健康問題でボカ移籍が破談に。心筋症はなぜ放置され、公になったのか

2月12日に開幕したアルゼンチンのプリメラ・ディビシオン新シーズンで連覇を狙うべく、元アルゼンチン代表SBマルコス・ロホと契約をかわして話題をさらったボカ・ジュニオール。だが、2人目の補強となるはずだったコロンビア人SBアンドレス・フェリペ・ロマンにメディカルチェックで健康上の問題が発覚し、移籍が破談となってしまった。
メディカルチェックで問題発覚
ロマンはコロンビアの名門ミジョナリオス所属の25歳で、ボカのミゲル・アンヘル・ルッソ監督が直々に獲得を希望した逸材。今月初旬にはレイナルド・ルエダ新監督によってコロンビア代表にも招集されてトレーニングに参加し、注目を集めていた矢先だった。
2月18日未明にアルゼンチンに到着したロマンは、同日8時過ぎ、ブエノスアイレス市内のクリニックでメディカルチェックを行った。その後、17時に入団会見が行われる予定だったが、18時過ぎにボカがロマンの検査結果について「移籍に必要な診断基準を満たしていなかった」との声明を公表。
18時にはミジョナリオス側から「アルゼンチンでの移籍期間終了当日であったため、必要な追加検査も行われず、契約は成立しなかった」との公式声明が発表された。
検査結果の詳しい内容については公表されていないものの、アルゼンチン国内のメディアは見つかった問題が「肥大型心筋症」であったと報道している。
突然死の要因でもある深刻な先天性疾患であることから、スポーツ専門メディア『ESPN』のボカ番記者エミリアーノ・ラディは「今のロマンはそんな気持ちになれないだろうが」と前置きしながら「早期に発見できたことはロマンにとって幸運だった」と語った。
1年半以上検査せず?
これに関連し、アルゼンチン国内では2つのテーマが討論の的となっている。1つはミジョナリオス側がなぜロマンのコンディションを把握していなかったのかという疑問。もう1つは個人情報である検査結果をメディアが公表したことに対する反論だ。
ミジョナリオスは公式声明の中で、所属する全選手たちが定期的にメディカルチェックを受けていること、ロマンがプロサッカー活動を行うコンディションにあったことを明らかにしている。しかし、翌2月19日に有力紙『ラ・ナシオン』に掲載された関連記事によると、ボカ関係者からの情報として「ロマンはミジョナリオスで1年半以上も心臓検査を行っていなかった」との事実が判明した。
「2019年半ばにボゴタ市で行われた検査ではノーマルな数値だったが、昨日の検査では値を超えていることが指摘されたため、午後になって新たに造影剤を使ったMRI検査を行ったものの、結果は同じだった」とし、同日中に追加検査が行われたことを報じている。これに対するミジョナリオス側からの回答はなく、疑問は残されたままとなっている。
また、ロマンが肥大型心筋症を患っていることが公表されたことについては、アルゼンチンのジャーナリスト、マルティン・リーベルマンがツイッターで「もし健康上の問題が見付かった場合、それを公にしてもらいたいだろうか。選手とコロンビアのクラブ(ミジョナリオス)の許可なしにボカがやったことは失礼極まりない」と書き込んだことが議論を引き起こした。
結果を公表したのはメディアであったため、ボカが発表したという見解はリーベルマンの誤解だが、スポーツ選手のキャリアに影響する身体上の問題を公にするべきかどうかをめぐり、ネット上では様々な意見が飛び交っている。
Photo: Getty Images
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Profile
Chizuru de Garcia
89年からブエノスアイレスに在住。1968年10月31日生まれ。清泉女子大学英語短期課程卒。幼少期から洋画・洋楽を愛し、78年ワールドカップでサッカーに目覚める。大学在学中から南米サッカー関連の情報を寄稿し始めて現在に至る。家族はウルグアイ人の夫と2人の娘。