UEFAカントリーランキングでみる、カルチョの復権。イタリア勢はなぜ、欧州カップ戦でポイントを荒稼ぎしているのか?
CALCIOおもてうら#15
イタリア在住30年、ピッチ上の出来事にとどまらず、その背後にある社会・経済・文化にまで視野を広げて、カルチョの魅力と奥深さをディープかつ多角的に伝えるジャーナリスト・片野道郎が、ホットなニュースを題材に複雑怪奇なカルチョの背景を読み解く。
今回は、EL決勝にアタランタ、ECL決勝にフィオレンティーナを送り込むなど今季もUEFAカントリーランキングポイントを荒稼ぎし、単年トップ2入りが確定したイタリア勢復権の理由を読み解く。
今年もイタリア勢が欧州カップ戦で好調だ。チャンピオンズリーグ(CL)、ヨーロッパリーグ(EL)、カンファレンスリーグ(ECL)のすべてにファイナリストを送り込んだ昨シーズン(決勝は全敗だったが)に続き、今シーズンもELでアタランタとローマがベスト4、ECLでもフィオレンティーナが昨シーズンに続いて決勝進出を果たして、UEFAカントリーランキングポイントをがっつりと稼ぎ出した。
単年度のカントリーランキングでは、昨シーズン(2位)に続くトップ2入りが確定しており、これによって来シーズンから「スイス方式」の新フォーマットとなるCLにプラス1の出場枠を手に入れた。欧州カップ戦の結果次第では、CLに最大6チーム、トータルで最大9チームを送り込むことになる(詳しくは後述)。2010年代を通じて、欧州5大リーグの中でもプレミアリーグ、リーガエスパニョーラ、ブンデスリーガに続く4番手に甘んじてきたセリエAだが、独走するプレミアを追う2番手グループの一角としてリーガ、ブンデスと肩を並べるところまでようやく盛り返してきた観がある。
来季の新フォーマットではCLに最大「6」枠
来シーズンから導入される欧州カップ戦の新フォーマットでは、過去20年以上続いてきた4チーム×8グループの「グループステージ」に代わり、全チームがそれぞれ異なる8チームと対戦するスイス方式による「リーグフェーズ」が導入される。参加36チームはUEFAクラブランキングに従って4つのポットに分けられ、各ポットから抽選で2チームずつと対戦、計8試合の勝ち点によって1位から36位まで全体の順位が決まるという仕組みだ。
従来通り、ラウンド16から始まるホーム&アウェイのトーナメント方式で行われるシーズン後半の「ノックアウトフェーズ」には、リーグフェーズの1~8位が直接、残り8チームは9位から24位までによるプレーオフを経て進出する。25位以下の8チームに加えてプレーオフの敗者もそのまま敗退となり、これまでのようにCLからELに回る敗者復活ルートは設定されていない。
この36チーム制のスイス方式フォーマットは、CL、EL、ECLとも同じ。最も注目度の大きいCLに関しては、出場チームが32から36に増えたのに伴い、増枠分4つのうち2つが「ヨーロピアン・パフォーマンス・スポット(EPS)」枠として、前年のUEFAカントリーランキング上位2カ国に与えられる。冒頭で触れたように、今シーズンの単年度ランキングではイタリアがドイツと並んでトップ2入りを確定しているため、来シーズンのCLには通常の4枠にプラスしてもう1枠、計5チームが参加できることになったわけだ。
ここまで35節を消化し、残り3節となった時点でのセリエA順位表はこちら。優勝したインテルに加えて2位ミランも安全圏。3位ユベントスも5位以内を(ほぼ)確定しており、残る2枠を4位ボローニャ、5位アタランタ、6位ローマが争う構図になっている。OptaのAI予想では、ボローニャのトップ5入りは94%の確率であり、アタランタとローマが残り1枠を競っている(前者がかなり優勢)。
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Profile
片野 道郎
1962年仙台市生まれ。95年から北イタリア・アレッサンドリア在住。ジャーナリスト・翻訳家として、ピッチ上の出来事にとどまらず、その背後にある社会・経済・文化にまで視野を広げて、カルチョの魅力と奥深さをディープかつ多角的に伝えている。主な著書に『チャンピオンズリーグ・クロニクル』、『それでも世界はサッカーとともに回り続ける』『モウリーニョの流儀』。共著に『モダンサッカーの教科書』などがある。