REGULAR

浮上への起爆剤は「コミトコンビ」。アルビレックス新潟・小見洋太と三戸舜介が辿るジャンプアップへの過程

2023.08.31

大白鳥のロンド 第2回

人呼んで「コミトコンビ」はビッグスワンに集うサポーターにとっても、“わが子”のようにその成長を見守る存在だ。小見洋太と三戸舜介。2021年にそろって高卒ルーキーとしてアルビレックス新潟へと加入したふたりの若きアタッカーは、J2での研鑽の日々を経て、今季から初めてのJ1へと身を投じている。ただ、もちろん求められるのは明確な結果。それを手に入れるために、彼らはどのようなマインドで日常を過ごしているのだろうか。おなじみの野本桂子が本人たちの言葉を交えて、「コミトコンビ」の奮闘を描く。

「コミトコンビ」浸透のキッカケ

 小見洋太と三戸舜介。新潟サポーターには「小見ちゃん」「三戸ちゃん」と呼ばれる、高卒3年目の同期コンビだ。小見と三戸で「コミトコンビ」として、親しまれている。

 ふたりの出会いは、高校2年の終わりに招集されたU-18日本代表のスペイン遠征だった。代表初招集で緊張していた小見と話した三戸は「おとなしい子だな」と思ったという。その約1年後、小見は昌平高から、三戸はJFAアカデミー福島U-18から、高卒ルーキーとして新潟に加入し再会。不慣れなプロの世界で揉まれながら、同期の絆を深めていった。

 お互いにとって“相棒”はどんな存在なのか。小見は三戸について「ひとりのサッカー選手として尊敬していますね。本当に基礎技術が高いし、一瞬のスピードはJ1でもトップレベルだと思う。自分にはない武器をたくさん持っている選手なので。なんていうんだろう、追いかけている存在みたいな……」と屈託なく賞賛の言葉が口を突いて出る。

 三戸を取材した機会にそれを伝えると、「そう言ってますね、アイツ」。なんと小見は三戸本人にも、屈託なく伝えていたらしい。「うれしいですね。尊敬とか言われると。本当に思っているかわからないですけど」とまんざらでもなさそうな三戸は、小見のことを「本当に安心するというか、気が許せる存在」という。

 「コミトコンビ」を強烈に印象づけたのは、2022年のJ2第17節・ホーム横浜FC戦(○3-0)だろう。

2022年5月、J2第17節・ホーム横浜FC戦のハイライト動画

 この日、シーズン初先発をつかんだ小見が[4-2-3-1]の左サイドハーフ、三戸が右サイドハーフに立ってキックオフ。開始27秒で小見が仕掛けてシュートを打つと、GKがはじいたこぼれ球を三戸が押し込み、電光石火の先制点。6分には流れるようなコンビネーションプレーでゴール前に走り込んだ小見が、三戸の落としを受けてプロ初ゴール。50分には、高い位置でボールを奪った小見が仕掛けてもう1点を奪い、勝利を決定づけた。

 「やっぱりあの試合は、僕らが活躍した試合だと思うので。2人で得点に絡んで勝てたことがうれしかった。そこから“コミト”の名前が知られていったと思う」(三戸)

ふたりが急速に高めたチーム内の競争意識

 あまりに鮮烈なふたりの活躍は、チーム内の競争意識を急速に高めた。その試合で小見に先発を譲った本間至恩(現クラブ・ブルージュ)が「自分より若い選手が2点取った。チャンスでパスを出してしまう自分の課題を見直した」と奮起し次節から2試合連続ゴールを挙げれば、松田詠太郎、シマブクカズヨシも次々と得点に絡む好循環を生み出した。

 その後も、第32節・ホームのロアッソ熊本戦は、小見のゴールで1-0で勝利。第36節・アウェイのヴァンフォーレ甲府戦は、小見が先制点を挙げると、「小見が決めたので負けられない」と三戸も決め、“アベックゴール”で2-1で勝利。そして最終節・FC町田ゼルビア戦では三戸が2点を挙げ、2-0で喜びのシーズンを締め括った。小見はリーグ4得点、三戸は6得点を記録。ふたりのゴールはすべて勝利へとつながり、J1昇格とJ2優勝の力になった。……

残り:4,066文字/全文:5,637文字 この記事の続きは
footballista MEMBERSHIP
に会員登録すると
お読みいただけます

Profile

野本 桂子

新潟生まれ新潟育ち。新潟の魅力を発信する仕事を志し、広告代理店の企画営業、地元情報誌の編集長などを経て、2011年からフリーランス編集者・ライターに。同年からアルビレックス新潟の取材を開始。16年から「エル・ゴラッソ」新潟担当記者を務める。新潟を舞台にしたサッカー小説『サムシングオレンジ』(藤田雅史著/新潟日報社刊/サッカー本大賞2022読者賞受賞)編集担当。24年4月からクラブ公式有料サイト「モバイルアルビレックスZ」にて、週イチコラム「アイノモト」連載中。

RANKING