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森保監督のチームが「対応力」で上回った価値。ドイツ対日本インサイドレポート

2023.09.12

日本代表欧州遠征2023徹底分析#4

カタールW杯でベスト16入りした森保一監督率いる日本代表は、続投が決まった指揮官の下で新チームが始動。「ポゼッションの質を上げる」ことを新たなテーマに掲げ、特に[4-3-3(4-1-4-1)]で臨んだ6月のエルサルバドル(〇6-0)、ペルー(〇4-1)との2連戦では新しいチャレンジへの可能性を感じることができた。9月のドイツ、トルコとの2連戦は、第二次森保体制の最初の分岐点になるだろう。約4カ月後のアジアカップ、そしてその先のW杯予選に向けて、様々な角度から欧州遠征を分析してみたい。

完璧なゲームプランでドイツを1-4と圧倒した歴史的な一戦、その裏で監督や選手はどのような準備をし、試合中に何を考えていたのか――現地取材した河治良幸氏に伝えてもらおう。

 ボルフスブルクのフォルクスワーゲン・アレナで行われたドイツと日本の試合は1-4で森保ジャパンが勝利。この直後にハンジ・フリック監督の解任がドイツサッカー連盟から通達された。ドイツにとってはカタールW杯のリベンジマッチであり、来年行われるEUROの開催国として自信を取り戻すチャンスだったが、その希望を日本が打ち砕く結果となったわけだ。

 W杯の逆転勝利は確かにインパクトがあったが、いわば弱者側のジャイアントキリングだった。森保一監督によると、選手たちは対戦した4チームの中でドイツが一番強かったという印象を持っていたようだ。だからこそ、今回は結果だけでなく内容面でも五分以上に渡り合えるかどうかがテーマになっていた。

[4-4-2]のミドルブロック。守田が明かした高度な課題

 1点目のゴール、そして同点にされた直後に勝ち越しとなる上田綺世のゴールをアシストした伊東純也は、この試合をドイツとは別の意味でリベンジマッチとして捉えていた。

 「W杯で悔しい思いもしましたし、そこから自チームに帰ってみんなが調子を上げて、また集まって力を発揮するというのができている。競争が激しくなって、チームとしての能力は上がっている」

 個人の成長はもちろんだが、チームとしても前進していることを感じさせる試合内容だった。森保監督は「できるだけ今日は4バックで、相手の探りに対して、そして2列目からの飛び出しも含めて難しい対応をトライしていこうということで、選手たちがチャレンジしてくれました」と試合の狙いを振り返る。

 前半はカタールW杯後に導入した[4-4-2]のコンパクトなミドルブロックを引きながら、相手が下げたところでマンツーマン気味にハイプレスをかけてはめていくという形だった。中央からバイタルエリアを破られたのは前半19分の失点シーンだけで、ボランチの守田英正はあの場面は判断ミスと主張する。

フロリアン・ヴィルツと対峙する守田英正

 「一個前でキミッヒが受けた時に、僕が逆に立たされる形で1回振られてしまったことで、自分が1個後ろのポジショニングを取って、最後を締め切れなかった」……

日本代表欧州遠征2023徹底分析

Profile

河治 良幸

『エル・ゴラッソ』創刊に携わり日本代表を担当。Jリーグから欧州に代表戦まで、プレー分析を軸にサッカーの潮流を見守る。セガ『WCCF』選手カードを手がけ、後継の『FOOTISTA』ではJリーグ選手を担当。『サッカーの見方が180度変わる データ進化論』(小社刊)など著書多数。NHK『ミラクルボディー』の「スペイン代表 世界最強の”天才能”」に監修として参加。タグマにてサッカー専用サイト【KAWAJIうぉっち】を運営中。