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差別排除が進まないカルチョ界。今度はインテルのルカクが被害

2019.09.07

文 神尾光臣

カリアリでルカクに「モンキーチャント」

「最近の数カ月で、多くのプレイヤーが人種差別的な侮蔑に苦しめられた。昨日、僕もそうだった。フットボールというのは誰もが楽しめるゲーム。それを恥ずかしいものに貶める人種差別は、どんな形態であっても受け容れてはいけない。全世界のサッカー連盟が差別に対して強い行動を起こしてくれることを、僕は望む!」

 2日、インテルのベルギー代表FWロメル・ルカクは自身のインスタグラム上でこのようなメッセージを発表した。1日のカリアリ対インテルの試合で、サルデーニャ・アレーナの観客から人種差別的なコールを聞かされたというのだ。

 試合中断などの措置は取られなかったが、ルカクがPKを蹴る時にモンキーチャントが響き、止めさせようとした選手もいた。カリアリはクラブとして謝罪文を発表し、「たとえ1人であっても、分別を欠く者は特定し、スタジアムから隔離するよう努める」と宣言した。カリアリでは以前、ユベントスのMFブレーズ・マトゥイディやモイゼ・ケーン(現エバートン)に対してもモンキーチャントが浴びせられ問題となっていた。

意外なところから発せられた声明

 そんなムードの中で3日、カリアリのサポーターを擁護する宣言が出された。なんと、インテルのサポーターズグループ連盟である『クルバ・ノルド』からだった。「ウルトラスの人種差別疑惑がメディアにより演出されたのち、物分かりの悪い連中がまたも、大衆の支持を集めようとして容易いキャンペーンを張った」と不快感を示しつつ、彼らはあろうことか声を挙げたルカクに訓示を垂れた。

「カリアリで起こったことを人種差別だと君が思ってしまったのは残念だ。でも理解しなきゃいけない。イタリアは、人種差別が本当の問題と化している他の国とは違うんだ。ああいった”方法”はただ、相手選手を苛立たせてミスを誘い”チームを助けるため”だけに用いられるもので、差別目的じゃない。そもそも差別なんて存在しないんだよ。実際みんな誰に対しても寛大で優しい。ゴール裏には多くの『人種』が集っているし、彼らだって同族の相手選手にブーイングをしている。人種差別に対する戦いは学校ですればいい、だがスタジアムは関係ない。ファンは単にファンなだけで、スタジアムの行動と実生活には区別をつけているんだ。君も尊重してほしい」

 昨年12月のインテル対ナポリでカリドゥ・クリバリに人種差別的コールが浴びせられ、クラブが重い措置を受け入れてから8カ月経ってこれである。スタジアムでの差別的行動の排除が進まないのは、サポーターの文化や習慣を変えるものだという感情的な反発があることが理由のひとつになっている。もっとも、多くのイタリア人はクルバ・ノルドの言い分に同調してはいない。「恥だ」「たわ言」「もうサポーター組織なんか一度全部解体しろ」「滑稽でグロテクスで陳腐で幼稚」「幼稚ってのは違う、子供はもっと分別があるぞ」などとツイッター上では非難轟々だった。

 またイタリアU-17代表に招集中のインテルFWセバスティアーノ・エスポージトは、『コリエレ・デッロ・スポルト』のインタビューの中で「あの雰囲気の中で黙々とゴールを決めたルカクは偉大だったよ」とチームメイトを擁護。そして異なるルーツの選手との接触に慣れた若者なりの視点で、改革を約束していた。

「あれは年寄りがやることだ。この空気は僕たち若者が変えていけると思う。この代表にもルーツの異なる選手がいるけど、彼らだって僕みたいなイタリア人だからね。時にファンは、何をしているのか自分でも分からないまま相手選手の邪魔をしている。選手がどれだけ傷ついてるかなんて、想像もしていないんだ」

Photo: Getty Images

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Profile

神尾 光臣

1973年福岡県生まれ。2003年からイタリアはジェノバでカルチョの取材を始めたが、2011年、長友のインテル電撃移籍をきっかけに突如“上京”を決意。現在はミラノ近郊のサロンノに在住し、シチリアの海と太陽を時々懐かしみつつ、取材・執筆に勤しむ。