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子供たちに喜びを。ドイツ連盟の新たな試み「フニーニョ」(前編)

2019.04.27

計4つのゴールで3対3

 4月15日、『キッカー』誌が、ドイツサッカー連盟が打ち出した新コンセプトに関する特集を組んだ。このコンセプトは、とりわけ幼年期のジュニア年代に関するものだ。

 U-6(6歳未満)からU-13(13歳未満)にいたるまでのプレー人数やグリッドを、年代に合わせてより細かく区切ることで、子供たちに無理なく楽しみながら成長を促せるようにしよう、という試みだ。

 とりわけ、ホッケーの監督として活躍し、バルセロナでも活動していた故ホルスト・バイン氏が提唱していた“フニーニョ(Funino)”の導入が目を引く。

 フニーニョとは、縦25〜30メートル、横20〜25メートルのフィールドで行い、攻撃方向にそれぞれ2つずつ、計4つのゴールを設置して3対3を行う、というものだ。これまでは、ブンデスリーガのクラブやジュニア年代の育成に強い関心を寄せる指導者やクラブが、現場レベルでトレーニングやミニトーナメントなどで導入していた。

実際に“フニーニョ”を行う様子

 今回のドイツサッカー連盟のコンセプトは、この“フニーニョ”を10歳未満以下のカテゴリーの公式(ミニ)トーナメントとすることで、子供たちがレベルに合わせて優劣に関係なくサッカーを楽しめるようにすることを主眼に置いている。

 『キッカー』によれば、たとえばバイエルン州の統計では、U-11のカテゴリーでは約3万8000人もいる競技人口が、U-19になると半減して1万9600人まで落ち込んでしまうという。今回の動きは、この事態への対処のひとつだ。

フニーニョのトレーニング的効果とは?

 育成において欧州トップレベルとみなされているドイツだが、現場で働く人間たちから見れば、課題は山積みだ。以前フットボリスタでも掲載したように、育成のエリート中のエリートですら、自身の仕事の難しさに頭を悩ませている。この世界のどこにでも一長一短があり、理想的な”ユートピア”などどこにもないということを端的に示している。

 『キッカー』は、大人たちの見栄や満足感を満たすために、我慢を強いられる子供たちがいる様子を伝え、それを「クラブ、指導者、両親の悲しきトライアングル」と呼んでいる。

 フニーニョがもたらすものは、“楽しさ”だけではない。この決定を受けて、ホッフェンハイムのユリアン・ナーゲルスマン監督は、そのトレーニング効果も解説し、好意的なコメントを寄せている。

「より個人技に優れた選手の育成を目的とする必要がある。コンセプトに則った(人工的な)選手を減らし、不敵で大胆なストリートサッカーを楽しむ子供たちような選手を増やすんだ。そのためには、ミニゴールを使った3対3の代わりになるものはない。よりボールコンタクトが増え、1対1やシュートの局面が増えるからね。まだ身体的に劣る子供たちにも、より頻繁にボールが回るようになる。これは、我々ホッフェンハイムのアカデミーでも最も重要なキーファクターだ。(自分たちのクラブだけではなく)一般的に、このやり方が踏襲されていけば良いね」(ナーゲルスマン)

 しかし、「GKはどうする?」「競争を取り除くことで、闘争心が失われるのでは?」といった疑問も残る。保守的な大人からはこういった質問が寄せられるのだ。

 後編では、これらの大人の質問にも応えるべく、ドイツサッカー連盟や『キッカー』誌が提案するアイディアを紹介する。

後編

Photo: Getty Images

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ブンデスリーガ育成

Profile

鈴木 達朗

宮城県出身、2006年よりドイツ在住。2008年、ベルリンでドイツ文学修士過程中に当時プレーしていたクラブから頼まれてサッカーコーチに。卒業後は縁あってスポーツ取材、記事執筆の世界へ進出。運と周囲の人々のおかげで現在まで活動を続ける。ベルリンを拠点に、ピッチ内外の現場で活動する人間として先行事例になりそうな情報を共有することを心がけている。footballista読者の発想のヒントになれば幸いです。