北中米W杯で侮れない、多種多様なアジア勢各国紹介~オーストラリア、ウズベキスタン、ヨルダン、イラン編~
【特集】社会から文化まで!北中米W杯スペシャルコラム#2
W杯の魅力は、ピッチ上の勝敗だけでは語り尽くせない。サッカーを通して見えてくるのは、それぞれの国が抱える文化や社会、歴史、そしてときに政治との関係性だ。世界中の価値観が交差する北中米W杯を、多彩なテーマとともに掘り下げる。“もう一つのワールドカップ”が、そこにある。
第1&2回では北中米W杯で侮るなかれ。日本を除く、帰化戦略から政府主導まで多種多様な強化戦略を採ってきたアジア勢8カ国、韓国、イラク、サウジアラビア、カタール、オーストラリア、ウズベキスタン、ヨルダン、イランを、2回に分けて取り上げる(選手名に続く括弧内の年齢と所属は掲載時点)。
ベテランと若手が融合するオーストラリア。注目は“電撃招集”の2人
サウジアラビア、カタールとは反対に、大いに期待できそうなのがオーストラリア代表だ。アメリカ、トルコ、パラグアイと同居するA組では3〜4番手の評価も、勢いに乗ればW杯2大会連続でのグループステージ突破も十分あり得るスカッドが顔を並べている。
日本と同組だった北中米W杯アジア3次予選では早々から躓き、前回大会から実に6年もの長期政権を築いてきたアーノルド監督が「代表のことを思って決断した。今は変化が必要な時だ」と言い残して、2024年9月に辞任。後任には、国内1部のメルボルン・ビクトリーを率いていたトニー・ポポビッチが就任した。
ウェスタン・シドニーを率いた2014年に当時のACLを制し、その後トルコやギリシャのクラブを率いたポポビッチ監督は、満を持しての代表チーム初挑戦。ちなみに前任のアーノルドとは1997〜98年に広島でともにプレーした仲でもある。攻撃的なポゼッション志向と大胆な若手抜擢など、ドラスティックな采配を好むアーノルド前監督よりも、現実的かつ手堅いスタイルを敷くポポビッチ監督の下でチームは勢いを取り戻し、見事日本に次ぐグループ2位で本大会進出を達成した。
メンバーを見ると、大黒柱のGKマシュー・ライアン(34/レバンテ)、MFジャクソン・アーバイン(33/ザンクト・パウリ)を中心に、DFアレッサンドロ・チルカーティ(22/パルマ)、FWネストリ・イランクンダ(20/ワトフォード)らベテランと若手がバランスよくそろう。彼ら2人と、オランダ1部の強豪フェイエノールトで日本代表FW上田綺世(27)とチームメイトであり、今季リーグ戦10アシストを記録したDFジョーダン・ボス(23)は今後のオーストラリアサッカーを背負う3人衆だ。
また本大会でブレイクが期待されるDFルーカス・ヘリントン(18/コロラド・ラピッツ)に代表されるように、近年は国内リーグを経由して米MLSでプレーする選手が増えた。過去にはDFミロシュ・デゲネク、MFティム・ケーヒルらの単発的な移籍先となる程度だったが、ここ数年の間でスカウト網の国際化によりコスパがよく、かつ英語などコミュニケーションでも即適応できるオーストラリア人選手の需要が、アメリカで一気に高まった印象だ。へリントンに、ニューヨーク・シティ所属のDFカイ・トレウィン(25)とMFエイデン・オニール(27)を加えたMLS組3人と臨む今大会では、そのアメリカ代表と同組となったことで評価がさらに高まることも予想される。
そして26人中22人を占める国外組で注目すべきは、J1のFC町田ゼルビアでプレーするFWテテ・イェンギ。これまで代表とは年代別も含めて無縁だったが、ACLエリートでの活躍も後押しして、同タイプで元町田の重鎮FWミッチェル・デューク(36/マッカーサーFC)らを押しのけて、滑り込みでのサプライズ選出となった。スーパーサブ的な起用が想定されるが、マーク・ビドゥカ、ジョシュア・ケネディ、ケーヒル以後、オーストラリア代表長年の課題とされる決定力不足の解決策となるだろうか。
その裏では、FWエイドリアン・セゲチッチ(21/ポーツマス)のクロアチアへの代表変更、元U-21イタリア代表MFクリスティアン・ボルパート(22/サッスオーロ)の電撃招集という動きもあった。クロアチア系の移民の子孫としてオーストラリアで生まれたセゲチッチはシドニーFCでブレイク。左利きのウィンガーとして出身国の世代別代表でも活躍し、北中米W杯に向けてA代表待望論が強かった。祖国クロアチアの勧誘も受ける中、本人も「オーストラリア代表としてプレーしたい」とラブコールを送っていたが、ポポビッチ監督はなかなか招集に踏み切らず、待望のA代表メンバー入りを果たした昨年9月のニュージーランド代表との2連戦でもまさかの出場なし。ポポビッチ監督は「試合に出られなかった選手は辛抱強く耐える必要がある」と訴えたが、その後セゲチッチは背を向けてU-21クロアチア代表でプレーしている。
ボルパートはイタリア系移民の子としてオーストラリアで生まれ、その後ローマのアカデミーで育成された187cmの大型レフティ。この攻撃的MFはイタリアの年代別代表として活躍しており、アーノルド前監督からオーストラリア代表入りの勧誘を受けた際は断っていた。ところが北中米W杯直前の5月になってアメリカでのキャンプに呼ばれ、本大会のメンバー入りも果たしている。連携はまだまだだが、新たな刺激をもたらす存在として期待するファンも多い。
移民の国として成り立ったオーストラリアは近年、有力選手の流出と流入が特に相次いでおり、U-23オーストラリア代表招集歴のあるGKアンソニー・パブレシッチ(20/NKルデシュ)がクロアチア、元U-23オーストラリア代表DFネクタリオス・トリアンティス(23)がギリシャへと鞍替えした一方、世代別イタリア代表歴を持つチルカーティやボルパートのほか、3月シリーズで初招集されたクロアチア生まれのFWアンテ・シュト(25/ハイバーニアン)らはルーツ国で目をつけられた後にオーストラリア代表を選択した。もともと、イランクンダも「オーストラリア代表に選ばれなければルーツのあるブルンジか、タンザニアの代表になる」と言い張っていたところ、アーノルド前監督に選出された過去がある。今後も代表選出での選手と各国サッカー協会・連盟間でのせめぎ合いは続きそうだ。
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yosuke
杜の都に住むロンドン世代のフットボール好き。小中高とゴリゴリにフットボールをプレーしていたが、その一方で幼少期からアジアンフットボールをこよなく愛し、選手の帰化や、Jリーグにやって来そうな外国籍選手探しにも関心がある。SNS経由で知り合ったアジアの友人達と共に試合を観て周るのが夢。
