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予算はPSGの15分の1、監督は11年ぶり現場復帰…だのになぜブレストは強いのか

2024.02.18

おいしいフランスフット #1

1992年に渡欧し、パリを拠点にして25年余り。現地で取材を続けてきた小川由紀子が、多民族・多文化が融合するフランスらしい、その味わい豊かなサッカーの風景を綴る。

footballista誌の創刊当初から続く連載コラムのWEB移行初回(通算159回)は、19-20シーズンに昇格して5季目のリーグ1で予想外のトップ4争いを繰り広げる、地味だが手強いフランス最西端の小クラブ、ブレストについて。

ルイス・エンリケも称賛「仏No.1チームの一つ」

 今シーズンのリーグ1で「サプライズチーム」の称号を得ているのが、スタッド・ブレスト29だ。直近の3試合連続ドローでトップ3からは脱落したが、現在10試合無敗を継続中で、昨年10月には一時首位にも立っていた。

 1月28日にパルク・デ・プランスで行われた第19節のパリ・サンジェルマン戦では、前半にマルコ・アセンシオが先制点、ランダル・コロ・ムアニが追加点と、ハーフタイムの時点で前年王者が2点リードを奪う展開の中、後半に2点を取り返してドローに持ち込み、敵将ルイス・エンリケをして「現在、フランスでナンバーワンチームの一つ」と言わしめた。

試合後の会見場で、PSGのルイス・エンリケ監督とブレストのエリック・ロワ監督(Photos: Yukiko Ogawa)

 ブレストの試合運びは実に見事だった。相手の攻撃時にも落ち着きを失わず、基本システムの[4-3-3]から[5-1-3-1]にスイッチしながら、自分たちがやるべきことに集中してゲームをコントロールできていた。特に守備面では、ゾーンとマンツーマンディフェンスの併用がうまい具合に効いている。

 そしてボールを持てば、効率よく攻める。PSGのシュート数10本に対し、彼らは9本と互角の戦いぶりで、何よりボールを簡単に奪われない。終盤、苛立ったブラッドリー・バルコラは強引なチャージで2枚目のイエローカードを食らい、退場になってしまった。……

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Profile

小川 由紀子

ブリティッシュロックに浸りたくて92年に渡英。96年より取材活動を始める。その年のEUROでイングランドが敗退したウェンブリーでの瞬間はいまだに胸が痛い思い出。その後パリに引っ越し、F1、自転車、バスケなどにも幅を広げつつ、フェロー諸島やブルネイ、マルタといった小国を中心に43カ国でサッカーを見て歩く。地味な話題に興味をそそられがちで、超遅咲きのジャズピアニストを志しているが、万年ビギナー。

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