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ドイツでも進む「子供のスポーツ離れ」。国を挙げた取り組みと、サッカークラブにできること

2020.12.24

中野吉之伴の「育成・新スタンダード」第11回

ドイツで15年以上にわたり指導者として現場に立ち続け、帰国時には日本各地で講演会やクリニックを精力的に開催しその知見を還元。ドイツと日本、それぞれの育成現場に精通する中野吉之伴さんが、育成に関する様々なテーマについて提言する。

第11回は、世界的に問題となっている「子供のスポーツ離れ」について。ドイツではどういった対策を講じているのか、そしてプロサッカークラブの関わり方を紹介する。

 みなさん、体をちゃんと動かしていますか?

 毎日どのくらい汗をかいてますか?

 今はそれこそ新型コロナウィルスの影響でそもそも外で体を動かせる機会が減っているというのもあるわけだが、それ以前から運動やスポーツが不足している人が世界中で増えてきていることが問題視されていた。

 「1日に45分、運動やスポーツを」という基準がWHOにより推奨されている最低限の運動時間なのだが、ケルンスポーツ大学の研究チームによるとじつに80%以上の青少年・少女(13~18歳)がこの数値を下回っているという。

 ドイツオリンピックスポーツ協会会長アルフォンス・ヘアマンは「このレポートは世界中で運動不足問題が深刻になっていることの表れであり、子供時代、青少年・少女時代における運動やスポーツが持つ意味の大切さを強調している。学校やスポーツクラブにおける彼ら・彼女らへの取り組みは、生き生きとその価値を伝えるものだ」と警鐘を鳴らしていた。

 体を動かし、スポーツをすることは人生においてどれほど大切なことなのか。問題として挙げられるのは基本的な運動能力の低下、そしてそれにより生じ得る身体的、精神的健康へのネガティブな影響だ。そして子供時代に運動やスポーツをして体を動かしていないと人生における期待感や高揚感が低くなるという、アメリカでの研究報告もある。

 なぜ「スポーツは楽しむことが一番大事」というのが最初の前提条件にくるのか。その理由はスポーツを通じて体を動かす楽しさを知り、そしてそれぞれのスポーツを楽しむ中で、子供たちは規則、チームプレー、勝ったり負けたりしたときに立ち振る舞い方、フェアプレー精神、社会的な協力精神と触れ合うことで学んでいくことが、人間社会にとって欠かすことのできないとても重要な要素だからだ。

 どんな小さな街や村でも、素晴らしい天然芝のグラウンドや多目的体育館が整備されているドイツのスポーツ環境を見てみんながその素晴らしさを褒めたたえる。でもそれは国を挙げてのスポーツ推進計画が行われたからこその今なのだ。ドイツだって昔はトップアスリートの強化にばかり取り組んでいる時代もあった。……

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Profile

中野 吉之伴

1977年生まれ。滞独19年。09年7月にドイツサッカー連盟公認A級ライセンスを取得(UEFA-Aレベル)後、SCフライブルクU-15チームで研修を受ける。現在は元ブンデスリーガクラブのフライブルガーFCでU-13監督を務める。15年より帰国時に全国各地でサッカー講習会を開催し、グラスルーツに寄り添った活動を行っている。 17年10月よりWEBマガジン「中野吉之伴 子どもと育つ」(https://www.targma.jp/kichi-maga/)の配信をスタート。