REGULAR

「運ぶ」のお手本。風間八宏が語る、新10番・ファティの凄みとバルサの未来

2021.11.21

風間八宏の真・ユニット論  第15回

「ボールをトラップしたのに“止まっていない”」「止める、外すの目をそろえる」など独自の技術論を突き詰めた指導者として、日本で唯一無二の存在となっている風間八宏。彼の技術論は個人で完結しているわけではなく、人と人の意思の疎通や駆け引きがベースになっている。個人の技術解説でもなく、チームの戦術解説でもない、数人の集団で構成されるユニットの動きは、サッカー解説の盲点になっているのではないか――名手たちの隠れた凄みを、“局面を切り取る達人”が斬る!

第15回はバルセロナのアンス・ファティに焦点を当てる。19歳にしてバルサの10番を背負い、一時期の輝きを失いつつある名門の再建を託されたアタッカーの凄みはどこにあるのか。メンフィス・デパイとともに生んだ2つのゴールから読み解く。

Pick up MATCH
2021.09.26
Barcelona 3-1 Levante|7|La Liga
90+1′ Ansu Fati

リーガ第7節バルセロナ対レバンテのハイライト動画。ファティのゴールシーンは4:29から

ファティが示す「ボールを離さない」運び方

 ファティはボールを持ったプレーを得意とする選手であることがこの2つのシーンからわかります。

 例えばこのレバンテ戦のゴールは、もらうタイミングとしては動きの質はあまり高くない。むしろ、その後の「運ぶ」プレーに彼の特徴が詰まっています。スペースに出して走るのではなく常に「ボールを離さない」運び方、それができるゆえに運んでいる時に「相手をよく見られること」。これが彼の強みです。

 ボールが身体から本当に離れないし、前を見ながらも体勢が崩れません。身のこなし、ステップの上手さ。ドルトムントのホーランドも同じなのですが、ボールが前に行っても体が後ろに下がらないんです。

 このシーンをよく見るとわかるのですが、動いている間、常にボールがファティの足下にあります。どう動いても、身体とボールが紐で結ばれているように足下から離れない。最後のタッチのところまで、ずっとそうです。これはまさに、上手い選手のボールの運び方ですね。常に「何もできる位置」にボールがあるので本人は顔を上げて周囲を見られる余裕があるし、反対に相手はいつ打ってくるかわからない。

 一般の選手はドリブルをする時、先にボールを動かして、そこに身体がついてくる形になりがちです。特に足の速い選手はスペースにボールを出して、それを追いかけるドリブルをするイメージがありますよね。一方で、ファティのドリブルはボールと身体が常に一緒に動いています。むしろ、体が先に出て、それに足がついてくるようにすら見えます。

 ファティの運び方だと、単純なスピード以上に相手は「速く」感じるはずです。常にこの状態を保てると、次のタッチまでに時間がかからないんです。バレンシア戦のゴールもそうですが、身体とボールが一緒に動いており、「いつでも蹴れる」状態を常に作っています。だから、運びながらのタイミングでシュートが打てるんです。

 実際にシュートシーンを見てみると、打つまでの足を動かす幅がすごく狭くて、速いことがわかります。言い換えると、走りながらその歩幅でシュートを打てる。こういう選手を前にすると、相手はタイミングが読めないから仕掛けられない。これができるのが一流選手の証です。守備側からすると打つタイミングだけでなく、抜いてくるタイミングもわからないはずです。

レバンテ戦で得点を生んだシュートの瞬間。対峙したDFに、足を出させる機会を与えなかった

「止めてから運ぶ」ではなく、「そのまま運ぶ」

……

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Profile

竹中 玲央奈

“現場主義”を貫く1989年生まれのロンドン世代。大学在学時に風間八宏率いる筑波大学に魅せられ取材活動を開始。2012年から2016年までサッカー専門誌『エル・ゴラッソ 』で湘南と川崎Fを担当し、以後は大学サッカーを中心に中学、高校、女子と幅広い現場に足を運ぶ。㈱Link Sports スポーツデジタルマーケティング部部長。複数の自社メディアや外部スポーツコンテンツ・広告の制作にも携わる。愛するクラブはヴェルダー・ブレーメン。