NEWS

SNSとGoogle翻訳で代表への勧誘を知った男が国際大会デビューへ

2022.01.04

 今月1月9日にカメルーンで開幕するアフリカ・ネーションズカップに出場するカーボベルデ代表チームには、一風変わった形で代表入りした選手がいる。それがアイルランド生まれのDFロバート・ロペス(29歳)だ。

「スパムメールだと思って無視した」

 ロペスは、カーボベルデ人の父とアイルランド人の母のもと、アイルランドの首都ダブリンで生まれ育ち、U-19アイルランド代表にも選出されたことのあるCBだ。国内の古豪ボヒーミアンズで選手キャリアをスタートさせ、2017年からは国内の強豪シャムロック・ローバーズに所属している。そんな彼に転機が訪れたのは2016年のことだ。

 ボヒーミアンズで同僚だったDFアイマン・ベン・モハメドがチュニジア代表に呼ばれたのである。モハメドは英国生まれながらチュニジア人の父を持つために、同代表チームから声がかかった。そんなモハメドについてインタビューを受けた際、ロペスは「自分もカーボベルデ代表に呼ばれるかも!」と冗談を飛ばした。すると、それを耳にした記者がカーボベルデ・サッカー連盟に連絡を入れたのだとか。その時は話が進まなかったが、それから3年後にチャンスが巡ってくるのだった。

 国内の強豪シャムロック・ローバーズで定位置を確保したロペスは、欧州カップ戦にも出場して経験を積んで評価を高めていた。すると、思いもよらぬ形で彼に声がかかった。「当時の代表監督であるルイ・アグアスからメッセージがきたのさ」とロペスは『BBC Sport』に説明した。そのメッセージというのは、代理人やクラブ宛てに送られたものではなく、ロペス本人に直接送られたもの。しかも、世界最大級のビジネス専門のSNSである『LinkedIn』のプロフィールページに送られてきたのだ。

 だが、すぐには返信しなかったという。「学生時代に登録してプロフィールを作っておいたけど、その後はほぼ放置状態だった。それに、監督がくれたメッセージはポルトガル語だったんだ。だからスパムメールだと思って無視したんだ。すると、9カ月ほど経った後に『やあ、ロバート。私の打診を検討してくれたかい?』というメッセージが送られてきたんだ」

 それがカーボベルデ代表監督からのメッセージだと気付いたロペスは、慌てて最初のメッセージをGoogle翻訳にかけたという。すると「新しい代表選手を探しているが、興味はあるかい?」という内容だったそうだ。即座に「もちろんです」と返信したロペスは、カーボベルデの公用語であるポルトガル語をまったく話せないまま、無事に手続きを済ませて2019年10月にカーボベルデ代表デビューを果たすことになった。

歌を練習して不安を払拭

 言葉が通じないことで、初めて代表チームに合流する時は不安もあったという。しかし、チームメイトが温かく迎え入れてくれたことですぐに馴染めたそうだ。もちろん、ロペス本人も溶け込む努力をしていた。新入りがチームメイトの前で歌を披露する儀式があるが、ロペスは1日かけてその準備をしたそうだ。「打ち解けるきっかけになったのは、最初に歌を披露した時さ。(音楽ストリーミングサービスの)『Spotify』でカーボベルデの曲を検索して準備したのさ」

 すっかりチームに馴染んだロペスは、ワールドカップ・カタール大会のアフリカ予選では全6試合にフル出場するも、チームはナイジェリアに一歩及ばず、二次予選で敗退。最終予選に進めなかったが、既にアフリカ・ネーションズカップ出場権は獲得しており、ロペスは29歳にして初めて国際主要大会に出場する。

 本大会ではブルキナファソ、エチオピア、そしてホスト国のカメルーンと同じA組に入った。格上ともぶつかるが、決して臆することはない。SNSで代表に誘われ、Google翻訳を使って内容を知り、音楽ストリーミングサービスでコミュニケーションを図った男は「いくつか番狂わせを起こしたい。そして可能な限り上まで勝ち上がりたいね」と初の国際大会を楽しみにしている。


Photo: Getty Images

プレミア会員になってもっとfootballistaを楽しもう!

プレミア会員 3つの特典

雑誌最新号が届く

会員限定記事が読める

会員限定動画が観られる

「footballista」最新号

フットボリスタ 2022年1月号 Issue088

08-09ペップバルサから2021川崎Fまで。革新チームで振り返る15年の戦術進化 [特集]2006-2021サッカー戦術ヒストリア フットボリスタ創刊15周年記念号

10日間無料キャンペーン実施中

TAG

カーボベルデ代表シャムロック・ローバーズロバート・ロペス

Profile

田島 大

埼玉県出身。学生時代を英国で過ごし、ロンドン大学(University College London)理学部を卒業。帰国後はスポーツとメディアの架け橋を担うフットメディア社で日頃から欧州サッカーを扱う仕事に従事し、イングランドに関する記事の翻訳・原稿執筆をしている。ちなみに遅咲きの愛犬家。