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プレミア優勝を支えた層拡充、CK得点史上最多のジレンマ、カラバオ&CL決勝で欠けたもの…25-26アーセナルを総括する3つの視点

2026.06.07

せこの「アーセナル・レビュー」第20回

2019年12月に就任したミケル・アルテタ監督の下で一歩ずつ着実に再建を進め、2025-26シーズンには22年ぶりのプレミアリーグ王座奪還を果たしたアーセナル。その復活の軌跡をいち”グーナー”(アーセナルサポーターの愛称)でありながら、様々な試合を鋭い視点でわかりやすく振り返っているマッチレビュアーのせこ氏がたどる。

第20回ではプレミアリーグ制覇、カラバオカップ&CL準優勝という成績を残した2025-26シーズンを、3つの視点で総括する。

 ありがたいことに本連載はこれで20回目。節目ということで、1回目はどんなことを書いていたのかを調べてみた。2023年5月の第1回のテーマは「アーセナルが4月に急失速した理由」。なんとも縁起の悪いタイトルで始まったこの連載は20回目にして、悲願のプレミアリーグを制覇したシーズンの総括をすることができる。

視点①功を奏したマルチロール路線→スペシャリスト路線の補強戦略

 1年の総括をするにあたって、開幕時点での見立てと比較するのがフェアだろう。というわけで、第17回で書いた2025-26シーズン展望をベースに話を進めていきたい。

 アンドレア・ベルダにSDが交代となり、初年度となった昨夏の動きを一言で表すのであれば「積極的に層の拡充を図った」ということになるだろう。エベレチ・エゼ、ピエロ・インカピエ、マルティン・スビメンディ、ビクトル・ギェケレシュ、クリスチャン・ノアゴー、クリスティアン・モスケラ、ノニ・マドゥエケ、そしてケパ・アリサバラガ。非常に多くの選手を獲得した。

 ポイントとなるのは、既存のレギュラー格に競争相手としてぶつける形での補強が多かったこと。全公式戦のプレータイムを見てみると、コア層として君臨したのは4000分を超えて、全体の76%ほどの出場をしたスビメンディただ1人。

 それ以外の新加入選手たちは第2GKだったケパと、序列が上がらなかったノアゴー(スビメンディのプレータイム増加に効いているかもしれない)の2人を除けば、2000分から3500分の間に集約。レギュラー格~準レギュラーのあたりにモスケラ、マドゥエケ、インカピエ、エゼ、ギェケレシュの5人が存在している(下図)。

 おそらくではあるが、基本的には想定通りの運用だろう。昨季のレギュラー格で唯一退団したトーマス・パーティーのところにコア層を補充し、それ以外の選手たちはレギュラー~準レギュラークラスの層を厚くする格好となっている。これまでのシーズンであればマイルズ・ルイス・スケリーやイーサン・ヌワネリの台頭を待っていたであろうポジションにもインカピエやエゼ、マドゥエケを獲得。20歳以上の計算しやすい戦力で各ポジション2人をそろえる運用を明確にできる戦力を確保した。

 「天井を決める」というニュアンスの注目選手として開幕前に名前を挙げたギェケレシュも、どちらかといえばチームの底上げに貢献したといえる。ミケル・メリーノ、カイ・ハベルツなどCFが負傷に見舞われるという状況もあり、他の新加入組よりはプレータイムは多め。試合数ではスビメンディに次ぐ2位タイと安定した稼働でシーズンを走り抜けた。

 左サイドからの重戦車のようなドリブルとペナルティエリア内の仕上げ役としてハイラインを破れるフィニッシャーとして期待があったが、シーズン終盤は守備でのエネルギー注入や、サイドに流れてのロングボールのターゲットなど、点が取れない状況でも貢献できるFWに変貌。他のCFの穴埋めを泥臭く果たしたといえる。

 スカッド全体の話に戻ろう。ライバルたちの動きを見てみると、同じく2025年の夏に積極的に動いたリバプールはフロリアン・ビルツ、アレクサンデル・イサクに代表されるように、11人での最大出力の天井を高くするような補強に終始。アーセナルの底上げとはかなり発想が異なる積極性になっている。

 マンチェスター・シティは冬に2年連続の補強を行うなど、おそらくは想定よりも運用がタイトになったのだろう。用意周到な彼らが、これだけ頻繁に冬の市場で大金を使うことは個人的には非常に意外だった。

 結果から見てみれば、夏からある程度の人数が故障をすることを前提でスカッドを組んだアーセナルが走り抜けたといえる。異なる方向性のリバプールが早々に振り落とされ、冬に兵糧を増やしたシティから逃げ切りに成功。多くのチームが連戦のパフォーマンス低下や負傷者続出に苦しむ中で、アーセナルが夏から組み上げたスカッドの厚さは優勝に向けた明確なアドバンテージとなった。

 最後の最後でショートしそうになったリソースを、マックス・ダウマンのジョーカー起用や、ルイス・スケリーのセントラルハーフへのコンバートなど、ヘイルエンド産の若者で埋めたのもまた興味深い。分厚いシニア選手の中で、20歳にも満たない彼らが少ないプレータイムで残したインパクトも確かにプレミアリーグ優勝、カラバオカップ&CL決勝進出に大きく寄与した。

視点②プレミア史上最多得点のコーナーキックがもたらすジレンマ

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Profile

せこ

野球部だった高校時代の2006年、ドイツW杯をきっかけにサッカーにハマる。たまたま目についたアンリがきっかけでそのままアーセナルファンに。その後、川崎フロンターレサポーターの友人の誘いがきっかけで、2012年前後からJリーグも見るように。2018年より趣味でアーセナル、川崎フロンターレを中心にJリーグと欧州サッカーのマッチレビューを書く。サッカーと同じくらい乃木坂46を愛している。

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