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紆余曲折の2023シーズン。パルセイロが髙木新監督の下で取り戻した“長野らしさ”を振り返る

2023.12.14

宿敵・松本山雅FCにJリーグ初勝利を収めてシーズン2度目の首位浮上――J3第10節の信州ダービーまでは順風満帆のように見えたが、15位へ再々転落した第24節を経て就任2年目のシュタルフ悠紀前監督と袂を分かったAC長野パルセイロ。順位こそクラブ史上最低の14位に沈んだが最終盤を6戦無敗で乗り越え、来季も続投が発表されている髙木理己新監督の下で取り戻した”長野らしさ”とは。紆余曲折の2023シーズンを番記者・田中紘夢氏と振り返っていく。

 荒波に揉まれたシーズンだった。クラブ史上初となるJ3第7節以降の首位、同じくシーズン2度の首位。松本山雅FCとの信州ダービーでJ初勝利を挙げるなど、序盤戦は飛ぶ“雷鳥”をも落とす勢いがあった(松本のマスコットは雷鳥をモチーフとしている)。しかし、ダービー後に急降下。クラブワーストとなる9試合勝ちなしと苦しみ、その後も立て直しきれず。8月末、成績不振によってシュタルフ悠紀監督が解任となった。

 クラブ史上最大の危機に直面していたと言っても過言ではないだろう。監督解任の時点で、20チーム中15位と低迷。J3史上初となる降格制度が導入された中で、残留争いに片足を踏み入れていた。もっともJ3は大混戦であり、昇格圏との勝ち点差も14試合を残して11しか開いていなかったのだが――。

 後任を託されたのは、髙木理己監督だ。今季は今治を率いて上位争いにとどまったが、連勝を重ねられず。8月初旬に4位のチームを解任となり、1カ月足らずで長野へ渡ることとなった。クラブは第24節・奈良クラブ戦で敗れた直後にシュタルフ監督を解任し、即座に髙木監督へとオファー。本人はまだ正式契約に至っていない段階で、愛媛から長野まで車を走らせた。先の話ではあるものの、その男気が来季の続投に繋がった側面もある。

 初日のトレーニングから“髙木イズム”は見られた。「敵陣にしかJ2(昇格)はない」というフレーズを用い、攻守に前へのベクトルを強める。攻撃ではビルドアップで縦に刺す意識を高め、動きやテンポも加えた。守備でもミドルプレスが主軸だったところをハイプレスに切り替え。システムこそ大きく変わらなかったが、前線の近藤貴司、三田尚希らの推進力が生き始めた。

 象徴的な変化を起こしたのは、山中麗央だ。アカデミー出身の24歳で、拓殖大学を経て“復帰”して2年目。今季は10番を託されるなど期待値が高かったものの、ゴールはおろか先発の機会すらつかめず、ベンチを外れることも少なくなかった。それでも監督交代後は、初陣から継続的にメンバー入りを果たす。2試合連続のスタメンとなった第28節・カターレ富山戦で、今季初ゴールを含むハットトリック。相手のビルドアップからボールを奪ってそのまま決めた2点目は、髙木イズムを象徴するかのようだった。

J2第28節、富山戦(○3-1)のハイライト動画。山中の3点目は3:40から

原点回帰を図った高木新監督。女子チーム監督との再会も

 チームとしても監督交代後の4試合で2勝1分1敗と、勝ち星が先行。その1分の相手が首位・愛媛で、1敗が開始早々に退場者を出したことを踏まえれば、上々の滑り出しと言える。その後はダービーでの敗戦を含めて4試合勝ちなしと苦しんだが、ここで新指揮官の手腕が光った。ミドルプレスを適宜取り入れ、相手に合わせてプレッシングの形も柔軟に変化。ハイプレスを仕掛ける前提は変えず、守備の形を整理したことによって、より前へのベクトルを合わせやすくなった。

 最終盤は今季最長となる6試合負けなしでフィニッシュ。監督交代前後で15位から14位と、順位こそ1つしか上がらなかったが、内容からすれば大いに改善は見られた。何よりも大きかったのは、失いかけていた“長野らしさ”を取り戻したことだ。……

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Profile

田中 紘夢

東京都小平市出身。高校時代は開志学園JSC高(新潟)でプレー。大学時代はフリースタイルフットボールに明け暮れたほか、インターンとしてスポーツメディアの運営にも参画。卒業後はフリーのライターとして活動し、2021年からAC長野パルセイロの番記者を担当。長野県のアマチュアサッカーも広く追っている。

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