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激化するデ・ヨンクへの“パワハラ”。どうなるバルセロナの選手登録問題

2022.08.13

 本誌8月12日発売号の『サッカーを笑え』でも書いた、フレンキー・デ・ヨンクへのパワハラの件がさらに酷いことになっている。

2年前は称賛されたが…

 簡単に概要を説明すると――。

 巨額の赤字と負債を抱えるバルセロナが大型補強をできたのは、放映権料や商業権の一部を売却して資金調達したおかげなのだが、新戦力を選手登録するにはそれだけでは不十分で、チーム全体の年俸総額を削減する必要がある。

 その切り札とされているのがデ・ヨンクだ。彼を放出すればその売却費が手に入り、年俸分の費用が削減されることのダブル効果で補強した選手の登録が可能になるとされる。

 だが、本人は移籍を拒否している。クラブ愛の他に、今、出て行けば約束の高額年俸を失うことになるからだ。

 2年前、デ・ヨンクは急きょ契約更新をした。その内容は、当初の年俸を大幅ダウンする代わりに、2022-23シーズン分から大幅アップする、というもの。コロナ禍にあえぐクラブを助けるための措置で、同時に更新したブスケッツ、ピケ、ジョルディ・アルバとともに、当時は「クラブを救う献身的な行動」と称賛されたものだった。

 しかし、払う段になってクラブは手の平を返した。いわく「あれは“バルトメウ前会長の背信行為”によって結ばれた“犯罪性のある契約”である」というのだ。

フロントの方が悪質ではないか

 デ・ヨンクはプレシーズン中、主にCBとしてプレーさせられた。クリステンセンとクンデを補強したことから考えると、必要性のない采配だった。追い出したい社員を閑職に回すようなものである。

 それでも出て行かないので、今度は「前会長と結託して不当な報酬を得る裏切り者」というふうにイメージ操作した。その結果、練習場の入り口に待ち構える一部ファンから「給料を下げろ、守銭奴!」等の罵声が浴びせられる異常な事態になっている。

 これは、あの事件とよく似ている。

 アメリカのトランプ前大統領が家宅捜索を「陰謀」呼ばわりすると、FBIに殺害予告が届いた。事実ではない情報によって扇動された熱狂的な支持者が、扇動者に代わって敵を攻撃する、という点で。

 事実はこうではないか。

 デ・ヨンクの契約は前会長が交渉に当たったが、契約はあくまでもクラブとの間で結ばれたもの。仮にそれが違法だとすると、責任を問われるのはバルトメウ個人ではなくクラブのはずだ。

 それに、そもそも、いくら相場から外れた高額年俸だとしても、双方納得の上でサインした契約が、法に抵触することがあるのだろうか? それを言うのなら、契約遵守を要求する者を冷遇し、犯罪性を匂わせているラポルタ会長率いるフロントの行為の方が、よっぽど法にも道徳にも反している。

 8月13日に開幕戦を控えているのに、現地時間12日朝現在で、獲得したレバンドフスキもクンデもケシエもラフィーニャもクリステンセンも、契約を更新したデンベレもセルジ・ロベルトも選手登録されていない(編注:その後、現地時間12日午後にバルサスタジオの株式24.5%を1億ユーロで売却し、クンデ以外の選手の登録が完了した)。

 景気の良い花火を上げてきたラポルタが、財政危機の現実に追い詰められている。


Photo: Getty Images

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ジョアン・ラポルタジョゼップ・マリア・バルトメウバルセロナフランク・ケシエロベルト・レバンドフスキ移籍

Profile

木村 浩嗣

編集者を経て94年にスペインへ。98年、99年と同国サッカー連盟の監督ライセンスを取得し少年チームを指導。06年の創刊時から務めた『footballista』編集長を15年7月に辞し、フリーに。17年にユース指導を休止する一方、映画関連の執筆に進出。グアルディオラ、イエロ、リージョ、パコ・へメス、ブトラゲーニョ、メンディリバル、セティエン、アベラルド、マルセリーノ、モンチ、エウセビオら一家言ある人へインタビュー経験多数。