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躍動する大卒ルーキー、藤井一志が大宮アルディージャを選んだ理由

2024.06.20

【特集】大宮アルディージャ、反撃開始 #3

大宮アルディージャは、昨シーズンクラブ史上初のJ3への降格を経験した。近年の大宮の実情を見ると、かつてJ1で上位にも進出した面影はもはやない。なるべくしてなったJ3降格という見方もできるだろう。

しかし、J3に降格したことで大宮がここまでやってきたことをすべて否定してしまうのはどうだろうか。大宮が進んで来た道を振り返ると、間違いはあったかもしれないが、大きな財産を築いてきたことも忘れてはいけない。その財産がなければ、鬼門と呼ばれるJ3初年度で、開幕から1位を独走することはなかっただろう。

今季のチームはアカデミー上がりの選手と大卒の選手がいきいきと活躍している。そうなるためには当然ながらクラブが地道に継続してきた戦略があったからだ。本特集では今の大宮のJ3での結果が決して取ってつけたものでもなければ、偶然でもないということを、クラブ関係者に話を聞くことで掘り下げていきたい。

今季の大宮アルディージャでは大卒ルーキー、藤井一志の活躍が目立っている。昨季も大卒ルーキーの室井彗佑が活躍し、チームに移籍金を残して横浜FCに移籍した。大卒選手の活躍は決して偶然ではない。今季活躍する藤井の目を通して今の大宮アルディージャの強化、そして自身の将来像について迫っていく。

「近年の大宮では大卒が活躍している」

――開幕から13試合に出場し4得点(インタビュー時点)とプロ1年目から結果を残していますが、大宮アルディージャへの加入を決めた理由を教えてください。

 「最初のきっかけは、昨季のキャンプに呼んでもらったことです。その前に練習に参加する機会はなく、いきなりキャンプに呼んでもらいました。最初の1週間ちょっとくらいの期間、参加させてもらい、帰ってきてから割とすぐに強化の方から『オファーを出そうと思っている』と連絡を頂いたと、東海大学の監督から聞きました。キャンプの最後に話したときは、すぐにオファーを出すという感じではないと思っていたので、ちょっとビックリしました。『あと1回くらい練習参加してからかな』と思っていたので、オファーを頂けてすごく嬉しかったですね」

――まだ大学4年生のシーズンが控えていた訳ですし、ほかのクラブに練習参加したり、オファーを待ったりという選択肢もあったと思います。

 「その時点で、大宮以外に練習参加の打診や、オファーはありませんでした。大学3年生のときに(関東大学リーグ二部で)得点王になって大宮からお話を頂けたので、そのときはほかに選択肢はありませんでした。また、その時期に半月板をケガしてしまったこともあり、結局、ほかのクラブの練習に参加もしませんでした」

――大宮以外のクラブを見たり、話しを聞いたり、ほかのオファーを待ったりしたいという気持ちはなかったのですか?

 「正直に言えば、ほかのクラブを見てみたい思いはありました。大宮からオファーを頂いたときも、ほかのクラブの練習にも参加してから決めようと思って、すぐに返事はできませんでした。ただ、大学の監督から『はっきりしないと失礼だから』と言われた言葉は印象に残っています。オファーをもらったあとには、自分の中で迷う時期もありましたけど、2023年の3月くらいにNACK5で試合を観に行ったときのスタジアムの雰囲気や勝ったあとに歌う『寝ても大宮』の光景を見て、自分もこのピッチに立って、ファン・サポーターの方々を喜ばせたいと思ったのが、入団を決めた一番の決め手だと思います。それで、3月くらいには返事をさせてもらいました」……

Profile

須賀 大輔

1991年生まれ、埼玉県出身。学生時代にサッカー専門新聞『ELGOLAZO』でアルバイトとして経験を積み、2016年からフリーライターとして活動。『ELGOLAZO』では柏レイソルと横浜FCの担当記者を経て、現在はFC東京と大宮アルディージャの担当記者を務めている。その他の媒体でも、執筆・編集業を行っている。@readysuga1214