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どんな大会になるのか…過去のデータからワールドカップの行方を占う

2022.11.11

 開幕まで10日を切った今回のワールドカップは、果たしてどんな大会になるのだろうか。『BBC』が過去の大会データを参考にした統計学から今大会を占っているので紹介しよう。

アジア勢の躍進に期待!

 まず、有名な話だが、W杯には“地の利”が存在する。欧州で開催された大会では、1958年スウェーデン大会でのブラジルを除き、もれなくヨーロッパ勢が優勝しているのだ。ヨーロッパで開催された過去3大会(1998、2006、2018)を見ると、3大会とも欧州勢が10チームもベスト16に残っているのだ。一方で、ヨーロッパ以外での過去3大会では、ベスト16に残った欧州勢の数が平均7チームまで減るという。

 欧州勢が減った代わりにベスト16に進出チーム数が増えるのは南米だが、アジア勢も恩恵を受けている。欧州開催の過去3大会で16強に駒を進めたアジア勢は1チームだけ。前回の2018年ロシア大会の日本だけなのだ。一方で、欧州以外の過去3大会では4チーム(日本2回、韓国2回)も16強に進出している。今大会は2002年の日韓大会以来となる2度目のアジア開催。というわけで、アジア勢の躍進に期待できるというわけだ。

 また、『BBC』によると、予選での結果も本大会に影響を及ぼしているという。32チーム制になった過去6大会のうち、5大会でヨーロッパ勢が優勝している。そのうち予選免除だった1998年フランス大会のフランスを除いた4チームの優勝国(2006年イタリア、2010年スペイン、2014年ドイツ、2018年フランス)が、ヨーロッパ予選で好成績を残しているのだ。彼らは欧州予選で無敗、もしくは1敗しか喫しておらず、勝利は80%を超えていたそうだ(引き分けを0.5勝としてカウントした場合)。

 今大会に出場する欧州勢13チームのうち、実に10チームが勝率80%を超えているという。例外はプレーオフ経由で本大会出場を決めたウェールズ、ポーランド、ポルトガルだ。ちなみに、この計算方法で勝率を見ると、今大会の欧州予選で最高値を叩き出したのはデンマーク、ドイツ、イングランドの90%だという。

 プレーオフ経由のチームには可能性がないかと言うと、そういうわけでもない。過去6大会の欧州勢の成績を見ると、本大会で決勝トーナメントに進出する確率は、普通に予選を突破したチーム(57%)よりもプレーオフ勢(67%)の方が高くなっているそうだ。さらに、過去6大会のうち2大会でプレーオフ経由のチームが決勝まで勝ち上がっている。どちらも準優勝に終わった2002年のドイツと2018年のクロアチアだ。ちなみに1998年のクロアチアと2002年のトルコも、プレーオフ経由でベスト4まで勝ち上がっている。

王者フランスは苦戦を強いられる?

 FIFAランクで見ると、今大会はこれまでにないほどハイレベルな大会になるかもしれない。今大会はFIFAランク(10月6日発表)で1位のブラジルから、最も低い61位のガーナまで参加する。出場国の最低順位が61位というのは、32チーム制になってからの7大会の中で2番目に高い順位となる。最低順位が最も高かったのは2002年大会で50位(中国)だった。一方で、出場国のうち32位より下の順位のチーム数を見ると、今大会は7チーム(オーストラリア、カナダ、エクアドル、カメルーン、カタール、サウジアラビア、ガーナ)。この数字は、直近7大会で最も少ない数だという。そのため今大会はハイレベルな戦いが繰り広げられそうだ。

 ちなみに、FIFAランクで見た時に最も過酷なグループはB組だ。5位イングランド、16位アメリカ、19位ウェールズ、20位イランの4チームが同居し、FIFAランクの合計は「60位」。これは全8グループの中で最も小さい数字。4チームを足した合計順位がガーナの順位(61位)よりも高いのだ。

 また、近年のワールドカップでは前回大会の優勝チームが苦戦している。1990年大会からの直近5大会で、前回優勝チームが決勝トーナメントで勝利したのは1試合しかない(2006年の16強でブラジルがガーナに勝利しただけ)。最後に連覇を遂げたのは1958年と1962年を制したブラジル。それ以降の14大会のうち、前回覇者がベスト4に進出したのは3回しかない。そして最近5大会のうち4大会で、前回覇者がグループステージで姿を消しているのだ。

 前回優勝国のフランスは今大会でも間違いなく優勝候補の一角に挙げられるが、それでも過去のデータを参考にすると、今大会は苦戦を強いられるのかもしれない。


Photo: Getty Images

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Profile

田島 大

埼玉県出身。学生時代を英国で過ごし、ロンドン大学(University College London)理学部を卒業。帰国後はスポーツとメディアの架け橋を担うフットメディア社で日頃から欧州サッカーを扱う仕事に従事し、イングランドに関する記事の翻訳・原稿執筆をしている。ちなみに遅咲きの愛犬家。

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