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GS全48試合を観たマッチレビュアーが考察する、カタールW杯5つの戦術トレンド

2022.12.07

11月20日から12月2日まで開催されたカタールW杯のグループステージ。日本がドイツ、スペインを撃破して首位通過を果たしたグループEを筆頭に各組で番狂わせが相次ぐ中、ピッチ上で見られた5つの戦術トレンドを48試合すべてを観たマッチレビュアーのせこ氏に考察してもらった。

 先日、第一子が生まれたばかりで迎えるW杯。大会期間に強引に育児休暇をかち当てたことでEURO2020に続き、全試合視聴チャレンジに踏み切った。1日4試合といういっそう過酷なスケジュールの中、オムツ交換とミルク投与に追われながらグループステージを追いかけて感じた5つのトレンドについて考察していきたい。

①全局面に対応できるチームの増加

 一般的にW杯はEUROを始めとする大陸チャンピオンを決める大会と比べると、参加している国の実力差が大きいコンペティションとされる。よって、強いチームと弱いチームのマッチアップは増えるはずである。

 だが、今大会においては格上のチームが一方的に90分間攻め続ける試合はあまり多くはなかった。多くの試合においては、どちらのチームもボールを持って攻撃をする場面が生まれている。

 小国といえどペナルティエリア内に張り付いて専制守備を決め込みながら引きこもるチームは皆無。[5-4-1]を使うチームはいたが、最終ラインはペナルティエリアよりも高くスタートするチームばかりで、なるべく敵陣側で重心をキープしようとする姿勢が目立った。

 高いラインのチームを攻略するにはある程度裏を使う必要がある。そうした仕掛けるパスが増えれば、片方のチームが一方的にボールを持つ展開は続きにくくなる。よって、ボール保持の偏りが減ったのだろう。

 小国側のこうした変化は陣地回復を意識したものかもしれない。ペナルティエリア内で引きこもって守る際にセットで必要なのは、少人数で時間を作れることができるアタッカーだからだ。強豪国のDF相手に時間を作ることができるFWは格下の国にはなかなかいない。それであれば、ボール非保持ではなるべく敵陣のエリアでプレーしようということだろう。

 そうした状況の変化によって際立ったのが、すべての局面に対応できるチームの増加である。ボールを持とうが、持たれようが状況に応じてチームは自然とその局面に合わせた振る舞いが求められるようになる。

 こうした変化が顕著に見られたのはチュニジア、モロッコの北アフリカ勢。アフリカ勢というと、どことなく個人技頼みの自由奔放なサッカーを標榜するイメージが持たれがちだが、この2チームの今大会の振る舞いにそうした印象を持つ人はいないだろう。デザインされたボール保持、連動したプレス、そして規律が保たれたブロック守備のいずれも高水準で備えている。

 モロッコの第3節カナダ戦での戦い方はチームの完成度の高さを強く感じる内容だった。開始直後にハイプレスでミスを誘い先制点を奪うと、前がかりに出てくるカナダの高いラインをひっくり返してカウンターで追加点をゲット。そして後半はきっちりと自陣にブロックを敷いて逃げ切る。局面ごとにカナダを潰し、優位に時間を進めていく試合運びにはまるで列強国のような洗練された風情を感じた。

カナダ戦で先制ゴールを挙げたハキム・ジエクを祝福するモロッコ代表の面々

 どの局面でも対応しなければいけないし、苦手な局面があればそこに足下をすくわれる可能性があるのが今回のW杯。コスタリカをボール保持の局面で崩しきれなかった日本にとっては身を持って感じることができる教訓だろう。

②ロングキックの不安定さ

……

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Profile

せこ

野球部だった高校時代の2008年、ドイツW杯をきっかけにサッカーにハマる。たまたま目についたアンリがきっかけでそのままアーセナルファンに。その後、川崎フロンターレサポーターの友人の誘いがきっかけで、2012年前後からJリーグも見るように。2018年より趣味でアーセナル、川崎フロンターレを中心にJリーグと欧州サッカーのマッチレビューを書く。サッカーと同じくらい乃木坂46を愛している。