲良しなんですよね。『どんなことを喋っているんだろう……?』といつも疑問に思っているんですけれど(笑)、その対決も見れなくなってしまって残念です……」
綺々羅々「そうなんや……。ヴィヴィも2人がユニフォーム交換したりしてるところを、W杯で見たかったです……。ポッター監督はそういうプレミアリーグのイメージが強かったんですけど、もともとスウェーデンとつながりがあったんですか?」
佐藤「ポッター監督はイングランド人ですが、ブライトンをはじめとする母国のプロクラブで指揮を執る前に、当時スウェーデン4部のエステルスンドというクラブを5年で1部に昇格させて、2017-18シーズンにはELで予選を勝ち抜いて本大会に出場して決勝トーナメントにまで駒を進めたことがあるんですよね。だからスウェーデンでは、もともと『奇跡を成し遂げた人』というイメージがあって。エステルスンドの選手たちの度胸、そしてスタッフたちとの一体感を育むために、地元民にバレエやアカペラを披露する舞台公演も練習から本番までチームで行っていたという、その独特のマネージメント術でも知られていましたね」
綺々羅々「文化祭みたいで楽しそう!(笑)じゃあ、スウェーデン語とかもペラペラなんかな……?」
佐藤「そうですね。戦術のような混み入った話は『英語のほうが楽』と明かしていたんですけれど、日常会話は難なく対応できるくらい、スウェーデン語も話せるので、代表監督就任会見でもその言葉で挨拶して歓迎されていましたね。1シーズンに10通り以上のフォーメーションを使い分けることでも知られていましたが、スウェーデン代表ではまずシステムを[4-4-2]に戻して、コンパクトな守備ブロックとシンプルなカウンターを軸にする、慣れ親しんだサッカーに原点回帰させました。初めてのミーティングでも、選手たちに『遠慮なく自分の考えを表現してほしい』と伝えていて、一人ひとりの個性に合った明確な役割を与えていくチームに戻してあげて、それでエステルスンドでも教え子だったケン・セマも『新学期の初日みたいに新鮮で楽しい』と語っていたくらい、チームの雰囲気も良くなったそうです」
綺々羅々「スウェーデンの選手も新学期は浮かれるんや(笑)。世界共通で安心しました(笑)」
佐藤「さらにポッター監督は練習公開時間を大幅に増やしたり、練習後にはピッチ脇で記者の質問に丁寧に応じたりしていて、前監督時代に冷えきっていたメディアとの関係も改善させていきました。結局、就任直後のW杯欧州予選2試合は勝てなかったんですけれど、チームの雰囲気は明らかに変わっていて、4カ月後にはブライトン時代に得意としていた3バックも落とし込み、プレーオフで見事に結果を出したという流れですね。その準決勝(1-3)ではウクライナにEURO2012グループステージとEURO2020ラウンド16での借りを、決勝(3-2)ではポーランドにカタールW杯欧州予選プレーオフ決勝での借りを返したという因縁も重なって、スウェーデン国内は歓喜に包まれていたようです。当初はそれでも予選未勝利という事実に『奇妙だ』とか『ふさわしくない』とか揶揄する声もありましたが、直近のEUROもW杯も出場できていなかったので、久々の国際大会でスウェーデンメディアのコメンテーターさんやエキスパートさんたちも、そこはかとなく楽しそうにしています」

綺々羅々「そのポーランド戦で、ハットトリックされてたギェケレシュ選手についても、詳しくなりたくて、アーセナルに来る前はどんなキャリアやったんかなって……」
佐藤「まず、ギェケレシュの祖父にあたるイシュトバンはハンガリー出身だったんですけれど、1956年に起こったハンガリー動乱の戦火を逃れて、難民に国境を解放していたスウェーデンに移ったんですよね。そのハンガリー語の発音に沿うと姓の読み方はギェケレシュで合っていますが、スウェーデン語だとヨケレシュのほうが正しい発音になっていたりします」
綺々羅々「ヴィヴィも最初、Gyökeresってローマ字でギェケレシュ選手の名前を見た時に『öって顔文字でしか見たことない……』『なんて読むんだ…?』って思ってて……。(キリアン・)エンバペ選手も、エムバぺなのか、ムバッペなのかわからなくて、配信でリスナーさんに聞いたことがあるんですけど(笑)、読み方がたくさんある選手もいるじゃないですか。だから、『試合を実況されるアナウンサーの方も大変やな……』ってずっと思ってました」
佐藤「本当にそうですよね……。あとスウェーデンは北中米W杯のメンバーにもグスタフ・ラゲエルビルケというCBや、ヤコブ・ビデル・ゼッテルストレームというGKもいるように、そもそも名前が長い選手が多くて。日本ではミドルネームなんて言いますけれど、ビデル・ゼッテルストレームのように北欧では母親の姓と父親の姓を組み合わせてダブルネームとする文化もあるので、発音も含めて覚えるのが大変で私も苦労してきました(苦笑)」
綺々羅々「ヴィヴィも頑張って覚えます!(笑)でも、ギェケレシュ選手はもしかしたら、ハンガリー代表として戦う世界線もあったかもしれないんですね」
……
Profile
足立 真俊
岐阜県出身。米ウィスコンシン大学でコミュニケーション学を専攻。卒業後は外資系OTAで働く傍ら、『フットボリスタ』を中心としたサッカーメディアで執筆・翻訳・編集の経験を積む。2019年5月より同誌編集部の一員に。プロフィール写真は本人。X:@fantaglandista
