【サガン鳥栖フィジカルコーチが教えるGPSデータ活用ガイド】リアルタイム分析の今、野田コーチの試合中の仕事とは?
サガン鳥栖フィジカルコーチが教えるGPSデータ活用ガイド 第3回
トッププロから育成年代まで多くの現場でGPSの導入が進んでいるが、その活用法には試行錯誤しているのが現状だ。そこで2022シーズンJリーグ首位の平均スプリント回数を記録したサガン鳥栖の野田直司フィジカルコーチが「GPSデータの活用法」をガイドする。
第3回のテーマは「試合中のGPSデータの使い方」。フィジカルコーチはリアルタイムで何を見て、何を伝えるのか。試合データの活用法を教えてもらおう。
リアルタイムで把握できるデータは?
——この連載も3回目となりました。今回は、試合中にどのようにGPSデータを活用しているのかを伺えればと思います。Jリーグでは2018年よりベンチへの電子機器の持ち込みが可能となり、GPSデータもリアルタイムで把握できる環境になりました。
「わかりやすいところでは、トラッキングデータですね。データスタジアムさんから一般向けにも公開されていますが、チーム向けにはもう少し細かいデータが提供されています。自チームと相手チーム、個人別のデータが1分間おきくらいに更新されていきますので、僕も試合中にタブレットなどで見ていきます」
——具体的には、走行距離などの数値を見ているのでしょうか?
「まずはそうですね。鳥栖の場合はチームの平均走行距離が122~123㎞くらいなので、1分間あたりだと130~140mになります。それを頭に入れて走行距離の推移を見ていきます。例えば、開始15分の時点で2.1~2.2㎞であれば平均ペースで、1.8㎞くらいだとスローペース、2.5㎞くらいだとハイペースだなという予測になります。走行距離だけでなく、スプリントの回数や距離、ハイスピードランの4項目をセットにして追っていきます」
——数字の変化は分刻みで追っていくのでしょうか?
「ずっと画面だけを見ているわけにもいかないので、15分刻みで把握することが多いですね。この数字はもちろん、相手によっても変わってきますが、鳥栖の場合は川井監督のコンセプトも含めて『自分たちのペースに相手を巻き込んでいく』というテーマがありますので、走行距離のデータが大きく変化することはあまりありません。ただその中でも、今日はハイペースだなとか、逆にスローペースなのでもっと上げられんじゃないかという推移は他のコーチングスタッフとも共有していきます」
——自チームだけでなく、相手チームのデータも見たりするのでしょうか?
「もちろんリアルタイムでも見ますし、基本的には試合前からチェックしておきますね。このデータが提供されるのはJ1の試合だけなのですが、他のチームのデータも閲覧できますので、僕も対戦相手の過去5試合くらいのデータは確認します。例えば、データの傾向的に似ている横浜F・マリノスさんのチームデータや個人データは参考にさせていただいていますし、データの少ない選手の最高速度などはあらかじめ頭に入れておきます」……
Profile
ジェイ
1980年生まれ、山口県出身。2019年10月よりアイキャンフライしてフリーランスという名の無職となるが、気が付けばサッカー新聞『エル・ゴラッソ』浦和担当に。footballistaには2018年6月より不定期寄稿。心のクラブはレノファ山口、リーズ・ユナイテッド、アイルランド代表。