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「碧に好きにやらせる」“相棒”を解放した黒子役、守田英正が唯一無二たる所以

2024.03.26

3月26日に予定されていた敵地での再戦はまさかの中止となったものの、21日に国立競技場で北朝鮮に1-0の辛勝を収め、北中米W杯アジア2次予選突破に王手をかけている日本代表。決勝点を奪った“相棒”田中碧に自由を与えつつ、自らも存在感を発揮した守田英正の黒子ぶりに、アジアカップから現地取材を続ける舞野隼大氏が迫る。

「役割は穴を開けないこと」予期せぬアクシデントも柔軟に対応

 「(田中)碧とは2人でスタートから出ることはなかなかなかった」

 守田英正がそう振り返っていたように、北中米W杯2次予選の北朝鮮戦はここ最近あまり見られなかった2人が[4-2-3-1]の中盤を任された。川崎フロンターレで3シーズンともに過ごし、お互いをよく知る間柄だがダブルボランチを組むことは珍しい。今年1月から2月にかけて戦ったアジアカップでも、同じポジションに田中と異なる特長を持つキャプテンの遠藤航が全5試合にスタメンとして君臨していたからだ。守田は遠藤とともに後方からチームを支えつつ、機を見て攻め上がり攻撃に厚みを加えていることが多かった。日本代表で課せられているタスクを聞かれると、こう答える。

 「僕は『役割はこう』と決められていたらそれに集中できますけど、代表での僕の役割はそれ以上に穴を開けないこと。(全体を見れるポジションだからこそ)どうしても気になってしまって、バランスを見る役割に寄っている」

 守田は守備でも周囲を見て、バランスの取れたプレーができる。グループステージ第1節・ベトナム代表戦(○4-2)では、33分に一時逆転を許してしまった。しかし遠藤が「前半を受けて後半は僕が1ボランチ気味になって、(南野)拓実とモリ(守田)を相手の2ボランチに当てる感じでやりました。そっちのほうがうまくハマった感覚です。そこ(マークのつき方)とプレスに行くタイミングをすり合わせた」と話していたように、守田が一列前に上がり自らの役割を柔軟に変更。遠藤がマークの的を絞りやすくなり、彼が持つワールドクラスの対人能力やプレッシングの強度を高めるサポートもこなした。

ベトナム戦でボールホルダーを挟み込む守田

 攻守において戦況に応じたプレーを遂行することで、チームが円滑に戦えるようにする。それが守田が持っている強みの1つだ。印象的だったのは、ラウンド16・バーレーン戦(○1-3)でのこと。この日、ベンチスタートだった守田は、旗手怜央が負傷したことで36分に急きょピッチに立つことになった。試合中に起きた予期せぬアクシデント。事前の準備もなくスクランブル的に出ることになり、ハーフタイムまでの残り9分でまずは試合に入ることを目指してもおかしくなかった。

 しかし──。……

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Profile

舞野 隼大

1995年12月15日生まれ。愛知県名古屋市出身。大学卒業後に地元の名古屋でフリーライターとして活動。名古屋グランパスや名古屋オーシャンズを中心に取材活動をする。2021年からは神奈川県へ移り住み、サッカー専門誌『エル・ゴラッソ』で湘南ベルマーレやSC相模原を担当している。(株)ウニベルサーレ所属。

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