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スタジアムではアルコール禁止。そんなフランスで法改正の動き

2019.08.19

スタジアム内での酒類販売が解禁へ?

 毎日暑い。

 こんな暑い日にクーッと飲み干すキンキンに冷えたビールは最高だ。

 それが野外で、しかもサッカーを見ながら、となったらその旨さもまた格別だ! という人も多いことであろう。

 残念ながら、いまのところフランスではそれを体験することができない。スタジアム内での飲酒は、1991年に定められた、アルコールとタバコに関する政策エヴァン法にのっとって禁止されているからだ。

 しかし、近い将来、法が改正されて、“ビール観戦”ができるようになるかもしれない。

 昨年、UEFAは、チャンピオンズリーグとヨーロッパリーグの試合でのアルコール飲料の販売を解禁した。フランスのプロリーグ協会(LFP)もスタンドでの酒類販売を後押ししていて、2015-16シーズンのリーグカップ決勝戦の際に、会場のスタッド・ド・フランスで試験的にビールを販売する試みを行った。

 こうした動きを受けて、7月末、共和国前進党の代表70人が、国会に、エヴァン法をやや緩和して、スポーツイベントでの酒類販売を認める改正案を提出したのだ。

 現在は、スタジアムでは年間10回だけ、事前に自治体に申請して許可されたイベントに限り、例外的にアルコールを販売しても良いことになっているが、改正法が認可されれば、ビールや、フランスらしくワインなんかもスタンドの売店に並ぶことになるかもしれない。

結局、酔っ払いは外で飲んでから来る

 LFPが酒類販売の導入に賛成している理由はいくつかある。

 まず、現法では、スタジアム外の飲酒については一切コントロールされていないため、「スタジアムに入ったら飲めない」とわかっている呑んべえサポーターは、しっかり外で飲んでからスタジアムに来るので、「スタジアムで酒類を販売しない=酔っ払いサポーターを排除できる」ということにはなっていないこと。

 むしろスタジアムで飲めるとなれば、その状況も変わるのではないかとリーグ側は踏んでいる。

 酔っ払ったサポーターの迷惑行為にしても、リーグ側のコメントによると、近年スタジアムはどこも近代的、かつセキュリティがしっかりしているため、完全に彼らの管理下にあるスタンド内でのほうが、外での騒ぎよりもよっぽどコントロールしやすいのだそうだ。

 それに、ビール販売が許可されるだけで、収益は年間およそ5000万ユーロ(約59億円)も向上することが見込めるという。

 今でもアマチュアリーグの試合ではビールを売っているところもある。これは、飲料販売が小クラブにとっては貴重な財源になっているため、「目をつむっている」という状況なんだそうだ。

 ちなみに『レキップ』紙の調べによれば、ご近所リーグでは、ドイツはスタジアムでの酒類販売の規制はなし。イタリアも、一触即発の危ないダービーマッチなど特定のカードを除いては許可。「ヘイゼルの悲劇」を経験しているイングランドは、フットボール会場内での酒類の提供は、VIP席やホスピタリティエリアも含めて全面禁止、しかしラグビーでは許可されている。スペインやポルトガルでも同様にスタジアム内ではアルコールは販売されていない。

まずは“お試し”からでも導入の価値あり

 個人的には、LFPの意見は一理あるなと思う。

 13-14シーズンだったか、ボルドーがヨーロッパリーグでフランクフルトと対戦したときの試合前のスタジアム周辺はものすごい有様だった。そこらじゅうにビール瓶が転がっていて、路肩には割れた瓶から流れ出た液体がどぶ水のように流れていて、あの、こぼしたビールから発せられる独特の異臭をそこらじゅうに撒き散らしていた。瓶や液体を避けながら歩いたのに靴にはしっかり染み込んでいて、シミや匂いがいつまでもとれずに泣きたくなった。

 国際マッチだったからいつもより盛り上がっていたんだろうし、スタジアム内では飲めないと知ったドイツサポーターが、存分に飲み尽くしていた感じだったけれど、そうして完全にできあがった状態の彼らが入ってくるわけだから、スタジアム内での販売を禁じたところで、酔っ払いサポーターをスタンドから排除することにはなっていないのだ。

 「スタジアムで盛り上がるのにアルコールの力は必要ない」と、現状維持を推進している人たちもいるから、改正法が可決されるかどうかは微妙なところ。

 まずは1シーズン、お試しで導入してみるとか、飲むのは売店前の立ち飲みコーナーに限って席には持ち込まない、といった折衷案でのスタートもアリかもしれない。


Photo: Getty Images

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Profile

小川 由紀子

1992年より欧州在住。96年から英国でサッカー取材を始め、F1、自転車、バスケなど他競技にも手を染める。99年以来パリに住まうが実は南米贔屓で、リーグ1のラテンアメリカ化を密かに歓迎しつつ、ブラジル音楽とカポエイラのレッスンにまい進中。