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【見掛け倒し】なサッカークラブが、“かっこよくない”理由

2024.06.19

強いからかっこいいのか、かっこいいから強いのか
――サッカークラブ・ブランディング探求
#05

鎌倉インターナショナルFCの監督とCBO(ブランディング責任者)を兼任し、2024シーズンからはテクニカル・ダイレクターおよびCBO を務める河内一馬は、2018年7月に“あるnote記事”がバズり、一躍サッカー界における「ブランディングの論客」という地位を確立した。競技側の人間でありながらブランディングを語る意味は、サッカー本大賞を受賞したデビュー作『競争闘争理論』の問題意識にも通じている。あれから5年が経ち、サッカークラブの現場でまさにそれを仕事にしている今、あらためて考えてみたい。強いからかっこいいのか、かっこいいから強いのか――その答えを探す旅。

第5回は、「サッカークラブ・ブランディング」における“かっこよさ”について、メディアがつくる流れ(トレンド)を観察し、自身のクラブのコンセプトと重ね合わせてどう表現していくか、という重要なプロセスについて掘り下げてみたい。

 【見掛け倒し】という言葉がある。『広辞苑』で意味を引いてみると「外見は立派だが、実質は劣っていること」とある。この言葉を探究のフックに、サッカークラブの「見た目・外見」について考えてみたい。サッカークラブが【見掛け倒し】なんてことは、あり得るのだろうか?

何が「かっこいいと“思われているのか”」を把握する

 前回は「サッカークラブをブランディングすること」と「サッカークラブをかっこよくすること」の違いと、両者に重なる部分があるがゆえの「ブランディング」に対する認識のズレについて私なりの結論を出したが、そもそも外見や見た目の「良さ」あるいは「かっこよさ」というテーマを、言葉や文章を使って語ることの難しさについて異論を唱える人はいないだろう。「そんなの好みでしょう?」とか「人それぞれだ」というような反論パターンが、すぐに思いつく。

 小説家の平野啓一郎は著書『「カッコいい」とは何か』の中で、「カッコいい」という概念について、言葉の由来や用途の歴史を辿りながら、数々の興味深い考察を展開している。一方で、平野も冒頭で『根本的な問題として、「カッコいい」という概念の定義の難しさがある。誰もが、「カッコいい」とはどういうことなのかを、自明なほどによく知っている。ところが、複数の人間で、それじゃあ何が、また誰が「カッコいい」のかと議論し出すと、容易には合意に至らず、時にはケンカにさえなってしまう。ブランドのロゴが、胸に大きくプリントされたTシャツは、果たして「カッコいい」のか、「ダサい」のか?…』(同書より引用)と書いているように、その実は難しそうである。だからといって「サッカークラブ・ブランディング」を語る上で、見た目・外見の「かっこよさ」からは逃げることはできない。

 1つ大切なポイントを先に書いておくと、「サッカークラブ・ブランディング」において、見た目や外見を「かっこよくする」とはどういうことかを考えると、「自分(個)」あるいは特定の「誰か(個)」が「かっこいいと思うかどうか?」が重要なのではなく、それよりも「今の世間(サッカー界)」がどういった流れなのか? つまり、どういうものが「かっこいいと“思われている”のか?」を把握することの方が重要である、ということである。……

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Profile

河内 一馬

1992年生まれ、東京都出身。18歳で選手としてのキャリアを終えたのち指導者の道へ。国内でのコーチ経験を経て、23歳の時にアジアとヨーロッパ約15カ国を回りサッカーを視察。その後25歳でアルゼンチンに渡り、現地の監督養成学校に3年間在学、CONMEBOL PRO(南米サッカー連盟最高位)ライセンスを取得。帰国後は鎌倉インターナショナルFCの監督に就任し、同クラブではブランディング責任者も務めている。その他、執筆やNPO法人 love.fútbol Japanで理事を務めるなど、サッカーを軸に多岐にわたる活動を行っている。著書に『競争闘争理論 サッカーは「競う」べきか「闘う」べきか』。鍼灸師国家資格保持。

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