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ナーゲルスマンのドイツ代表、復調の鍵クロース・システムの真価は「質の変化」

2024.04.03

新・戦術リストランテ VOL.9

footballista創刊時から続く名物連載がWEBへ移籍。マエストロ・西部謙司が、国内外の注目チームの戦術的な隠し味、ビッグマッチの駆け引きを味わい尽くす試合解説をわかりやすくお届け!

第9回は、日本代表に大敗後、ナーゲルスマン就任&クロース復帰で復調気配にあるドイツ代表。サッカー大国が立ち直りつつある理由について掘り下げてみたい。

クロース復帰で蘇ったドイツ

 ドイツ代表が完全に立ち直りました。3月の親善試合ではフランス代表、オランダ代表に連勝しています。

 ユリアン・ナーゲルスマン監督に代わってからの変化はトニ・クロースの代表復帰でしょう。1人の選手でこうも変わるのかと思うくらい変わりました。

 クロース自身はいつも通りのプレーぶりです。冷静沈着にパスを捌いてチームのリズムを作り出す。しかし、それがドイツを蘇らせました。クロース加入の最大の効果は、フロリアン・ビルツとジャマル・ムシアラの能力が全開になったことだと思います。

 ビルツとムシアラはドイツで最もクリエイティブなアタッカーです。そして2人ともハーフスペースでのプレーを得意としています。これまでもドイツ代表でプレーしていたのですが、クロースの加入によって明らかに輝きを増していました。

3月の親善試合では2試合ともに先発出場を果たしたビルツ(上)とムシアラ

 ビルツとムシアラはある種異能の選手です。ドイツでは比較的少ないタイプなので、その実力は認められていながら微妙に浮いた存在だった気がします。しかし、クロースの加入によってはじめて使いこなせたのではないでしょうか。

 1人の選手の加入によって他の選手が能力を発揮し、チーム全体に大きな変化が起きた。そのポイントについて考えてみたいと思います。

ビルツとムシアラは、なぜ輝きを増したのか?

……

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Profile

西部 謙司

1962年9月27日、東京都生まれ。早稲田大学教育学部卒業後、会社員を経て、学研『ストライカー』の編集部勤務。95~98年にフランスのパリに住み、欧州サッカーを取材。02年にフリーランスとなる。『戦術リストランテV サッカーの解釈を変える最先端の戦術用語』(小社刊)が発売中。

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