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【選手名カタカナ表記審議会】エムバペだけでなく、ロナウド&メッシも再考の必要あり? W杯3大スターの本当の名前の読み方は?

2022.12.01

社会から文化まで!W杯スペシャルコラム

今やいちスポーツのビッグイベントの枠を超え、様々な影響を与えるワールドカップ。社会や文化など、オフ・ザ・ピッチのトピックについて論じる。

世界各国のサッカー選手が一堂に会するW杯の大きな悩みは、選手名をどう書く/読むか。そこで選手名カタカナ表記審議会に再登場をお願いした。テーマは、今大会の3大スター、Kylian Mbappé、Cristiano Ronaldo、Lionel Messiの本当の名前の読み方を考えてみることだ。

 皆さん、お久しぶりです。選手名カタカナ表記審議会イタリア語部会部会長のschumpeterです。カタールW杯が開幕しましたが、いかがお過ごしでしょうか。

 さて、前回、本審議会に関する記事を初めて寄稿したところ、こちらが想定していたよりはるかに多くの反響をいただきました。「面白かった」「記事を読むために会員に登録した」「他のスポーツ、業界でも外国人のカタカナ表記に困っていたので興味深い」「審議会に入会したい」等、様々な声を頂戴しました。アーセナルに関して幅広く情報を発信されている山中拓磨氏が記事を読まれてから英語部会として発音ガイド及び研究発表を公開するに至っています。改めて感謝を申し上げる次第です。うれしいことに続編を望む声をいただいたこともあり、10月12日に発売された『フットボリスタ第93号』の巻末に掲載されたインタビューでお話ししたテーマと絡めて第2弾を書かせていただくことになりました。

 今回、「選手名カタカナ表記審議会」を初めて知った方のために、改めて紹介をしておきます。本審議会は、『footballista』でもたびたび記事を寄稿されているsake氏が4年ほど前に設立したコミュニティです。外国人選手の名前のカタカナ表記について「現地の発音、日本語の発音と通俗との間で遊ぶ」ことをその目的としています。具体的には、「現地の発音をできるだけ尊重した形のカタカナ表記とすること」および「通俗的な日本語表記に一定の配慮を払うこと」を審議会の理念としています。

 では、興味深い事例を以下で取り上げていきましょう。今回はカタールW杯の3大スターがテーマです。

Kylian Mbappé問題を改めて掘り下げる

 まずはグループD第2節のデンマーク戦で2得点を挙げ、フランスをノックアウトステージ一番乗りに導いた彼から始めましょう。数年前から各所でこすられてきた事例ではありますが、改めて分析してみたいと思います。

 姓のMbappéばかりが話題になりますが、名のKylianにも議論の余地があります。フランス語には「鼻母音」といって、息が口からのみならず、鼻からも同時に流れる状態で発音される母音があります。フランス語では”an”がそれに該当します(挨拶でお馴染みのbonjourの”on”、第1節のオーストラリア戦に右SBで先発したPavardの名であるBenjaminに登場する”en”や”in”も同様です)。日本語ではこれは「アン」と表記しています。一方で、”ane”と綴られた場合、鼻母音はなくなり、単に”a”と”n”がそれぞれ別の音として発音されます。この場合、昔から慣用的に「アヌ」と表記されてきました。そのため、Griezmannの名であるAntoineは「アントワーヌ」と表記されることが多いのです(”oi”という綴りが「ワ」に対応し、そこにアクセントが置かれるために長音記号を入れています)。1993年から2008年まで、ビクター エンタテインメント株式会社、次いでぴあ株式会社から刊行されていた『ワールドサッカーグラフィック』ではZidaneを「ジダン」ではなく「ジダヌ」と表記していましたが、以上の観点からは妥当性のある表記であったと言えます。……

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Profile

schumpeter

2004年、サッカー雑誌で見つけたミランのカカを入口にミラニスタへ。その後、2016年に当時の風間八宏監督率いる川崎フロンターレに魅了されてからはフロンターレも応援。大学時代に身につけたイタリア語も活かしながら、サッカーを会計・ファイナンス・法律の視点から掘り下げることに関心あり。一方、乃木坂46と日向坂46のファンでもある。