REGULAR

宣教師ザビエルだけじゃない!世界史でみる日本対スペイン

2022.12.01

社会から文化まで!W杯スペシャルコラム

今やいちスポーツのビッグイベントの枠を超え、様々な影響を与えるワールドカップ。社会や文化など、オフ・ザ・ピッチのトピックについて論じる。

1日に2大会連続の16強進出を懸けてスペインと激突する日本代表。通算対戦成績はA代表でこそ1戦1敗だが、ユース代表にまで対象を広げれば1999年のワールドユース(現U-20W杯)決勝で4-0の惨敗、昨年の東京五輪準決勝でも延長戦の末に0-1の惜敗と、歴史から因縁が浮かび上がってくる。そこで世界史からも注目の一戦を楽しんでもらうために、両国の関係性を高校の社会科教師でサッカー部監督でもある「わっきー」こと脇真一郎氏に解説してもらった。

 「スペインと言えば?」

 そう聞かれて皆さんはどう答えるだろう?

 W杯の最中ともなれば、「サッカー」と答えたり、様々なサッカー選手を答えたりする人も多いと思う。また、文化的な繋がりから闘牛やフラメンコ、歴史的な話であればフランシスコ・ザビエルの名前を挙げる人もいるかもしれない。

 このように、日本にとっても馴染みの深い国の一つと言えるスペインであるが、ではこう聞かれたらみなさんはどう答えるだろう?

 「日本とスペインの関係を歴史的に振り返ると?」

 それこそ「ザビエルが日本にやってきた」以上のことをすぐに思いつく人は少ないのではないだろうか。

 ということで、ここではそのある種謎に包まれた日本とスペインの関係の歴史を紐解いてみよう。また、特にスペインという国のあり方を理解する上で、その成り立ちについても少し触れていく(ちなみに、スペインの歴史と現在のサッカーにおける関係性についてはかつてオンライン講座という形で紹介させていただいた)。

スペインの成り立ち

 スペインは地理的にはヨーロッパの西端、イベリア半島の大部分を占める国である。歴史的にはおそらくケルト人の一派がまず定着した後、地中海沿岸部を中心に古代ギリシア・ローマの人々が入植。さらにはローマ帝国の領土拡大にあわせて、その支配下に組み込まれていった。やがて4世紀後半に発生したゲルマン人の大移動により、この地には西ゴート族が定着し建国した。詳細は省略するが、やがて8世紀になるとアフリカ側からイスラム勢力が進出し、西ゴート王国は滅ぼされ、半島の大部分がイスラムの支配下に入ることとなった。これを覆すために始まった運動が「レコンキスタ(国土回復運動)」と呼ばれるもので、ポルトガルやスペインはこの運動の中で成立した国家である。……

残り:3,226文字/全文:4,542文字 この記事の続きは
footballista MEMBERSHIP
に会員登録すると
お読みいただけます

Profile

脇 真一郎

1974年10月31日、和歌山県生まれ。同志社大学卒。和歌山県立海南高等学校でサッカーと出会って以降、顧問として指導に携わる。同県立粉河高等学校に異動後、主顧問として指導を続け7シーズン目となる。2018年5月に『フットボリスタ・ラボ』1期生として活動を開始して以降、“ゲームモデル作成推進隊長”として『footballista』での記事執筆やSNSを通じて様々な発信を行っている。Twitterアカウント:@rilakkumawacky

RANKING