REGULAR

吹き始めている新しい風。柏レイソルに期待したい「シームレスなクラブ」への原点回帰

2024.02.08

太陽黄焔章 第9回

シーズンの最後に戦った天皇杯決勝では川崎フロンターレと激闘を演じ、敗れたとはいえ小さくないインパクトを残した柏レイソルだが、一方でリーグ戦では17位と何とか残留した感は否めず、迎える2024年シーズンも周囲からの評価は高くないのが現状だ。それでも今季のレイソルには、今までと違う新しい風が吹き始める要素が揃っている。おなじみの鈴木潤がキャンプ取材で感じた変化も含めて、その期待を綴り上げる。

エース、キャプテン、攻撃の中核、守備の柱。「替えの利かない」4人の慰留に成功!

 今シーズンの柏レイソルは「前年のサッカーをベースに、足りないものを上積みしていく」というテーマを掲げている。

 PK戦の末にタイトルを逃した天皇杯決勝。川崎フロンターレを土俵際まで追い詰め、120分間に渡り素晴らしいパフォーマンスを披露したのは確かだが、優勢に試合を進めながら好機を仕留めきれなかったことは、見方を変えれば勝ちきれない昨シーズンを象徴する試合展開でもあった。

 立て直しに成功した昨年の夏以降は、わずか2敗。統率された守備で勝点を確実に積み上げ、簡単に負けないチームにはなったが、引き分けも多かった。前年の後半戦に構築した守備を維持しながら、リーグワースト2位の33得点という攻撃面を改善することで、「負けないチーム」から「勝つチーム」への脱却を図る。それが柏の描く青写真だ。
 
 開幕前の柏の下馬評は低い。前年のリーグ戦は17位で、天皇杯準優勝メンバーからレギュラーだった山田康太と椎橋慧也がチームを離れたのだから、戦力ダウンと見なされても仕方がないだろう。

 ただ、クラブ側の視点では、前年のサッカーを維持する上で、絶対に手放してはいけない選手たちの慰留と契約更新には成功した。それが細谷真大、古賀太陽、マテウス・サヴィオであり、さらに昨年7月、浦和レッズから期限付き移籍で加入後、瞬く間にチームの守備に安定感をもたらした犬飼智也を完全移籍で獲得した。エース、キャプテン、攻撃の中核、守備の柱。チームの骨格を形成する替えの利かない4選手だ。

 1月13日に行われた新体制発表会見では、登壇した強化部の布部陽功GMが細谷と古賀には他クラブからのオファーがあったことを明かし、その上で彼らは「このクラブでタイトルが取りたい」と柏に残留してくれたと述べていた。

 犬飼にいたっては、彼自身にいくつかの選択肢があった中で柏への完全移籍を決断している。その理由は、昨シーズンの残留争い真っ只中の柏サポーターの存在にあった。勝ちきれないチームにブーイングやネガティブな声を浴びせるのではなく、日立台のスタンドを埋める柏サポーターから「この苦しい状況をともに乗り越えよう」という熱い気持ちを彼は感じ取った。だからこそ、そのサポーターに勝利を届ける形で感謝の意を示すために、犬飼は柏への完全移籍を決断したのである。

 また、外国籍選手でありながら、日頃からレイソル愛を表に出すマテウス・サヴィオを含め、クラブに対して特別な感情を持つ者たちが、今シーズンもチームを牽引することになる。彼ら4人を手放していたなら、柏は根本的に戦い方を最初から構築しなければならなかった。この4人が今シーズンも黄色のユニフォームを着てプレーできる意義は、極めて大きい。

井原体制で臨むハードなキャンプに滲む期待

 2024年1月15日にシーズン最初のトレーニングがスタートすると、そこからはグラウンドの様々な部分でいくつかの変化が見られた。……

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Profile

鈴木 潤

2002年のフリーライター転身後、03年から柏レイソルと国内育成年代の取材を開始。サッカー専門誌を中心に寄稿する傍ら、現在は柏レイソルのオフィシャル刊行物の執筆も手がける。14年には自身の責任編集によるウェブマガジン『柏フットボールジャーナル』を立ち上げ、日々の取材で得た情報を発信中。酒井宏樹選手の著書『リセットする力』(KADOKAWA)編集協力。

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