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最多得点最多失点! ベルギーで大躍進の昇格組ベールスホット

2020.11.13

 今シーズンからベルギー1部に昇格したベールスホットが、第12節終了時点で首位クルブ・ブルッヘと勝ち点2差の3位につけている。8月に日本代表FW鈴木武蔵が加わり、復活に燃える古豪は、リーグ最多得点の攻撃力を武器に猛威を振るっている。

リーグ最高の攻撃力と最低の守備力

 第12節終了時点の戦績は7勝1分4敗。今季の躍進を支えるのは、リーグ最多得点を誇る攻撃力だ。3ゴール以上を奪った試合が全試合の半分となる6試合で、無得点試合は第4節のスタンダール・リエージュ戦のみと、得点力の高さが魅力的だ。

 反面、失点も非常に多く、3失点以上した試合は5試合と多い。無失点で終えた試合は1-0で勝利した第3節のクルブ・ブルッヘ戦のみと、ベールスホットの試合ではスコアが非常に動いている。

 直近の試合である第12節のコルトレイク戦では、5-5と激しい撃ち合いを演じた。アルゼンチン人のエルナン・ロサダ監督が率い、リーグ最低の守備力を気にすることなくひたすらゴールを狙い続けるチームは、ベルギー国内のメディアから「スペクタクルなチーム」と評されている。

チームを牽引する強力3トップ

 システムは[3-4-1-2]を採用。リーグ最多得点の攻撃力を支えるのは、オーストリア代表MFラファエル・ホルツハウザー、モロッコ人FWタリク・ティスダリ、そして日本代表の鈴木武蔵の強力3トップだ。

 中でもホルツハウザーは、12試合でリーグトップの9得点8アシストを記録。193cmの長身ながらトップ下を務め、左足からの正確なキックで攻撃陣を牽引。長身を生かしたヘッドとミドルシュート、冷静なPKで得点を重ねている。シュトゥットガルトの下部組織出身で、18歳でプロデビューを飾ったが、オーストリア、スイス、ベルギー2部を経て27歳で遅咲きのブレイクを果たし、今年10月にはオーストリア代表に初招集された。

 同じく27歳のティスダリは、オランダやフランスの下部リーグを経て2018年にベールスホットに加入。昨シーズンの2部優勝決定戦では2試合で2得点を決めて優勝に大きく貢献し、今季はキャリア初のトップリーグ挑戦となった。高速ドリブルを武器とするティスダリの突破力は、チームのカウンター攻撃の軸となっており、今季は6得点を決めている。

 8月からベールスホットに加わった鈴木武蔵は、8試合で5得点と、ベルギーリーグ1年目ながら日本人選手で最も多くのゴールを決めている。移籍して間もないが、昨シーズンまでレギュラーだったカメルーン人FWマリウス・ヌビシからポジションを奪っている。ホルツハウザーやティスダリとの相性は良く、フィニッシャーとして一役買っている。

 Jリーグからベルギーへ移籍した初年度にリーグの特性やピッチ状況に苦戦し、順応に時間がかかる選手も少なくないが、北海道コンサドーレ札幌時代と同様の鋭い飛び出しと冷静なシュートを披露しており、今後は得点王争いにも期待がかかる。

国内で最もスペクタクルなチーム

 チームの平均ポゼッションは47%と高くなく、大量6得点を奪ったシントトロイデン戦では36%と低いポゼッション率を記録。逆に1-3と完敗を喫したシャルルロワ戦では54%を記録しており、このデータからでは「ボールを持たされると勝てない」傾向が顕著に出ている。

 攻撃時にはカザフスタン代表MFヤン・ボロゴフスキ、アルジェリア代表MFレーダ・アレミアの両WBが攻め上がって5トップを形成。中盤のライアン・サヌシ、トム・ピーテルマートらの配球から、手数をかけず素早くフィニッシュに迫るのがベールスホットの攻撃力を表している。常に前を選択する積極的なスタイルにより、ベールスホットの試合は、常にボールが上下動するエキサイティングな試合になりやすい。

 超攻撃的なサッカーを展開する代償として守備が手薄になりやすく、リーグ最低の30失点を喫しているが、エルナン・ロサダ監督は「我われは守れないから、相手よりもゴールを決めることを重視している」と強気の姿勢を前面に出している。

 鈴木武蔵の活躍に期待すると同時に、攻撃全振りのベールスホットの躍進に期待したい。


Photo: Getty Images

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ベールスホット鈴木武蔵

Profile

シェフケンゴ

ベルギーサッカーとフランス・リーグ1を20年近く追い続けているライター。贔屓はKAAヘントとAJオセール。名前の由来はシェフチェンコでウクライナも好き。サッカー以外ではカレーを中心に飲食関連のライティングも行っている。富山県在住。

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