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OGが味方のフランスは“期待外れ”も平常運転?黄金世代ベルギーを葬ったテオの咆哮、グリーズマンの献身とコロ・ムアニの忍耐【EURO分析】

2024.07.04

【特集】EURO2024注目マッチ分析#4
ラウンド16:フランス 1-0 ベルギー

7月14日までドイツで開催されるEURO2024。グループステージから決勝ラウンドまで注目の試合を、各国の事情に精通するレギュラー執筆陣や戦術分析のスペシャリストが独自の視点で深堀り!

さっそくラウンド16で実現したのがフランスとベルギーによるFIFAランキング2位・3位対決。注目の大一番を、フランスでの反応や報道を交えながら現地在住の小川由紀子氏がレポートする。

テオ・フェルナンデスの咆哮が象徴するDF陣の奮闘

 7月1日に行われたEURO2024ラウンド16で、フランスはベルギーを1-0で下して準々決勝進出を決めた。

 がしかし、巷の反応は、「やったぞ!」という晴れやか感とは程遠い。

 フェルトンゲン(37)、デ・ブルイネ(33)ら、黄金世代の最後の数人が力を振り絞るベルギーに対して、相手のオウンゴールでの辛勝。グループリーグのオーストリア戦(0-1)、オランダ戦(0-0)、ポーランド戦(1-1)、そしてこの試合を合わせてフランスは4戦で3点しか挙げていないが、そのうちムバッペのポーランド戦でのゴールを除く2点がオウンゴールである。出場国ナンバーワンとも言える攻撃陣を擁しているチームにとってはなんとも寂しい結果であるから、”期待外れ”の反応も致しかたないといったところか。

 このベルギー戦は、DF陣が引き寄せた勝利でもあった。

 相手の切り込み隊長ドクとマッチアップした右SBのクンデ、ルカクを封じ込めた左CBサリバ、体を張って盾となった右CBウパメカノ、そして左サイドで攻守に大奮闘だったテオ・フェルナンデス。

 特にテオ・フェルナンデスが61分、ゴールに迫ったカラスコをスライディングで食い止めたのは、殊勲ものだった。あそこで防げていなければ、ベルギーに先制されていた可能性は高い。そうなっていたら、結果は変わっていたかもしれない。立ち上がった後の咆哮が、いかにあのシーンがフランスにとって大ピンチだったかを象徴していた。

メディアでは低評価も…奇策でも頼りになった副将

 このベルギー戦で採ったデシャン監督の戦術は、レ・ブルーの選手たちにとって”奇策”だった。

 グループリーグ終了後からトレーニングでは中盤をひし型に並べた[4-4-2]を試していたにもかかわらず、試合当日になってグリーズマンを右サイドに置く[4-3-3]を採用することが告げられたという。……

Profile

小川 由紀子

ブリティッシュロックに浸りたくて92年に渡英。96年より取材活動を始める。その年のEUROでイングランドが敗退したウェンブリーでの瞬間はいまだに胸が痛い思い出。その後パリに引っ越し、F1、自転車、バスケなどにも幅を広げつつ、フェロー諸島やブルネイ、マルタといった小国を中心に43カ国でサッカーを見て歩く。地味な話題に興味をそそられがちで、超遅咲きのジャズピアニストを志しているが、万年ビギナー。