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大炎上中のルビアレスRFEF会長。3カ月停職では済まない「キス問題」の本質を問う

2023.09.07

※読む前に、事実関係をまとめたこのニュース記事を先にお読みください。

 前回のニュースから10日余りが経った。

 W杯表彰式で女子選手の口に無理矢理キスをした連盟会長は辞めるか、辞めさせられるかしているだろう、と誰でも思う。

 が、違う。辞任もせず解任もされていない。FIFAによってとりあえず、3カ月の停職にされているが、スペインサッカー連盟(RFEF)の会長は今もルイス・ルビアレスのままだ。

 外部から連盟会長のクビを切ることは難しい。REFEが税金の補助を受けていない私的機関であるからだ。政府ですらできない。例えば、ペドロ・サンチェス首相は「ああいう態度や言動でスペインを代表する地位にいることはできない」と言っている。だが、“だから辞めろ”と命令はできない。

 政府はREFEの監督官庁であるスポーツ上等委員会(CSD)を通じて停職させようとした。しかしスポーツ最高裁(TAD)がキスを「重大な問題」と裁定し「非常に重大な問題」としなかったことで「長期の停職=実施的な解任」というシナリオは消えた。

 となると、連盟の自浄作用に期待するしかないが、これが望み薄だ。というのも、会長と連盟は予算の分配で結びついた一種の運命共同体であり、会長が辞任拒否を発表した際にはスタンディングオベーションをして称えた人たちであるからだ。論より証拠。現在、連盟を率いている臨時会長は誰が選んだのか? 停職中の会長本人である。

女子代表を初の世界制覇に導いたホルヘ・ビルダ監督も、ルビアレス会長の辞任拒否表明スピーチに拍手を送った1人。5日夜に解任が連盟から発表された

 反旗を翻した者も中にはいる。辞任拒否に抗議して辞任した者もいるが、少数派である。今日も今日とてCSDが連盟に対して「ルビアレスから離れるように」と要請したと報道されているが、そんなものはアドバイスに過ぎない。すでに、連盟は会長の不信任決議はしないことを決定済みだ。

 現状をまとめると、FIFAは暫定的な3カ月の停職を決めた。政府は何もできない。当の連盟はもう少し見ないとわからないが、おそらく何もやるつもりはない。停職が終わったら一応頭を下げつつ会長職に復帰する、という未来が見える。

法的問題に持ち込むのはルビアレスの策略?

 ここから個人的な見解を述べたい。

 まずTADがキスを「非常に重大な問題」としなかった点について。これは理解できる。おそらく「非常に重大な問題」というのは非常に重大な性加害、例えば強制性交等に適用されることを想定していたのではないかと思う。無理矢理のキスと無理矢理の性交を法的に同等に扱えない、という判断でないかと想像する。

 そもそも、法的な争いに持ち込むことはルビアレスの策略ではないかと私は考える。

 裁判所の判断で性加害が有罪となれば辞任する。無罪なら辞任しない。判決が出るまでは推定無罪なので辞任する必要はないし、推定無罪なのに「辞めろ、辞めろ」の大合唱は魔女狩りであって、民主主義国家のやることではない、という理屈が成り立つ。

 そもそも、これは法的問題ではない。モラルとか品性の問題ではないのか。……

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Profile

木村 浩嗣

編集者を経て94年にスペインへ。98年、99年と同国サッカー連盟の監督ライセンスを取得し少年チームを指導。06年の創刊時から務めた『footballista』編集長を15年7月に辞し、フリーに。17年にユース指導を休止する一方、映画関連の執筆に進出。グアルディオラ、イエロ、リージョ、パコ・へメス、ブトラゲーニョ、メンディリバル、セティエン、アベラルド、マルセリーノ、モンチ、エウセビオら一家言ある人へインタビュー経験多数。

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