FEATURE

満を持してFC東京を飛び出した波多野豪が長崎で見せる「過去最高の輝き」。ゆえに2024年の未来が悩ましい

2023.10.23

レンタル選手の現在地2023 #4
波多野豪(FC東京→V・ファーレン長崎)

バル・フットボリスタでも取り上げた「ポストユース問題」。J1でプロ契約した高卒選手がその後どのように試合経験を重ねていくかは、日本サッカーの発展を考える上で大きな課題だ。J2やJ3への期限付き移籍はそれを解決する1つの手段だが、修行先でも厳しい戦いが待っている。試練を乗り越えて活躍する若手選手たちの「現在地」を徹底レポート。第4回は、FC東京からV・ファーレン長崎にレンタルされている波多野豪を取り上げる。

レンタル先の長崎で全試合出場を継続中

 FC東京からV・ファーレン長崎に期限付き移籍中の波多野豪が、J2第39節まで全試合出場を継続している。ゴールキーパーというポジション柄もあるが、出場時間3,510分は全選手中最長。クラブの顔と言っても差し支えない存在になりつつある。

 自動昇格圏から遠ざかっている現在、背番号21にとってベストのストーリーは、まずプレーオフを経由してでも長崎をJ1に昇格させること。そのうえで、来シーズンは長崎なのか、それともFC東京に復帰するのかという選択肢を持つことだろう。

 今年の5月25日に25歳の誕生日を迎えた。もう若手ではない。J2上位でいちゴールキーパーとしてのみならず昇格のプレッシャーがかかる状況で最後方からチームを鼓舞するほどの存在感を示す選手なのであれば、もっと早い時期に東京を出ておくべきだったのかもしれない。しかし振り返れば、そうではない選択肢を選んできてもおかしくない経緯がある。

Photo: Takahiro Fujii

やんちゃさが全面に出ていたアカデミー時代

 ディエゴ マラドーナのような存在になりたいと言ってみたり、平山相太の背番号13を継承したり。東京時代から、波多野はゴールキーパーというポジションを超えてある種のスター性を示してきた。

 キャリアの始まりはフォワード。そのフィールドプレーヤーとしての足もとの技術を活かしながら現代的なゴールキーパーへと転向するよう、小学生から中学生にかけて周囲が仕向けていった。廣末陸(現・ラインメール青森)の昇格を阻み、山口瑠伊(現・水戸ホーリーホック)との競争に優るかたちでFC東京U-18の守護神となった波多野は、この時点で将来を嘱望される存在だった。

 やたらと声が大きく元気な男。やんちゃが過ぎて、試合中に乱暴狼藉を働いた2016年のJユースカップ準決勝では、対戦相手の京都サンガF.C. U-18の森岡隆三監督に直接叱られるという事件も起こしている。決勝では出場を自粛、高瀬和楠がゴールを守った。本人にも悪いことをした自覚はあり、深く反省する事態となったが、エネルギーが有り余っていた証左であるとは言えるだろう。

画像はFC東京時代のもの(Photo: Masaru Goto)

……

Profile

後藤 勝