TACTICAL FRONTIER~進化型サッカー評論~#8
『ポジショナルプレーのすべて』の著者で、SNSでの独自ネットワークや英語文献を読み解くスキルでアカデミック化した欧州フットボールの進化を伝えてきた結城康平氏の雑誌連載が、WEBの月刊連載としてリニューアル。国籍・プロアマ問わず最先端の理論が共有されるボーダーレス化の先に待つ“戦術革命”にフォーカスし、複雑化した現代フットボールの新しい楽しみ方を提案する。
第8回は、ポジショナルプレーの浸透で重要度を増してきた「逆足SB」という新たな戦術的トレンドについて考察してみたい。
逆足サイドバック(以下SB)として、近年おそらく最も注目された選手がジョアン・カンセロだろう。マンチェスター・シティに長く在籍したポルトガル代表SBは、その強烈なスキルでSBというポジションの概念を変革する存在となった。
ペップ・グアルディオラも打開力に優れたカンセロを一時期は重用し、偽SBを起点に複数ポジションを移動しながらプレーする独自の役割は「カンセロ・ロール」と呼ばれた。SBのポジションから内側に入ることで中盤に厚みを加え、ビルドアップを円滑にする偽SBの役割だけでなく、ボールが前線に入ればさらに高い位置に進出していく。インサイドハーフやウイングのようにもプレーする姿は神出鬼没で、相手を混乱させた。フィニッシュの局面にも積極的に絡む積極性と意外性が「カンセロ・ロール」の大きな特徴と言える。
今回は、そのカンセロに代表される「逆足SBのメリット」について考察してみたい。
そもそも、なぜSBは利き足サイドに配置されるのか?
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Profile
結城 康平
1990年生まれ、宮崎県出身。ライターとして複数の媒体に記事を寄稿しつつ、サッカー観戦を面白くするためのアイディアを練りながら日々を過ごしている。好きなバンドは、エジンバラ出身のBlue Rose Code。