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最高傑作・市原吏音が語る大宮アルディージャアカデミーのいいところ「指導者のレベルが高い」

2024.06.17

【特集】大宮アルディージャ、反撃開始 #1

大宮アルディージャは、昨シーズンクラブ史上初のJ3への降格を経験した。近年の大宮の実情を見ると、かつてJ1で上位にも進出した面影はもはやない。なるべくしてなったJ3降格という見方もできるだろう。

しかし、J3に降格したことで大宮がここまでやってきたことをすべて否定してしまうのはどうだろうか。大宮が進んで来た道を振り返ると、間違いはあったかもしれないが、大きな財産を築いてきたことも忘れてはいけない。その財産がなければ、鬼門と呼ばれるJ3初年度で、開幕から1位を独走することはなかっただろう。

今季のチームはアカデミー上がりの選手と大卒の選手がいきいきと活躍している。そうなるためには当然ながらクラブが地道に継続してきた戦略があったからだ。本特集では今の大宮のJ3での結果が決して取ってつけたものでもなければ、偶然でもないということを、クラブ関係者に話を聞くことで掘り下げていきたい。

第1回は、昨季J2でプロデビューを果たしてから大宮の最終ラインを支え続けた18歳の市原吏音にインタビュー。市原は1月にアジアカップのトレーニングパートナーとして選出され、日本サッカー協会からの期待の高さもうかがえる。今はまだJ3でプレーする一人の選手だが、そのプレーぶりから未来の日本代表を期待させるものがあり、大宮アルディージャアカデミーの最高傑作といっていい存在感だ。ジュニア時代から大宮アルディージャ一筋の生粋のオレンジボーイがどのようにしてトップチーム加入したのか。また、何年にも渡りプレミアリーグイーストで結果を出し続けトップチームに選手を輩出し続ける大宮アルディージャU18を市原はどのように見えているのか。市原の視点を通して大宮アルディージャのアカデミーを掘り下げる。

兄貴を見て「自分も入りたいな」

――ジュニア時代からクラブ一筋ですが、大宮アルディージャを選んだ理由を教えてください。

 「お兄ちゃんがいたからですかね(笑)。元々、大宮が地元で『アルディージャに行けたらベスト』と子どもながらに思っていました。兄貴もいたので、最初は小2でセレクションを受けたんですけど、最終セレクションで落ちてしまいました。翌年ももう1回受けましたけど、並行して東京ヴェルディも浦和レッズも横浜FCもセレクションは受けていたと思います。レッズは普通に落ちましたね(笑)。でも結局、大宮に入れたので良かったです」

――それだけ大宮は身近な存在だったんですね。

 「兄貴の存在もあったし、スクールにも通っていたし、スクールの時は隣でアカデミーの選手たちがやっているのを見て、『自分も入りたいな』と思っていました。正直、セレクションのことはあまり覚えていないです。当時は必死でした。高校までは2こ上の兄貴の背中を追い掛けてきた感じですね」

――そのアカデミー時代は、どんな指導を受けてきましたか?

 「難しいことはあまり言われていなかったです。細かく、こうやれ、ああやれ、とかは言われずに小学生、中学生の時は楽しくやっていましたし、サッカーのことよりも一人の人間としての方が大事というのを叩き込まれました。どういうプレー、どういう戦術ではなく、イチ社会人として生きていく上で大事なことですよね。挨拶、片付け、あとは他に比べればいい環境でサッカーをやらせてもらっていたので、それが当たり前ではないと言われ続けていました。『この環境に慣れてしまったら成功しないよ』と言われていた気がしますね」

――人間形成を大事にする方針だったんですね。

 「だから、こんな真面目な選手になっちゃったのかな(笑)。でも、ジュニアからいる選手は、受け答えはしっかりしていると思います。ただ、勉強ができるかどうかはまた別ですけど……(笑)」

大宮アカデミーの魅力は「指導者がいい」

――サッカーの方も少し聞かせてください。ポジションはどんな変遷をたどってきたんですか?

 「小学生の時はどこでもやっていましたね。少年団の時は11番を背負ってCKを蹴ることもあれば、GKをやっていた時期もありますよ。一番多かったのはFWですね。でも、そこから気がつけば後ろの方に下がっていました」……

Profile

須賀 大輔

1991年生まれ、埼玉県出身。学生時代にサッカー専門新聞『ELGOLAZO』でアルバイトとして経験を積み、2016年からフリーライターとして活動。『ELGOLAZO』では柏レイソルと横浜FCの担当記者を経て、現在はFC東京と大宮アルディージャの担当記者を務めている。その他の媒体でも、執筆・編集業を行っている。@readysuga1214