強化部の知られざる仕事。「何でも屋」木田靖子が見たアルディージャの日常と未来
【特集】大宮アルディージャ、反撃開始 #6
大宮アルディージャは、昨シーズンクラブ史上初のJ3への降格を経験した。近年の大宮の実情を見ると、かつてJ1で上位にも進出した面影はもはやない。なるべくしてなったJ3降格という見方もできるだろう。
しかし、J3に降格したことで大宮がここまでやってきたことをすべて否定してしまうのはどうだろうか。大宮が進んで来た道を振り返ると、間違いはあったかもしれないが、大きな財産を築いてきたことも忘れてはいけない。その財産がなければ、鬼門と呼ばれるJ3初年度で、開幕から1位を独走することはなかっただろう。
今季のチームはアカデミー上がりの選手と大卒の選手がいきいきと活躍している。そうなるためには当然ながらクラブが地道に継続してきた戦略があったからだ。本特集では今の大宮のJ3での結果が決して取ってつけたものでもなければ、偶然でもないということを、クラブ関係者に話を聞くことで掘り下げていきたい。
選手たちの活躍の裏には、それを支える裏方の存在がある。強化部の木田靖子さんは、寮生活をする若手選手から外国籍選手の生活のサポートまで「チームに関わることはほぼすべて」を担当する「何でも屋」だ。選手たちの日常を見ているスタッフの目から見た大宮好調の秘密、アカデミーを含めた若手教育、そして未来への期待について語ってもらった。
親心だけでなく…大切なのは「選手との距離感」
「みんながケガなくいいパフォーマンスをしてくれればいい。そのために私は生活をサポートしています」
そう語るのが、大宮アルディージャ強化部に所属する木田靖子さんだ。
クラブの強化部というと他クラブからの選手獲得、高校生や大学生のスカウトなどの仕事をイメージする人が多いだろう。だがクラブも普通の会社と同じであり、多くの人が働き、それぞれに生活がある。選手たちも人間であり生活があるわけで、選手の生活を安定させることが仕事のパフォーマンス、つまりピッチ上でのプレーパフォーマンスを上げることになる。
だからこそ選手の生活面や事務面をサポートする人が強化部には必要になってくる。特にサッカー選手はいわゆる一般企業での社会経験をしていない人が多いので、ちょっとしたことでもわからないことだらけだったりするのだ。
木田さんの仕事内容は「チームに関わることはほぼすべて」と多岐に渡る。一言では表せないほどあらゆる業務をこなす木田さんは、一般企業で言えば選手のための総務のような仕事であるが、もっとも適した表現となると「何でも屋」がしっくりくると言う。
「特に新人選手は新生活に慣れるまで時間がかかるので、ストレスなく生活を送れるようにしてあげたいと思っています。選手には『困った時はいつでも連絡ください』というスタンスでいますので、選手から連絡がきたらいつでも対応できるようにしています。大変な部分もありますが、それはこの部の宿命です」……
Profile
池田 タツ
1980年、ニューヨーク生まれ。株式会社スクワッド、株式会社フロムワンを経て2016年に独立する。スポーツの文字コンテンツの編集、ライティング、生放送番組のプロデュース、制作、司会もする。湘南ベルマーレの水谷尚人社長との共著に『たのしめてるか。2016フロントの戦い』がある。